第425話 世界の果て
世界は球体か平面かを言いあうロッサ嬢とネア・マーカス十一歳ですよ。
世界が球体だったら立っていられないですし、世界の果てが存在しないことになっちゃうじゃないですか。
「貴女方、状況をわかってらっしゃいますの?」
試練という名の戦闘を終えたアトマ姫が腰に手をあててロッサ嬢と私を睨んできましたよ。はい。場を読まなさ過ぎる言い合いでした。はい。
いっしょくたにされたくなかったのにいっしょくたにされてもしかたない行動をとってしまいましたね。失敗。
「だって、ずっと先に進んでいけば『死の世界』に落ちるなんて聞いたこともないんだもの」
「地面が丸いなら落ちたり転んだりしそうじゃない?」
「落ちないわよ。地面は大きいし、えっと重力だってあるんだし!」
だから、重力ってなんですか。
「だ、か、ら! 二人ともそこまでにして。ボロネーゼ様達が迷宮の入り口に連れて行ってくれるし、一度通過する事で正規の帰り道も安定するそうですから。それと」
それと?
「案内はしてくださいますけれど、魔物は出現し戦闘による討伐が必須であるとのことですので次はおふたりも戦闘に参加してくださいね」
叱りつけてくるアトマ姫にティカちゃんみを感じますね。つまりお世話上手さんです。
「グウェンの苦労が今わかった気がしますわ。……ボブさんの傷の治療はしてありますが、スキル使用による魔力消費が大きいので連続でスキル使用は難しくなっているそうです。ですから、そう、とりあえず、ロッサ嬢は武器をしっかり握るところから頑張ってくださいね」
あー。
トルファームのお姉さんだよね。確か。ウェイカー、くんだったかな? 相変わらずなのかなぁ。
そういえば試練戦闘の最初だけ参加していたロッサ嬢は武器で殴るのかと思えば、何故か投げ捨ててましたね。転がってきた武器に足をとられて転びかけていたボブ氏がとても焦っていました。
え?
私?
狙おうとした位置にボブ氏やアトマ姫がいて狙い方がわからないというか、私、連携ってよくわからないんですよね。
「つまり、入ったフロアをとりあえず焼き尽くして魔物をせん滅すれば良いってこと?」
せめてボブ氏が魔力を回復するまでって事ですね。
ネア、理解しました。
「良いわけがないでしょう。迷宮環境の破壊行為は影響を受ける地区のことも考えなくてはいけませんわ。駆除対象があった『回遊海原』とは違いますから」
即座に否定拒否されました。アトマ姫容赦がないですよ。
そう『回遊海原』では火塩草の駆除が必要でした。フロア丸燃やしはしてませんが。
えー。
「地元の『蒼鱗樹海』では焼き尽くしやったよ?」
「……『葛』と呼ばれるつる植物は有害と聞いていますよ。それ除草のためでしょう?」
はい。その通りです。
まだまだ葛は元気なんですけどね!
「葛は燃えるんですけど、最近は暴れ蔓草と鉄荊が燃え残るので耐性がつくんだなぁと思ってます」
焦げた大地に鉄荊従えた暴れ蔓草が徘徊しているんですよね。地面ぶっ叩きながら。
「迷宮も学習するからなぁ」
ぼそっとボブ氏がもらしますよ。さっきまで『自分はいません』とばかりに存在感を消していたのに。
『ぇええい。人間。来ないにゃか!!』
『にゃーーん』
赤い猫、ボロネーゼちゃんが岩をたしたしして主張しています。いつのまにか黒猫も湧いてますよ。
「かわいい」
私とロッサ嬢の言葉が被りました。
ロッサ嬢にははにかむ笑顔を向けられましたが、ちょっと不本意です。
アトマ姫は『人の住める場所は迷宮様の影響範囲なのだから最も力のある迷宮の内側』という説を紹介してくださいました。
ボブ氏は考えたこともないと笑ってましたよ。
力のある迷宮。
ここは迷宮が支配する世界。
そうかぁ。
世界の果てもその先にあるという死者の世界もここには存在しないのかぁ。
なんだか少し心細さを感じますね。
迷宮の入り口が開きます。
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