第393話 変態じじいとふろすきーとーど

 柚茶を吐く青蛙君が珈琲ミルクを吐く青蛙君より美味しいらしくダスティンおじいさんの標的にされています。

 どっちを応援すべきかとても悩ましいネア・マーカスです。

 美味しさを語られるとカエル肉も気になりますし、柚茶美味しいですし、とてつもなく困ります。

 つまり、変態じじいは意地悪です。

 変態じじいによると青蛙の名前は『ふろすきーとーど』熱魔法と水魔法のスキルを使う難敵だそうです。

 難敵?

 魔物としてはおっきい(十歳のネアが背中に乗れそうなくらい)ですし、青く煌めく皮膚はかなり硬く滑らかですね。つまり攻撃通り難いのでは?

 あ。

 確かに難敵かもしれません。通常水中にいてそこから熱湯攻撃できるのは強みでしょう。

 私、珈琲ミルク(加糖)の泉に服ごと突っ込んでいくのにはためらいを感じずにはいられません。

 いくら『清浄』で綺麗になるといっても抵抗感が強いですね。

『げー』

 温水にちゃぱちゃぱ沈んだ青蛙たちが変態じじいの周囲をぐるぐる回っています。私にじじいの露出気味の肉体が見えなくなるよう配慮してくれてるっぽいですよね。

 ……じじいの出汁入珈琲ミルク……。かなりイヤかもしれません。柚茶でもイヤなのは変わりませんが。

 そんなことを考えていると目の前を白い塊が落ちていきましたよ。ぼちゃんとお湯に王冠が弾けましたよ。

 ぽかりと浮かんだのは白い球体スライム?

 いえ、雪蜥蜴でした。軽く抱えることのできる大きさですね。無抵抗というか、意識がないようです。

 ぷにぷにでふにふにですがスライムがくず餅だとすれば雪蜥蜴は豆抜きの豆大福ですね。

 このふっくら感はお肉が多いということでしょうか? クサカリザードよりはお肉取れそうですよね。

「おお、雪蜥蜴か。美味いぞ」

 ダスティンおじいさんが嬉しげです。

「ボーマン、雪狼共に備えろ」

 じじい戦闘準備ですよ。

 ……とりあえず服着やがれじじい。

 蛙と蜥蜴に「おまえらのお家の入り口どこー?」と聞けば揃ってクノシー方面をむいていたのがわかりやすいですね。

「あー、多分。地下水道に入り口があるんだろうな」

 ダスティンおじいさんが純白狼の死骸を背負いながらそういう事を言います。あ。柚茶蛙も潰されてる。お飲み物から主食に変わる蛙ぅ!

「お? うまく調理するからな!」

 ニカっとじじいがいい笑顔ですよ。

 ぐいぐいボーマンくんの首につけてる荷物袋に突っ込んでいく姿はちょっとシュールです。

「地下水道?」

「王都の地下に上下水の管理場があってな。迷宮入り口の噂はずっとあるんだが一度も見つかったことはない」

 ずっと?

「そう。ずっとな。十年前にも噂はあれど発見されておらん。王家管理の範囲内であれば王家専用の迷宮とされていた可能性もあるがな」

 へぇ。そういうケースもあるんだ。

「王家の騎士団や力を誇示する必要がある人間はむやみに無様を他者に晒せないと専用迷宮を持つことはあるらしいからな。つまり、使用者限定の迷宮だな。王家に配慮された迷宮というのは時折り各国で聞く話でもある」

 魔物退治間に合うんですかね?

 迷宮の魔物間引き必須ですよね?


【王家の血をひく魔力高めの子を生け贄として供えているのでしょう。その為に各王家は強い花嫁を求め、強い男に姫を一夜差し出します】


 あー。そういうお話でしたね。


【強者の手足を折って迷宮に放置することもありますね。これは罪人に対する処罰でもありますが。もちろん所持品も奪ってです】


 実質処刑ですね。

「十年前と今の冬の在り方が変わりすぎとるから、迷宮は別じゃなぁ。見つけねばならんし、王家に報告するようにグレックに告げとくかね」

「グレックお父さんにですか?」

 グレックお父さん地方役人ですよね?

「マーカス家は近衛や侍従、乳母を務めることの多い子爵家だぞ」

 興味本位で聞いたところ、グレックお父さんの妹さんが家は継いでいるそうです。

 マコモお母さんと夫婦になるにあたって継承権を放棄したとか。獣人のマコモお母さんと添い遂げるのにいろいろ騒ぎがあったそうです。

 ケモノの国が迷宮を守りきれなかったので獣人の人たちの評判がひどく悪かったせいだそうです。

 えー。

 じゃあクノシーどまりじゃなく王都まで行くことになるんですかね?

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