第401話 姦しく地下水道Ⅴ
「転生ニートニート狩り(物理)にあう。……とか呟いてみたくなりますね」
ケイトさんが爆風にまぎれて妙な事を呟いていましたよ。
蛙に転生してどうするんですか? いえ、魔物ですから魔核が有れば復活することもあるんで、狩られて終わりではありませんが、ニートって何か意味があるんですか?
はて?
よくわからないので大人しくしているネア・マーカス、たぶん転生者ですよ。憑依意識かもしれませんが。
「あれ? ニートって呼ばれてる有名系魔物とか高名なお偉いさんとかいたっけ?」
「さぁ? 残念ながら縁がなく存じませんね」
「仮呼称を付けるのは他の迷宮の魔物と区別するためですよ。あとは迷宮が『グラニートード』と名付けているので迷宮への敬意を表するためにもとの名を短縮した呼称が相応しいとされています。固有種かどうかは魔物研究者でもなければわからないことですけどね」
テリハさんとケイトさんのやり取りを眺めている私がわかっていなさそうと思ったのかソールカーナンさんが注釈いれてくれました。ありがとうございます。なにしろ、ネアはまだ十歳の世間知らずなお子様なものですから。
ところで、この赤蛙のニート君たち切り裂かれて中身ぶちまけた仲間の中身舌でびゅこびゅこ喰らってらっしゃいますよ。ねぇ、ちょっとエグくないですか?
「目の前の獲物に夢中のようですから、今のうちに先に進みましょう」
「え!? 襲ってこない!?」
「状態が常態から微睡になっているので通過できると思います。一匹バラせばいけるようですね。……なにかを捕食させれば通れるのでしょう」
「なるほど」
ケイトさん、淡々と進みはじめますよ。つまり、襲ってきそうならまた風で切断して撒き餌しちゃえって行動ですね。寄ってきているニート君たちは心持ち小柄ですから、食べて成長するんでしょう。
「少し蒸し暑くない?」
ニート君を警戒しつつも進むことには同意らしいテリハさんが言いながら、厚手の外套をぱたぱたして風を送り込んでいます。
「ニートは体内で金属を発熱させやすい生物特性を持っているようですね。だから率先して金属を捕食し、周囲の水温を僅かに上げることで行動しているのではないでしょうか? 爆発することで熱源が直接水に触れ水温も上がり、その熱源を捕食することで当ニートの活動力を保持しているのでは?」
お、おぉう。
なんかよくわからない事をケイトさんが語っている。
あ。テリハさんがそっと目を逸らしてる。
「つまり、ニート蛙を倒しすぎると蒸し殺されかねない訳ですか」
ソールカーナンさんがテリハさんの外套の留め具に冷風という小さなスキルを使ってらっしゃいましたよ。
あ。私は大丈夫です。
ルチルさん特製のリリーお姉ちゃんのお古には環境適応耐性が無茶苦茶付与されてますのでとても快適なんです。
「そうです。ですから、先に進む方がよいと思います。ここから先はソールカーナンさんも入ったことのない区画なわけですよね?」
「はい。師や同僚たちの残した地図が正しいかどうかを確認しておきたいのです」
あ。地図あるんだ。
「記録では地下水道は五階層以上存在し国内全土に繋がっていると記されています」
侵入し放題?
「ああ、だから格子戸で分断してあるんだ」
テリハさんがうんうん頷いてらっしゃいます。邪魔くさいですけれど、侵入対策ですね。
「王都内の水路管理は冒険者ギルドと教会の共同管理ですが、ニート蛙の話は聞いていませんね。異常成長したスライムとコックローチ系の虫系魔物の討伐依頼が時折りありますが」
そういった依頼は迷宮でない上に収益が少ないので人気はないそうです。軽犯罪の奉仕罰に使われたりしているそうですよ。
そんなお仕事あるんですね。と感心したら「依頼受付は十四歳からですよ。ネアさんと同じくらいの大きさの虫もいますから」と返されました。確かに虫は大型化すると屈強ですよね。危険!
蜘蛛脚は美味しかったですがあそこは迷宮だったしなぁ。
少し進んで涼しくなってきた頃にニート蛙を惨殺し(解体する前に他の個体が寄ってくるので回収不可)先に進みます。
「これは儲けがない!」
テリハさんが吠えますよ。ええ。まぁそうですね。
冒険者ギルドのステータスカードにじわじわと『グラニートード』の討伐数が刻まれていくだけですよ。
ふろすきーとーどはネアが討伐していないので記録に載ってないんですよね。
ニート君たちと比べるとふろすきーとーどは軽快な動きだったなぁと思います。むちゃくちゃサービス旺盛でしたしね。
そんななかでソールカーナンさんが地図にない小路を見つけたらしく移動停止です。下層にむかう階段です。しっかりとした壁の細い階段。
今いる階層のどこかでニート君たちが『げー』と鳴いています。
おりることになったんですが、テリハさんがちょっと吠えてらっしゃいます。
「段差ひっく! 膝にキそう! 幅も最悪!」
なんていうか、降りにくい階段でした。
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