第402話 姦しく地下水道Ⅵ
強烈な冷風が階段を吹き抜け、遠い距離から『げー』っとニート君たちの断末魔が響いてきたような気もしますね。
きっと、気のせいでしょう。
あの扉を開けると魔力を多く含んだ冷風が吹きつけたんですよね。
そう。
『天水峡連』
階段を下った先にはそんな看板を堂々と掲げた青い扉がぽつんとありました。
ちなみに狭くて人が複数いると引き返せないような仕立てです。後続に誰かいたら先に出てもらわなければ出れない系の。扉前に広めの場所があるというわけでもありません。
故に、扉の前で沈黙に包まれましたよ。
「……」
「……」
「……」
「今の外の雪原具合がこの迷宮の影響である可能性があるんですよね?」
沈黙するネア・マーカスを含む三人に頭を傾げてくるテリハさんです。
「そうですね」
仕方がないと言わんばかりの声でケイトさんが肯定します。
「一階層目がより反映されているものですよね。迷宮の影響力」
「そう云われていますね」
テリハさんもケイトさんも気が重そうな声ですよ。
わかります。
今の国内は氷壁に閉ざされていますからね。想定される迷宮一階層は極寒地帯です。
ソールカーナンさんがゴソゴソと防寒装備を厚くしているようですよね。
「開けますか?」
「引き返してもよいとは思いますよ?」
「あの、自分だけでも入り口を開けて中を見てもよろしいでしょうか? もちろんお三方は安全のために下がっていただいて」
「ないですね」
ソールカーナンさんが提案すると即座にテリハさんが否定しますよ。まぁ、私も迷宮には入りたいと思いますが。
「そう! こんな貴重な体験逃せません! でも、ネアちゃんはすぐ逃げれるように後ろですよ。で、その次がヒルトさんですね。なにしろ格子戸を開けなきゃです」
テリハさんがもっともな事を言い、ケイトさんが「そうですね」とさらっと応じてらっしゃいます。
「防寒装備を強化してくださいね」
どうやらテリハさんが開けてケイトさんが荒ゴト対応するようです。
じゃあ、私はいつでも『ヒート』準備ですね。
準備していたわけで、凍えるかと思えた冷風も耐えきった訳です。空間にかけた『ヒート』で四人凍えずにすみました。階段の壁はうっすら白く霜ついてます。
押し扉だったらしい扉の先は純白に輝いており、なにもわかりません。
わかるのは。
「さっむいっ!!」
そう、テリハさんが叫ぶその言葉の通りだと思います。
「痛いくらいに寒いって死ぬわ! 一階層から殺しにきてんじゃないの!?」
テリハさんが吠えてますよ。
「迷宮への不満は分かりやすく伝えるべきなのよ!」
そういうしきたりはやっぱり一般的だそうですね。
「ただ、この冬の期なので迷宮からも『わかってた事』と考えられていたとしてもしょうがないことだとは思われますが」
ケイトさんが容赦ないですよ。
『げー』
ん?
階段の上からニート君たちの声が少し近くありませんか?
『げー!』
ニート蛙達の鳴き声と魔力がゾワリと動きます!?
空気が震え、妙な振動と破砕音が響き渡りますよ。
階段を流れ落ちてくる氷片と水流。
水流?
あ。
そーいえばふろすきーとーどもお湯というかお茶吐きましたね。
グラニートードもお湯吐くんですね。って流されて迷宮に侵入することになりましたよ。もしかして迷宮になかなか入らない私達に焦れましたか? 天水ちゃん。
天水ちゃんには後で説明してもらいますからね!
一歩目が、気がつかないうちになんてつまんなーい!!
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