第399話 姦しく地下水道Ⅳ

「いや、なにがあったのかわからないですね。ネアさん『清浄』ありがとうございます」

 ソールカーナンさんにお礼を言われました。ええ。驚きましたね水路にでんと居座った赤蛙ニートくんが爆散したんですから。

「え? あれ? 電撃は通らなかったでしょ? え? ヒルトさんの『火弾』で? 『火弾』って爆散引きおこすようなスキルだったっけ?」

 あわあわと混乱しながらもケイトさんにすがる眼差しをむけるテリハさんですよ。

 対するケイトさんは呼吸を整えてから、「ネアさんありがとうございます」とまず私、『清浄』で跳ね飛んだ赤蛙の体液等汚染処理を行ったネア・マーカス十歳警護対象に微笑んでくださいました。

「『電撃』でまずグラニートードの腹部に熱が発生してそこにソールカーナンさんが放たれた『火弾』の熱が足されたことで先程の爆散を引きおこしたようですね。内容物が金属多めだったことに起因するようです。みなさんお怪我は?」

 そう、爆散の影響で通路の壁にがっつりと折れた剣や手甲がぶっ刺さっているのです。水の中に落ちた分は流れていったりそこに沈んだりしていっているようですよ。ちなみに壊れてはいても錆ひとつなく綺麗ですね。これは私の『清浄』効果ではなくニートくんが体内で錆落とししていたと考えるのが正解でしょうか?

 赤黒い表皮は実は錆?

「私は大丈夫。ネアちゃんもヒルトさんも大丈夫そう? 飛んできた金属にぶち当たられてないよね?」

「ええ。大丈夫です。余計なことをしてしまったようで申し訳ないです」

 小柄なソールカーナンさんが居心地悪そうに身を竦めてらっしゃいます。

 私はもちろん大丈夫です。

「大丈夫そうですね。『火弾』は正直なところ助かりましたのでお気になさらないでください。電撃でこちらに攻撃を放つ気配がありましたし、距離を詰められる前に自爆してくれたわけですから」

 つまり、『電撃』と『火弾』は自爆を誘発するくらいで有効性はないわけですね。効果『加熱』って感じですか?

「凍らせて砕くか切り裂けるかを試してみましょうか」

 次の対処について語るケイトさんですが、ええ、赤蛙のニートくん(複数)がじわじわとこっちに寄って来ているんですよね。さっきの爆発で呼んじゃったんでしょうかね?

 個体同士がデカいので前後を挟まれる可能性はありますが、囲まれるには道が狭いので無さそうです。

「距離をとれるなら『加熱』からの『自爆』誘発は有効かもしれませんが、問題があります」

 問題?

 自爆連鎖に問題があるの?

「王城地下です。あまり建造物への被害はっ!」

 ソールカーナンさんが慌てた声をあげました。

「あ。迷宮じゃなかったわ。まだ」

 ぽんとテリハさんが手を打ち合わせますね。私もちょっと同じ心境ですよ。

 迷宮は自己修復しますが、そうではないこの地下水道は自己修復しませんね。修繕員を派遣することになるでしょう。

「そうです。最悪、城が崩落します!」

 ぇ。

 いや、地下で爆発連発したらあり得ちゃうことなのか。基礎って大事だから。

 城崩落なんてことになるとさすがに物理で首が飛ぶとソールカーナンさんが呟き、テリハさんがブルリと身を震わせました。ケイトさんはあんまり気にしてないっぽいですよ。落ち着いてらっしゃいます。

 結果としては『カマイタチ』が有効でした。

 ケイトさんによる『凍結』はニートくんがお湯吐いたことで対応できちゃったんですよね。

 青蛙くんより温度は低そうだなとぼんやり思いましたよ。

「いけ! ネアちゃん! ニート狩りだ!」

 というわけでネアの出番ですよ!

 テリハさんに煽られたわけじゃありませんから!

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