第436話 現場に向かう

 閉鎖されていると聞きながらも確認に行くと主張するリリーお姉ちゃんを野放しにできないと現地に向かう事になりましたよ。

 オリバーさんがティカちゃんに後日第四総合学舎のおすすめ講師、講座を教えてあげようと不審者のような主張をしていますね。

 うろんげなティカちゃんにアッファスお兄ちゃんが「オリバーは顔だけは広いから」とひどい事を言っていますよ。

 リリーお姉ちゃんはフェンネルさんとちょっとはなれたところで未だに口論中ですよ。まるで、あれでは「喧嘩っプル」というやつっぽいですよね。

「治癒回復スキルは副作用ありも含めて求められているからね! 魔力を消費して回復するタイプとスキル使用者がその健康を損ないながら治すタイプと治療を受ける側の幸運や対価を求めるタイプが知られているね。一番怖いのが」

 こわいのが?

「患者以外から魔力を消費するタイプの回復スキルかな。本人は治ったけれど、その家族が魔力を失って衰弱死したケースもあってね。本人の治療対価の確認はしておいた方がいいよ」

 モグリじゃなくちゃんとしたところでとそっと付け足されていました。

 対象が回復する本人の身内の魔力ってあんまりなさそう。基本的には患者さん自身の魔力体力、そして術者の魔力体力っていうのが一般的とモノの本には書いてありましたよ?

 あくまで危険度チェックだそうですよ。

 ところで。

「フェンネルさん、今日はお暇なんですか? ケイブさんも」

 アッファスお兄ちゃんはわかるんですよ。リリーお姉ちゃんから目をはなせないと思い詰めてますから。オリバーさんはそれを面白がってるだけですし。

「そうよー。なにもないを確認に行くんだから」

「玻璃の煌迷と同じタイプなら、特になにも言っておられないわけですからね。ネアさんは入り口を開けられるとハインツは確信していると確信していますから。念の為ですよ」

 ……

「リリーお姉ちゃんへのぜんぷくの信頼」

 すごいですね。としみじみしてたら二人ともから「違う」と否定されました。仲良しさんですね。

 ま。

 確かに『腐海瀑布』への入り口は開けることができるんですけれど。でも、私だけじゃなくてボブさんとアトマ姫も行けるはずです。試練の魔物討伐していますからね。

 ロッサ嬢は倒していませんし、ボブさんが沈黙したら『開かない』になりますよね。確かに。

 アトマ姫とボブさんを含むごろつきさんに追われた道を辿りながらごろつきさんの印象はかつてのケイブさんを思わせる風体だったと思い出します。

 事情をさらりとリリーお姉ちゃんが説明すると「あー、たぶん指揮役は現場にいねぇクチだなぁ」とおっしゃいますよ。お金だけ払って正体不明のまま『対象』への暴行を依頼するというケースはけっこうあるそうですよ。治安悪いですね。

「迷宮都市なだけに行方不明はいくらでも揉み消せるからねぇ」

 空を仰いでオリバーさんがなにかを指差しています。

「お。春の期名物アオシジミ。あの鱗粉が眠薬の原料らしいんだけどさ。外じゃ捕獲し難いよなぁ」

 などと欠伸ですよ。

 確かに指差す先には小さな青い蝶がふらふら飛んでいました。迷宮のアオシジミはもう少し確保しやすいんですかね?

「ネア」

「どうしました。ティカちゃん?」

「無闇に蝶を追ってはダメよ。迷うから。たぶんトラブルに」

 なんかティカちゃんに誤解されてませんか?

 なんでみなさん納得顔なんですか!?

 しかもリリーお姉ちゃんまで。

「心配、だから」

 ぎゅっと握られた手が不安を感じさせられてぎゅっと握り返しました。

「わかった。気をつけるね」

 ティカちゃんの眼差しがどーしてむちゃくちゃ不信感なんですか?

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