第441話 二階層は『夏の丘陵地』

 第一の階層『春の丘陵地』には八つの試練の場が有り、四つの安全区画がありました。意外に狭いです。四つ回ったところで出口が開くので四つ試練を回れば帰れるようでした。そしてもう四つ試練を受ければ出口の横に夏の扉と看板のかかった青い扉が生じました。


【同一のパーティが八つの試練をこえることで夏へのとびらが開きます。各自がなんらかの試練の魔物を討伐することで鍵が生じ、その鍵に情報が書き足されていくので次からは春を廻らずに夏にも行けます。ですが、春を廻っていない者がパーティにいた場合、進めません】


 少なくとも八つの試練を目撃する必要があるようです。

 情報ありがとうございます。天職のこえさん。

「ティカのスキルギフトドロップ率すげぇな」

 ケイブさんのそんな心底羨ましいと感じさせる声につい振り向いたネア・マーカス、『鑑定』はドロップしなくて悔しい十一歳女児です。

「ひとつは落ちやすいみたいだけど、ネアみたいに何度も拾えるわけじゃないですよ?」

「おんなじのばっかりだと次第につまんなくなるんだよ?」

 資金稼ぎにはなるけど。

 二桁拾えたギフトドロップは四人とも使えるか試して遊んじゃうことにしました。

「よーし、『千切り』げっとぉ! ん? えー」

 リリーお姉ちゃんが不満そうな声をあげてますよ?

「どーしたリリー」

「調理スキルを期待してたのよ。アッファスくんたちにたまには何か作ってみたくて」

 ほうほう。

 でも『千切り』スキルは調理スキルだと聞いていますよ?

「そーしたら、工作スキルらしいの! 調理じゃないの! しょっく!」

「え。私調理スキル」

 ティカちゃんは調理スキルでリリーお姉ちゃんは工作スキル。え? 私は?

 ……。

「ナイフスキル……つまり武器スキルになってる?」

「あー、おれも武器スキル化したな。剣の打込みの正確性が上がるらしい」

 うんうん。

「それと速度があがるって」

「うう。使う武器が鈍器だからかなぁ。料理スキルがよかったぁ」

 リリーお姉ちゃん、杖は魔法の媒体であって鈍器というわけじゃないんでは?

 あ、ティカちゃんはメイス系鈍器愛用ですもんね。

 私は主武器槍でサブにナイフですからそれでかなぁとは思いますね。

「料理に適性がないって言われてる感じで不満ですね」

「あ。納得。ネア家事系になると一気に雑になるもんね。掃除はましだけど」

 ティカちゃんが酷いこと言いますよ?

「そんなことないと思う」

「あるわよ。掃除も『清浄』かけたらいいやって最近思ってない? 整理整頓大事だよ?」

 置いてある場所はちゃんと把握しているもん。

 綺麗にはなっているもん。

 第二階層は『夏の丘陵地』

 グッと気温が上がります。周辺の草も丈を伸ばし、雑木林の木々も緑の枝葉をわさりと増やしています。せせらぎの音を覆い隠すほどの木の葉のざわめきです。

 つまり風が吹き巡っているようで耐えれない気温ではなくなっているようですね。

 リリーお姉ちゃんが「夏限定薬草が採りやすい。助かる!」と喜んでいます。調合していると季節限定の植物が必要になることが多々あるようですから嬉しいらしいです。

「基礎練に使う素材が多いのは助かるわね。新人に荒らされてないし」

 今、荒らしているのはリリーお姉ちゃんですね。

 基礎素材が多い迷宮は冒険者ギルドに登録、正式に入国していれば探索許可がおりるので留学生や新入生であふれるそうです。僅かな薬草でも取り合い、奪い合いになるんだとか。

 成果を上げていかなければ次の迷宮への探索許可はおりず、新人の多い迷宮では成果を上げることができない。ということになっていくというのがケイブさんの説明でした。

「取り合いで採った薬草って雑に扱われ過ぎて肝心の部分ダメになっていて採取者にもお金入らないし、必要な調合者にも素材ないし、買いたい一般顧客も物価が上がって最悪って言われているわよ? 少しできるようになったら基礎素材の採取より稼げる採取に移行しがちだし、だからって新人さんに報酬出さないわけにはいかないから説明して値引きして買い取ってるんだって〜」

 リリーお姉ちゃんがさっきから嬉々として素材根こそぎ採取している理由を教えてくれました。ケイブさんが「耳が痛い」と心当たりがあるようですね。

「正しい道具と正しい採取方法は慣れより習えだとわかったよ」

「そのために学びにきてるんでしょ。学都に」

 ティカちゃんがなに言ってんのコイツ、って感じの表情で言い切るとケイブさん落ち込みましたよ。

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