第404話 案内蛙の不安

『マイロード、ミーは夏期の終わりに十日ほど『石膏瓦解』秋の最中にこれまた十日ほど『回遊海原』に修行に赴いておったのでござる』

 ふんすと胸というかおなかを突き出すわんだりんぐふろっげーを前に微妙にお説教されている空気を感じている迷宮管理者ネアです。一応マイロードとか言って持ち上げてきますね。

 現在、『天水峡連』の出口までを散策し宿に帰ってからの管理空間ですよ。

 ちなみに二足歩行スタイルになると私よりおっきいですよコイツ。

『迷宮の魔物でも他所の迷宮に潜れるのでござる』

 あー、うん。知ってる知ってる。

『通常、迷宮の魔物は迷宮外では弱体化するでござる』

 あれ、そうなの?

『迷宮の魔物は迷宮から生存魔力及び強化魔力を補充しているのでござるよ。外に出るなら魔核と器の魔力の結びつきを自ら律し、野の魔物を狩って魔核を捕食するのでござる』

 へぇ。

『それをなしてミーは外にも出れるようになったでござる。……エリアボス蛇殿は影響下の地表では活動なさるがいまだ範囲外には出ておられんでござる。出るならば『迷宮バトル』ぐらいでござろーが、エリアボス蛇殿のご気性から防衛主体でござろうかと』

 迷宮バトル。

『迷宮同士で攻略しあうのでござる。攻めたり守ったりでござるな。迷宮バトルが行われる時は一般の侵入者は排除されるか、別の階層が用意されるものでござる。その迷宮の影響下にあるヒトの国にとっても死活問題でもござるから、魔力供給用に生け贄が出されることもあるでござる。オマツリはおそらくソレの大きいものではござらぬかと』

 オマツリ!

『ですから、マイロード迷宮内で管理空間へ移る場合、同フロアに不明な相手がいないことが大事になるでござる。不穏な変化を察知する者もいるでござるよ。勢力間闘争は情報戦でござる。間諜はある前提で動くべきでござる』

 察知するような人いるんだ?

『迷宮神子やエリアボスとなると把握することも多いでござる』

 あ。普通にいるんだ。

『男はこの国の迷宮のニオイだけでござったがあとの二人は異質な迷宮の恩寵のニオイが強うござった。注意されたし。注意されたしでござる』

 くるんくるんとわんだりんぐふろっげーがまわりながら『げーげー』鳴いてますよ。

 ……これって、うん。

「天水ちゃんに説明役押しつけられた?」

 あ。回るのやめた。

『それもあるでござるが、ミーは必要な意識喚起だと認識しているでござる。春の期になればマイロードは遠方地に向かわれ、『蒼鱗樹海』に様子見的に勝負を仕掛けてくる迷宮がないとは言えない状況だそうでござる』

 え。

『いわゆる、『初心者狩り』でござるな。このあたりの対策は園長殿がしておられるでござる。とりあえず春の期になれば『石膏瓦解』か『回遊海原』に軽く頼む予定でござるよ。ご心配なくでござる』

 ……。

『マイロード?』

「うん。つまり、迷宮同士の経験ってことだよね?」

『そうでござる』

 うん。よし、合ってた。仲間内で交流する以上に経験になるんだと思う。春までは一日の残魔力は迷宮におくるし強化はできるよね。よし。

 あと。

「私が目をつけられやすいってこともあるんだよね?」

 あのYES YESの選択肢とか、嫌がらせのようなかまってちゃん迷宮とか。迷宮が『管理者』を判別してきてるのは確かなのか。

 それに対して対応が必要なのは『オマツリ』で敵性存在があるから。

『そうでござる。マイロードは大いなる特別でござるので』

「つまり。管理空間へ渡る時は気をつける。別の迷宮の気配に留意する事が必要。で、合ってるかしら?」

 ほとんど瞬きの瞬間を感じとる存在だとそれはそれで迷宮が感知するんじゃないかしら?

 あ。

 感知したから注意を促されたのか。なっとくー。

『そうでござる。マイロードの行動制限なぞミー達の好むところではござりませぬがひとときとはいえ、ミー達が何もできぬ届かぬ地へ赴かれるマイロード。マイロードも不安でござろうがミー達も不安なのでござる』

 ああ、なるほど。

「ぽかミス多いもんね」

 私。

『まっことそうでござる。……そ、そこがマイロードの愛らしさでござる、よ?』

 ふーん。

 そうなんだー。

 ありがとう?


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