第443話 『鑑定』スキルが欲しいです

 『春の丘陵地』『夏の丘陵地』をくるり巡ってケイブさんとティカちゃんの荷物袋が限界になったのでリリーお姉ちゃんが悔しみながら帰還を決めましたよ。

「だって次も無人だとは限らないじゃない! 好き勝手出来る機会はすごく、すごーく少ないんだから」

 即座にケイブさんが「好き勝手すんな」と突っ込んでました。

「ま、ネアちゃもティカちゃんも問題なく探索できると思うけれど、しばらくは単独迷宮探索はしない方がいいよ」

 ん?

「単独で行けるとこまでいっちゃうとね」

 うん。

「同年代とか、同講座の人とパーティ組まないといけなくなった時にドン引きとか、遠巻きにされて単位取りに不自由することになるからさ」

 あははーと笑いながら「てめーらが強くなれよ」と小声で吐き捨ててましたよ。リリーお姉ちゃん。ケイブさんも小声で「無茶言ってやんな」となだめてました。

「で、二人で行くのもいいけれど、誰か一人くらいは同伴者探しておいた方がイイかも」

 なんのために?

「はい。まわりの人たちの様子を見てからスキルや戦闘をした方がいいということですね? 浮かないように」

 ティカちゃんはなんか納得していますね。

「そそ。めんどくさいけどねー。ネアちゃもちょーっとまわり見ておくとヨシ。ほら、絡まれるの面倒でしょ?」

「まぁ、絡まれるだろうけどな」

 ケイブさん、ひどくない!?

 ティカちゃん、納得のなまぬるい眼差しむけてこないでよう。

 ネア・マーカス、確かに空気を読むことは苦手です。めんどくさいからね。

 迷宮から出ると学生ギルドの事務員だという人と遭遇しましたよ。

 リリーお姉ちゃんが内部報告をしていますね。

「ドロップ品買取してくれるって〜。私は二周目ギルドの人たち交えていくけど、ちびっ子二人はアッファスくんおうちまで送ってあげてねー。ケイブさんはどーするぅ?」

 私達は帰るで決定らしいですね。不用品売っても荷物袋の整理は必要ですもんね。

 ケイブさんは売れるだけ売って参加するそうですよ。

 オリバーさんとフェンネルさんがビッと手を上げて参加を表明しているのがなんか笑えました。

 リリーお姉ちゃんとオリバーさんパーティにケイブさんとフェンネルさんパーティにギルドに斡旋された冒険者の人が二人ずつ足されてもう一度迷宮行きだそうです。ケイブさんは売り払ったお金で荷物袋をひとつ買い取ってました。リリーお姉ちゃんに「安物買いねー、帰ってからなら私が売ってあげれたのにぃ」と言われて「おまえのクソ高いんだよ!」とまた軽口を叩き合ってました。仲良しさんですよね。

「リリーのつくる魔道具は優秀だからね。価値は正しくしておかないといけないから」

 私が不思議そうだった様子を見てアッファスお兄ちゃんが説明してくれました。お兄ちゃんも、迷宮に入りたかったのでは?

「ん? ああ。いいんだよ。暴走を止められないのは不安だけど、ギルドの人たちとの折衝はオリバーの方がずっとうまく持っていくから」

 帰ろうと促されて私とティカちゃんはリリーお姉ちゃんの工房にむかいます。途中で四番街にある屋台街をぶらりと散策して帰りましたよ。

 三番街の市場とは出店の感じが違って楽しかったです。物価高いですけど。

 アッファスお兄ちゃんによると専門性が高くなればなるほど関連物価は高い傾向があるそうです。

 四番街は治療師達の街。

 回復に特化した学問はお金をたくさんとれる。ということらしいです。魔物に襲われた傷も、呪いも病魔も払い除ける奇跡すら望めるということで高位者にいくら積んでもかまわないと思わせるそうです。病気は苦しいですし、その術を使用できる人材は限られるものですからわからなくもないかもしれません。

 知り合いの治療師はなんでも治しますがその後寝込んでましたね。つまり少なからず対価は存在するんですよね。

 普通はその対価は魔力です。

 生物の肉体は複雑で治療は異常を消す治療系。欠損を魔力で補う治療。怪我や病魔におかされる前に肉体の時を巻き戻す治療系と手法は多岐に渡ることになります。

 それぞれにかかる魔力の負荷が違うのは術者の適性にもよるらしいですね。私なんかは魔力ごり押しなんですが、たぶん、治療対象の治療すべき原因を理解できれば魔力消費は減りそうです。……本当に、鑑定覚えたいんですけど!?

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