第448話 学生食堂での食事

 ニエナさんと座学を受けて食堂で食べてから指定の採集迷宮に向かう話をしていたところ(班分けは現地で講師の先生が決める)、ジーネさん、『赤煉瓦』に下宿しているお姉さん(ニエナさんより年下っぽい)がひらひら手を振っていました。

「一緒に昼食しましょう。探索補助講座の実技で合同実技になるみたいね」

 知り合いと組めると嬉しいのだけど。なんてジーネさん、やんわりと微笑まれます。ニエナさんとジーネさんがおしゃべりしていると気持ち時間がゆったりと流れているような気もします。

「いやかしら?」

 ニエナさんはがっつり自分の手持ちの袋(たぶん財布)を確認し、「昼食代はだいじょうぶ!」と胸を撫でおろしていますね。

 ジーネさんが見ているのを感じたので応えるべき内容を悩みつつ思いついた答えを返しますよ。

「おすすめメニューとかありますか?」

 お弁当や荷物袋から食事を出したりとかしていますから学生食堂のメニュー詳しいとは言えないんですよね。グラシィのごはん、というか猫たちの作成メニュー美味しいし。

 なにはともあれ美味しくごはんしたいネア・マーカス十一歳食べ盛りです。

「そうね。鳥肉の揚げ焼きと白ツミレの餡かけサンドとかが今日のおすすめよ。看板によると」

 私はおすすめらしい鳥肉の揚げ焼きと雑穀パン(銅貨一枚)あとおかわり自由のスープを。

 ニエナさんはおかわり自由のスープと雑穀パン(小銅貨一枚)を。

 ジーネさんは白ツミレの餡かけサンドとスープ。香草サラダに切り落とし肉の塩焼き(銅貨五枚)を頂きました。

 ニエナさんの選んだ雑穀パンは前日のパンでお安くなっているものだそうです。学生食堂は調理実習も兼ねている為、安く味ムラ有りで提供されているそうです。

 こういう調理実習も参加してみたいものですね。きっと、野営調理実習とはまた違うんでしょうけど。

「あら。すこし塩味が強いわ。ニエナさん、すこし食べてもらえるかしら? スープに入れるにしても、ね」

 切り落とし肉の塩焼きをひとくち食べたジーネさんがニエナさんにお願いして、戸惑いつつニエナさんが味が濃かったという肉片をいくつかスープに受け取っています。ジーネさんのスープははじめから少なめで濃すぎるという塩味を混ぜれば濃すぎるということでしたら、私にもすこし多いですし、朝食もちゃんと食べている私は受け取れませんし、ニエナさんへの気遣いじゃないかなとは思うので眺めておきました。

「ぅうん。じゃあ、ジーネのサラダに『健康促進』かけておくね。お肉ありがとう」

 スープにひたしたお肉を頬張りながらにこにことニエナさんがスキルを使います。『健康促進』は医療系のスキルらしく、よぼういがくなので一部の人達に重用されているというのはフェンネルさん情報です。

 すこし考えてから「毒耐性や麻痺耐性のように事前に耐性が有れば有益ですからね」と教えてくださいました。

 学びを進めることで理解が深まればいいなぁと思います。

「今日は第三学舎の講座内での合同実技だそうですよ」

 ジーネさんが事前に集めたのであろう情報を共有してくれます。それを聞いたニエナさんがあからさまに落ち込みましたよ。

「新入生もいますし、移動生もいますし、ニエナさんも心配し過ぎない方が良いですよ」

「ぅう。私を知って避ける人が新たに増えるってことだぁ」

 頭を抱えるニエナさんをジーネさんがにこにこ見守っていましたよ。

「ニエナさんは護衛対象としてちょっとだけ難易度が高いだけなんですけどね」

 熱中してふらっと移動することが注意しておくことらしくちゃんと踏まえておけばいいんだとジーネさんはおっしゃいます。つまり、なまじっか戦える冒険者仲間だと想定するから問題なのだと微笑みながら。ニエナさんがより落ち込んでいる姿からそっと目を背けておきました。

 守りきれない冒険者は無能とにこにこ言い切りましたね。むしろ私の方が小さくて見失いそうだから難易度高そう。なんて笑顔をもらいました。

 私は自分で戦えますから。

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