第455話 冒険者ギルドで予定を決める

 とりあえず、今日は冒険者ギルドの依頼傾向を確認してなにか受けておこうという話になりました。

「ちょっと面倒事が増えちゃって必要収入が増えちゃったのよね。不本意」

 ティカちゃんはそう言いながらギルド内の依頼票が張り出されている掲示板にざくざく向かっていきますよ。

 一応、難易度ごとにわけてあるらしく人混みはまばらですね。

「迷宮探索に行くなら冒険者ギルドじゃなくて役所が主体で調査隊員という名の冒険者募集しているからそっち側からなら貢献費と滞在税の両方を納付処理して貰えるからって人気らしいの。学生がパーティを組むなら学生ギルド通すのが主流なんですって」

 あれ?

 それって冒険者ギルドって基本暇?

「だから、選びやすい?」

「それぞれで行きやすいところに行ってるんじゃない?」


 市場での掃除依頼。(定番)

 どこでも生えていそうな薬草採取依頼。(たぶん、基礎素材ってヤツだ)

 高品質の鉱石調味料の仕入。(グラシィの『玻璃の煌迷』以外にもあるらしいけど……露店で買い付けるも有りかな?)

『腐海瀑布』の調査。


 ん?

「『腐海瀑布』の調査?」

「朝早くからいらっしゃいませ。腐海瀑布は鍵持ちの一人に三人同行できる迷宮なの。まだまだ鍵を持っている人が少なくて調査が進んでないの」

「おはようございます。新入生の私たちに許可される依頼ではない気がしますけど?」

 声をかけてきたのは店員さん、もとい、ギルド職員の方だと思います。

「そうなのよね。冒険者ギルドの縁者に鍵が回ってこないものだから困ってるのよー」

「鍵なら私持ってますよ?」

 学生ギルドとか貴族院の方が独占しているのかな?

「っば! ネア、そういう事は気軽にばらさないの!」

 ティカちゃんに叱られるとちょっとやっぱり照れくさいですね。

「ちょ! なに妙な反応しているの! 私怒ってるんだけど!?」

「まー、まぁ。ティルケ嬢、落ち着いて落ち着いて。嬉しいわぁ。三番街冒険者ギルドに『腐海瀑布』の情報が少なくて依頼処理しにくかったのよぉ〜。私、三番街冒険者ギルドの受付事務のドミニカ・マージー。お見知りおきを」

「えっと、ネア・マーカスですよろしく?」

 ティカちゃんが苦々しい表情ですけど、このお姉さんお知り合いですか?

「姉さんの親友なのよ。おかげでいろいろベンギもはかってもらっているけど、私の都合に必要以上にネアが巻き込まれるのは嫌だし。ああ、もう! うまくいかないんだから!」

 たぶんそのくらいならティカちゃんが気にしなくていいと思いますと言い出す前にほっぺたぷにぷに引っ張られましたよ。ちょっと痛いと思うだけのネア・マーカスはティカちゃんが好きですよ?

「『腐海瀑布』の調査を引き受けてくれるなら、調査担当者呼ぶけど、どうする?」

 そーいうのってすぐ呼べるものなんですね。それぞれ予定があるものだとばかり。

「ネア?」

 ティカちゃんに「どうする?」とばかりに視線を送られましたよ。あれ? 決定私ですか? あ、はい。

「じゃあ、行きましょうか。春と夏は行きましたからできれば秋と冬も行ってみたいですよね」

「ネア、荷物持ち兼雑務要員としてうちのバカ兄連れて行ってもいい?」

 ティカちゃんのお兄さん?

「もう、着いたんですか?」

 そう言えばもう少し勉強しようかなとか言ってらっしゃいましたよね。

「んー、下の兄じゃなくて上の兄。賠償金の一部カタガワリしたから働いてもらわないと……。でもネアがイヤなら労務所に行ってもらうわよ」

 あ。別にイヤじゃないです。

 労務所ってなんですか?

 カタガワリ?

 よくわからないんですが、なんかロクでもない単語が出てませんか?

「一緒でいいですよ」

 ティカちゃんも試練してもらって鍵をゲットですよ。

 ティカちゃんのお兄さんとティカちゃん、私、冒険者ギルドが用意してきた調査員のエイルフィールさん。ティカちゃんとは顔見知りだそうです。

「たまには低階層巡って基礎素材も集めておかないといけないのよ。よろしく」

 基礎素材集めだけだと効率が悪いので調査依頼傍らという別収入が付いているクエストはおいしいそうです。

「ナーフはバカやった有名人だから。今同情されているのは妹ちゃんね」

「エイルさん、同情はいりません。悪いのは兄ですし、兄の行動の責任を共有するのは当然ですから」

 こう、なんていうか、家族ですから。って当たり前感が見えるようですよ。

 ティカちゃんのお家はそこで切り捨てちゃわないのが普通なんだなぁと思うんです。

 お兄さんの方はそっと視線を外してらっしゃいますがなにしでかしたんでしょうね。興味ありませんが。

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