第457話 エイルさんの教え
春の丘陵地と夏の丘陵地は一応一巡りしているので、エイルさんがしたい調査優先(つまり私は戦闘にあまり参加しない)で動くことになったネア・マーカス十一歳です。
なので採取をしながら身体強化に関わるギフトスキルを精査していこうと思います。
チスイバナをある程度採取したり、遭遇した魔物を撃破していくわけですが、戦闘はナーフ兄妹がほぼ引き受けている感じですね。討ちもらされて接近しちゃった魔物はエイルさんが蹴る殴るで処理してました。飛びかかってきたセンギリウサギのおなかを的確に蹴りあげて耳を掴んで地面に叩きつけるという流れ作業でした。(地面が軽く凹んだ)
魔核や肉のドロップに「しばらく食肉に困らないのはいいこと」としみじみと薄く引き裂いて口にしてました。(無加工肉を)
保存肉はどうしても味が付与されているので濃いし、水洗いしたらそれはそれで味がぼやけるとかで難しいんだそうです。
これが種族による食文化の差!
『浄化』『清浄』も使う種族によって毒になるという情報も教えてもらいましたよ。難しいですね。
試練を四つ回ればちゃんと出入り口の扉が出現しましたよ。
エイルさんとディスお兄さんもこれで『腐海瀑布』に入れるようになったということですね。
元々疲労回復には魔力を回していましたがお題は『身体強化』です。疲労回復ではなく、活性化ですよね。必要なのは。
はじめて武器を扱った後、振り回された身体の痛み、動きについていけていない筋肉の疲労であり、かけられた負荷に耐えられなかった負傷。それを回復させることで同じ負荷に耐えられる身体づくりを進める。大事なことはそこなんですよね。
一部だけ耐性を上げても他の部分がついてこなければその差分で負荷が大きくなり過ぎて成長の均衡がおかしくなることも考えられます。あと、肉体成長って怠けるとテキメン衰えがはやいので無理なくならしていくことが大事なんですよねぇ。
「オモリでもつけて日常過ごせば? 魔力成長促進でも身体強化法でも使用される手法あるけど」
「オモリ……」
「ティルケなら軽いもの……殴りにも使える籠手も兼ねていれば正当防衛にも活用できるかも?」
エイルさんの言葉に反応したティカちゃんに少し考えてからオススメ案を教えてくれるエイルさんです。
「むしろ、ナーフが適正斡旋すべき」
「戦闘方針が違うからなぁ」
「言い訳。ナーフはいろんな戦闘手法見てきたはず」
「妹にうまく説明できるとも言い切れん」
「……無能」
口喧嘩のようになる二人にティカちゃんが「ディ兄大人げない」とたしなめて、ディスお兄さんが「は!? この女俺よりとしう」と反論しようとしたところ、エイルさんから肘打ち喰らってうずくまってしまいましたよ。
「バカね。姉さんだって年齢にはうるさいし、わざわざ語られないモノを暴けばこうなる見本にわざわざなるなんて」
女性の年齢問題は微妙。ネア、学びました。
「私はティカちゃんと同じ十一歳ですけどね」
つい衝動で主張しちゃいますよね。
「聞いているけど、少し驚くなぁ」
ディスお兄さんはそう言って数回頷き、エイルさんは琥珀色の瞳でじっと私を見てから口を開きました。
「高魔力種は成長速度が疎らな傾向があるから。大越で急成長することも、迷宮で条件を踏んで急成長も可能性はあるよ。私は外見は未成年者だが、先程ナーフが言った通りナーフより年上だ。生きた年数だけならな。同胞からは未成年として扱われるが、同胞以外ならば年齢にそった扱いをしてもらっている。つまり、酒も夜間行動も問題がないということだ」
それでも同胞にはお子様扱いされるんですね。
そこは納得はしているんだそうです。
確かにエイルさん見た目はリリーお姉ちゃんと変わらない年頃っぽく見えるんですよね。
鰭耳を隠すように髪をおろしていた時はもう少し年上っぽくも見えてましたが束ねてしまうとなお幼い印象になるんですね。
……髪をまとめてない方が年上っぽく見える?
「ん? ネア。髪は複雑に結い上げてしまうのが一番年上に見られやすいが、その分、背伸びしているおチビさんの印象も強くなりやすいことを考慮しておくべきでは?」
「はぅ!? 心が読める!?」
「いや、ネアが年齢を気にしているのは結構すぐわかると思うわ。いつもわかりやすいから」
ティカちゃんのツッコミにエイルさん、ディスお兄さんも深く同意を示しましたよ。
そんなにわかりやすいですか?
【わかりやすいですね】
「まあ背伸びせず成長すれば良い」
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