第431話 ボロネーゼ

 魔物からのドロップ肉兎肉のローストレッグを凄い勢いでみじん切りし、同じくみじん切りされたセロリと玉ねぎをワインで炒め煮、赤いトマトを投入するボロネーゼちゃんです。実に野生的かつ家庭的ですね。パラパラとふりかけているのは鉱石調味料でしょうか?

「あー。いい酒の匂いがするーー。のーみーてぇえ」

 ボブさんがちょっと理性を捨てていますよ。大丈夫ですか?

『酒精は煮ることでどっかいくからみんなで食べられるにゃよ』

 第一の試練はセンギリウサギの群れでした。

 アトマ姫がきっちり制圧していましたよ。拘束して焼いてました。『絡まり』と『火球』ですね。

 第二の試練はアオキメグミという魔物で倒すと野菜をドロップする緑のかたまりでした。

 核を的確に投げナイフで打ち抜くボブさんはちょっとカッコ良いのではないでしょうか?

 ウサギもメグミも最初はロッサ嬢が挑戦したんですよ。

 ええ。

 無理でした。

 拘束されているウサギを攻撃しようとして拘束しているツルを切り裂き解放してしまいあわや首を刈り取られかけてましたよ。ボブさんが「っぶねぇ!」と叫んでました。

 メグミの時は近くだけで触手に囚われかけていましたね。「あおくさぁあああい」と泣いてました。お野菜嫌いですね。ロッサ嬢。

 私、ネア・マーカスは「フロアごと燃やす?」と聞いては「いけません」「ご遠慮ください」と拒絶されていただけです。

 他の人がいるわけじゃなさそうなのでいいんじゃないかとは思うんですけどね。

 実戦要員の二人も疲れているだろうということで安全区画でおやつです。ついでにドロップ品の整理ですよ。私見てるだけですけど。(戦ってないですから)

「えっと、『千切り』スキルが二つとウサギ肉が五つ。ウサギニンジンとウサギケールが一本とひと束ですか。『千切り』、武術スキル系なら覚えられないかもしれませんが挑戦は大事ですよね」

 などと言いながらスキルギフト使用するアトマ姫ですよ。

 どうやら武器適性低いらしいですよ。回復主体系のスキル使いは武器スキル覚えにくいらしいです。私は、体力がないだけでどんなスキルにも適性ありなんですよね。体力が足りないだけで。

「やった。使用可能です、ね……。調理スキルってなんですか?」

 お料理するための技術スキルでは?

「! アトマちゃん! それ戦闘系スキルじゃないの!?」

 身を乗り出すポニテ娘ロッサ嬢、アトマ姫に引かれてますよ?

「ええ。調理スキルと出てますわ」

「覚えられるかも知れないから、それ、ちょうだい!」

 ポニテ娘の発言にアトマ姫だけでなく、私もドン引きしましたよ。

 後日代金を支払うことで『千切り』のスキルギフトはポニテ娘に提供されました……。

 満面笑顔で「ありがとう」から秒で「ロストした」の絶望顔でさすがにちょっと可哀想になりましたよ。

 たぶん、ボロネーゼもそうだったらしく、『落ち込んでいる時にはボロネーゼの大好きなおやつを食べるといいにゃ!』と嬉々として調理しはじめた猫がいましたよ。

 野菜とお肉のみじん切りがたっぷり入った赤いスープです。小麦粉をたまごで練った生地を切り落としながら入れてもう一煮立ちで出来上がりだそうです。

『ボロネーゼ、お気に入りのおやつスープにゃ! あったかくて元気が出るにゃよ!』

 ボブさんがポニテ娘に予備のスープ皿を貸し出してました。私もアトマ姫も自分の食器がありますからね。

「うん。コレはボロネーゼ」

 ポニテ娘がスープを受け取りながらなにやらしみじみと頷いていましたよ。

 確かにボロネーゼにお似合いの赤いスープですね。

 つけ合わせにはニンジンを棒状に切って炙りながらいただきました。

 甘さが増して美味しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る