第417話 魔物は生物
「と、いうことで迷宮学都にむかいます。『魂極邂逅』には寄れませんが国内移動中はちゃんと魔力送りますからね」
迷宮管理空間でちょっと拗ねている白兎のたまちゃんを宥めようとしている迷宮管理者ネアです。
『維持はちゃんとしてゆくのです。ええ。おはなしあいの結果、互いの迷宮への入り口がある場所はしばらく鍵をかけて使用禁止にして』
あれ。
そうなんですか?
『それぞれ地元を迷宮の特色にそった発展が望ましいからですね』
ふわりと園長がたまちゃんの言葉を肯定して目的を教えてくれますよ。
それぞれの特色にそった発展。
園長の言葉にふぅんとエリアボス蛇を撫でておきます。なんか『ミーも撫でるでござる』とか自己主張してきた蛙も撫でておきます。ツルツルすべすべですね。エリアボス蛇とはちょっと手ごたえが違うようですよ。どっちも好きですが。そんななでなで光景を様子見していた白黒羚羊を手招きして呼び寄せて撫でておきます。おお。ふこふこ。ブラッシングしないといけませんね。……たまちゃんその寄ってき方はワンピースに皺がつくのでは? 撫でました。
白い小蛙がイチゴミルク(わんだりんぐふろっげー解説)をカップに淹れて置いてくれますよ。おやつはプディングと雪蜥蜴大福です。甘くて冷たくて美味しいです。もふもふと一緒にもぐもぐですよ。エリアボス蛇は冷たい大福よりプディング派のようです。冷えるのはちょっと苦手っぽいですね。
『それなりに階層は増えましたし、本迷宮核まで辿り着くには苦労することでしょう』
そうなんだ。
あー。
『ティクサー薬草園』はまだ三階層だし?
その上で三階層は強力な魔力搾取階層だしね。
『三階層を越えられても夕方には迷宮を閉ざすという条件もありますからね。薬草園を攻略するには少々時間がかかるでしょう』
なるほど。その間に搾取した魔力を使って強化ですね。三階層に特攻をかけようという冒険者の人は少ないんですよね。火のスキルが得意な冒険者の人に『帰還グミ』を採って来てもらって銀貨二枚で冒険者ギルドで買ってから挑戦してはいるらしいですが中継地まで行って『帰還グミ』を魔力注いで量産できなきゃ採算取れませんからねぇ。あのお兄さんは自身の魔力育てつつ『帰還グミ』でぼろ儲け中だそうです。
先日、とうとう『帰還グミ』五個生産可能な魔力容量を確保したとか。……迷宮攻略はどうしたんでしょうね?
『『魂極邂逅』も大丈夫ですよ。呪毒の階層があるですからね』
呪毒の階層。
たまちゃんが寝そべりながらそんなことを言いますよ。そういえば、その効果ありましたね。撫でて欲しいのはここですか? それともこっちですか?
『ちゃんと入り口から来ている探索者は大丈夫ですよ。深層階と『石膏瓦解』との間は呪毒満たしてますけどね』
あー、夜間は屍鬼系の魔物が増量するんでしたっけ。しかも顔見知り系(死者)が現れることもアリで。
教育役に出てる屍女や屍騎は基本的に呪毒の階層の奥にいるらしく入り口からの冒険者に対応するのはごく僅かだそうです。ごく僅かの一例はイゾルデさんの喜ぶ『師範』でしょうか? 当の影屍は魂の定着も成功し、彼女の来訪を怖れているそうですが。(迷宮魔物たちの訓練には精力的だそうです)
『是。是。『天水峡連』契約有』
たまちゃんが語る端で白い亀がパンパン床を叩いて主張しますよ。いつもののんびりはどこにお出かけ中ですか?
『アドレンス王国の契約者も最奥まで行ったわけではないでござる。雪原における次階層への門は移動するでござるから心配無用でござる』
えー。本当でござるかー? ござるがえるぅ。
みんなと戯れて魔力を投入して管理空間から出ることにします。
国から出るまでは管理空間出入り自由ですからね。
「できれば、深層階までは到達して欲しくないものですね」
ん?
「天水ちゃん」
『是?』
「私の荷物袋になにを突っ込んでいるのですか?」
荷物袋は生物禁止ですよ?
その白いちびっこ蛙を入れようとしていませんか?
『てぃーさーばーふろっがー。茶器! 所持可!』
「それは、生きた魔物です。禁止! 荷物袋不可!」
『茶器』
しょんぼりしてもダメなのですとも。
それは生きた魔物!
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