第405話 楽しいのがいいです。

 翌朝、一番グレックお父さんはまだ王都に戻ってきません。まぁ当然でしょう。早くて二日後でしょうか? 騎獣の体力問題もありますし、マオちゃんがいますから預け先をあたるにも連れてくるにも強行軍はダメでしょう。たぶん。

「あー、ネアちゃんおはよー。見てー見て見て新しい外套ー。スネークレザーの耐寒効果付きだよー。買えちゃったー」

 テリハさんがるんるんで新しい外套と十個しか物の入らない荷物袋を振り回しながら自慢してきましたよ。

「おはようございます」と挨拶するネア・マーカス十歳女児です。

 昨日『天水峡連』のわんだりんぐふろっげーに交渉し、数体の魔物狩りをする事で外套と治療薬使用の赤字をなんとかしたテリハさんとケイトさんでした。

 各自にひとつ荷物袋(十個しか物は入らないが時間停止機能付き)を迷宮初侵入記念に貰ったんです。

 最初は「十個! シッブ!」とおっしゃってたんですがドロップ品が食品多めかつ美味しい時間極短だったのであっさりてのひら返してらっしゃいましたね。

 常温で溶けるそうです。甘くて冷たい大福餅が『天水峡連』一階層ではドロップします。

 わんだりんぐふろっげーにより、一時的に三階層のふろすきーとーどの接待フロアなる場所に招待されたんですよね。わんだりんぐふろっげーの言葉を理解していることになっているのはソールカーナンさんだけなので通訳はお任せしておきました。

 お湯に浸かる青蛙のムレがいきなり四人の侵入者にばっちゃんばっちゃん慌てて潜ってましたよ。

 わんだりんぐふろっげーは『げっげー』とくるくる踊り回ってました。青蛙は冷たい息をわんだりんぐふろっげーに吹きかけてましたよ。

 侵入者四人の前には氷でつくられたグラスです。

 足湯でお茶会になった訳なって、青蛙にミントティや紫蘇茶、ホットチョコレート(ケイトさんの鑑定結果)をいただきながら冷たい大福餅(一階層ドロップ品)でしばしくつろいだわけなんですよ。

 その時に『天水峡連はじめての侵入者』記念として記念品に各自に贈られたのが荷物袋(譲渡不可)だったんですよね。

 私に渡してきた分は、『蒼鱗樹海』の宝物庫の奥に繋がる荷物袋と同じ機能ですね。

 まぁ機能的には十個出し入れしたらしばらく他の物を出せない制限はあるようですが。

 冷たい大福餅をばくばく貪ったテリハさんは十個全部大福餅も突っ込んでたんですが、全部高額で王宮に買い上げられましたよ。(泣いてた)

「今日も『天水峡連』に潜るでしょー? 楽しみぃ」

「あんまり、雪蜥蜴大福をぱくぱく食べていると太りますよテリハさん」

「だって、アレ美味しいし! 迷宮内だと消費エネルギー多いから大丈夫だし!」

 食べるにも販売にも美味しいらしいです。

 一階層なら問題なさそうなので調査してもいいとちゃんと正規許可がおりたんですよね。

 警備隊や騎士隊で今編成をどうするか打ち合わせ中だそうです。契約に向かうのは王か王子かでも揉めてましたね。

 王様のもとに無事に雪蜥蜴大福はひとつたどり着いたそうです。毒味で減ったらしいんですが鑑定があるのに? とちょっと首を傾げますよね。

「持ち帰っても買い上げられますけどね」

「物珍しい間は仕方ないんじゃない? さ。ネアちゃん、朝ごはん食べて地下水道に行こ!」

「ソールカーナンさんが注文してくださってますよ」

 行きましょうと促され、お泊りしてる宿の廊下から移動です。一階が受付と食堂という形式の宿なので人気だそうですよ。テリハさん曰く、食堂は別の建物だったりする宿も多いらしいです。地下で繋がってたり、転移魔法陣を組んでたりするのは本気の高級店だそうです。

「おはようございます。ネアさん。今日も地下水道でよろしいのでしょうか?」

「はい。防寒対策していきましょー」

 ソールカーナンさんが注文してくれていた朝ごはんはりんごと栗を詰めたパンとお肉入りのミルクスープでした。

 きっちり食べてから活動ですよ。

 あ。昨日の『天水峡連』で狩りをしたのは実に一階層の出口そばちょこっとだけすし、入り口からほぼすぐ吹っ飛ばされるは、三階層に招待されるはで出口ちょっとしかマップはメモれてないとソールカーナンさんが嘆いてましたね。

 さて、極寒冷風を防ぎきるだけのヒートをぶちかますしかないんでしょうかね?

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