第452話 寄り道
採取の実技講座を経てそれぞれの講座で感想や反省の共有。十五歳になっていない学生は迅速に住処へと帰るように促すため学生ギルドの担当生が学舎内を巡る。夜の講座を受けることができるのは十五歳以上の学生なのです。
「ネア、帰りましょう。ジーネも」
ニエナさんの言葉に反省会を終えたのであろうジーネさんも軽く手を振って同意を示します。
もちろん、私も帰ります。
「夜食仕入れたいから寄り道いい?」
ジーネさんに頼まれて屋台通りに足を向けます。
「ぅう。夕食付いているとはいえ、誘惑過多だぁ。いいにおいぃ」
あのお昼ごはんでは途中でおなかすきますよね。迷宮内でその場調達素材でのおやつは食べていますが物足りないですよねー。
一度に食べる量は少なめネア・マーカスです。
でも魔力使うとおなかすくんですよね。おやつ大事。
薬素材以外を学生ギルドに提出したニエナさんは貸付金の支払いにあてたようです。薬素材を買っていると気がついたら買いすぎていたそうです。照れ笑いすることじゃないと思いますよ?
リリーお姉ちゃんも散財多いですが、それ以上にたぶん、稼いでますよね? たぶん?
屋台で買い物をしていると買わないニエナさんがよく声をかけられています。だいたいは「先日の腰痛用の貼り薬よく効いたよ」とか「あの傷薬治りがよくて休まずに済んだよ」とかお薬のお礼でした。あと最近「ヘンリー不足ぅ!」とか「アリリ見かけられなーい」とかニエナさんに言って肩を叩いて走り去る謎の人たち。……なにあれって思ってたらジーネさんがため息混じりに教えてくれました。
「あれは人の恋愛見守り隊という非公式集団。関わらない方がいいかな」
あー。
「人の恋路って気になりますよね」
ルチルさんとオルガナさんが気になるところですがティクサーは遠いですね。
キュッと手が握られました。
ん?
「……ネア、恋する二人には干渉してはいけないと思うんだけどどう、思う?」
ニエナさんコワイ。
「そっと見守りつつ、たまには直接的にどう思っているのかを聞くのも大事かと?」
「っく! わかる! ヒトオシしたくなる、焦ったさ! すれ違っているだけとかって外野だと見てとれたりするしね!」
「ニエナのそれは集団による粘着観察(ストーカー)だからほどほどになさいね」
ニエナさんの勢いがすごい。呆れているジーネさんの反応はわからないでもない感じ。
「ぅう。つい同好の士を見つけたら嬉しくて。ヘンリーっていうのはね、ニオンさまとハインツさまを応援したい派閥ね」
は?
「リリーお姉ちゃんはアッファスお兄ちゃん一択ですよ!?」
「あー、ネアはアリリの強火勢かぁ。あの二人もいいよね。一緒にいるハインツさまがいつもより可愛いってみんな言ってる。わかる」
アリリ?
「リリーお姉ちゃんといるアッファスお兄ちゃんも優しげですよ? アッファスお兄ちゃんはいつも優しいですけど」
「いい男といい女の組み合わせはモノすっごく、目の保養。しあわせで目玉が溶け落ちそうな気持ちになるの」
ジーネさん、ニエナさんって『ヤバいヒト』ですか?
「気持ちだけで実際には目玉は溶けませんよ。どんな魔物の攻撃だというんだか」
ジーネさん、呆れてますが、とても慣れてらっしゃいますね。
「リリーの着ている服とデザインが近いですし、出身が近いのでしょう?」
「あ、これはリリーお姉ちゃんのお古だからかも」
しばらくはリリーお姉ちゃんのお古シリーズが在庫あるんだよね。ティカちゃんが作ってくれたお部屋着もありますしね。
「この服を着こなしているリエリー様……」
不意に後ろから囁かれて振り返ると見知らぬおねーさんが服の裾に手を伸ばしていましたよ。
「あ! お触り禁止です! ジーネ、ネア。帰りましょ!」
すんでのところでニエナさんに引っ張られ、無事『赤煉瓦』に帰宅です。
「おかえりなさいませ。お嬢様方、まずは汚れを落としてから食堂へどうぞ。アーマリア様はもうお待ちです」
「ただいま。グラシィ」
「ありがとうございます。レディライツ」
「ぁ、はい。ただいまです。グラシィさん」
グラシィに迎えられて応える年下順のご挨拶でした。
さーぁ、今日のごはんはなんだろなぁ。
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