第435話 再会続きです

 ヘンリーさんはフェンネルさんでした。アッファスお兄ちゃんが『フェンネル』と呼ぶのがイマイチ上手じゃなかったのでいつのまにか『ヘンリー』呼びだそうです。オリバーさんや酒場のマスターにも定着したらしく、アッファスお兄ちゃんは反省しているようでした。ご当人は「フェン坊と呼ばれるよりずっといいですよ。アス」とアッファスお兄ちゃんと仲良し主張していましたよ。

 オリバーさんが「オリバーとヘンリー兄弟みたいだ……」「やめてください。ご遠慮します」フェンネルさんに絡んでは瞬殺されている酒場朝食時間です。

「で、マスター、森林公園で封鎖迷宮の入り口が開いたんでしょ。なんか聞いてない?」

 鹿肉のスープ美味しいですね。お供のパンは割るときれいな黄色でちょっと不思議ですよ。ティカちゃんが「たまご? カボチャ? それとも?」と味の追求をしようとしてましたよ。たまごと黄茄子だそうです。……素材言われてもちょっとわかりませんでしたね。市場巡りをせねばならないと心にメモりました。

「騒ぎがあったようだが、特に話は上がってないな。公爵家のお転婆姫がオイタを若様に叱られたっつー話やどこぞのお嬢様方が暴走してお叱りがあったとかだったな。オリバー」

 マスターが朝食セットを作りながらオリバーさんにふってますよ。

「んー。そそ。お嬢様方はまだまだ未熟で自分たち以外の常識の差を受け入れんの苦手だからねー。折り合いつけれないとこの学都では危険だから諸注意だね。ほら、死んでもしょうがないけど、せめて一太刀ダメージを。あわよくば道連れようってタイプもいるからさ」

 あー。

 イゾルデさんみたいに「弱いから死ぬの」って感じの人もいるものね。

「自分で対処してはじめて成長していくんじゃないの?」

「リリー。周囲の人財をうまく使うのも使われんのも本人の資質で成長だからな」

「それもそっか。私も非力な乙女だからアッファスくんも心配してくれるしね。いい道具作んなきゃね!」

「ハインツが単独行動推奨されない理由は乙女から程遠い理由でしょう。図々しい」

「ニオンくんはいつまでも独力で素材集められない貧弱くんだもんねー。アッファスくんいつまでも手伝う必要はないと思うわ」

 ぽんぽん会話が飛び交いますよ。

 そんな中ケイブさんが「朝定食頼む」と入ってきましたよ。相変わらずむさっくるしいおじさんですね。

「いつも元気だな。お。……縮んだか? 故郷でやっぱり栄養が摂れなかったのか?」

 どんな心配ですか!

 真剣に心配しないでください。

「縮んでませんから!」

「そうか。あまり騒ぎを多発させないようにな」

 多発ってなんですか!?

 失礼だと思いますよ。

「ケイブさんはずいぶん落ち着きましたね」

「資金に問題なくやっていけてるからな。封鎖迷宮は公爵代行の姫さんのスキルで開いて再び閉じたんだろうという話になってたぞ。何人か行方不明になったが運のない事故ということになったみたいだな」

 ロッサ嬢は拒否られた感じですね。やはり強引に案内人を召喚しているせいですかね?

「えーぇ。新迷宮ぅ。スキル千切りとか私も拾いたいー」

「なにを言っているんです。『千切り』は調理スキルだという話だと聞きましたよ。ハインツに適性があるわけないでしょう」

 フェンネルさんとリリーお姉ちゃんは本当に仲がいいですよね。ティカちゃん。

「……ごはんが、おいしくないわ」

 え?

 マスターの料理おいしいですよ?

「ティカちゃん?」

 好みが合いませんでしたか?

「喧嘩を耳にしながらおいしく食べるのは私にはむり」

 あー。わからないではないですね。

「ごっめーん。おいしいものは美味しく食べたいわよね。マスターもごめんねー。気が急いちゃったぁ」

「自分も申し訳なく。つい煽られると……」

「えー。事実を煽りだなんて酷くない?」

「リリー、朝食終わるまで静かに食べよう?」

「はぁい。アッファスくん」


「ネアもちゃんと食べなさいよ。いつもよりゆっくりだわ」

 あれ?

 そうでしたか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る