第392話 普通っていろいろ
綺麗な赤いお茶はかなり酸っぱくて、青いお茶は苦いのが勝ちますね。なんていろんなお茶を飲んでおなかちゃぽちゃぽしそうなネア・マーカスです。
「お、蛙祭りか」
ダスティンおじいさんの声にあ、終わったんだ。と顔を上げた瞬間、私はボーマン君と蛙たちを煽動しましたね。後悔はありません。
「露出狂の変態は撲滅です」
ピューッと勢いよく水流が半裸の筋肉じじいに放たれます。信じられないです。腰にベルト布っぽいものは残っていますが太ももはむき身でしたよ。あのじじい。変態です。露出魔です。なんで二人で出かけて大丈夫と判断したですか。グレックお父さん。ネア、このじじいがこんな教育に悪い変態だなんてわからないんですからね。あ。『私』は今は意識をちゃんと封鎖しておくんですよ。こんな変態じじいは認識しちゃいけません。
「おー。難しい表現知っとるなあ。しかし! 格闘家にとって筋肉こそが最大防具! 服なぞ拘束具に過ぎん!」
「ボーマン君、やっちゃいなさい。露出魔は重々の拘束具に拘束されているべきだと思います。無垢なる少女の前に異性の肌を多く晒すことを躊躇うべきは大人のつとめではないのですか!」
「いや、ボーマンはわしの……ほぅ、くるか。こい! ボーマン、かまわんぞ!」
異性の見えちゃいけないものが見えてしまいそうでネア、困りますからね。
「グレックもおるからこのぐらい平気だろうに」
?
お湯を楽しむ筋肉じじいが不満そうに変なことを言いますね。
「グレックと風呂ぐらい一緒に入るだろ。まだちまいんだから」
?
「入りませんよ?」
グレックお父さんとお風呂に入ったことなんてありませんよ。
「うん? そうなのか?」
「そうですよ。お水はありましたけれど貴重品の部類でしたし、それならたまに誰かの清浄スキルを頼っていましたね」
具体的には尼僧様とかマコモお母さんとか。
あったかい濡れ布巾で体を拭くのはマコモお母さん担当でしたし、グレックお父さんはそういう時は追い払われてましたね。
それが普通では?
「ぅん。家事は分担するもんだからなぁ。グレックは料理できんだろ。ちまいのの世話をやっとると思うとったんだが」
そーなんですか?
「マコモお母さんが私のお世話も家事一般もしていましたよ。もちろん私もお手伝いしてましたが」
マコモお母さん的にグレックお父さんは『お家』と『食材』『お金』を確保してくれるだけで責任は果たしている認識だったと思うのです。そういうものだと私も思ってましたよ?
当時五歳であった『私』の両親は働いている姿を記憶しておらず、父親がなんらかの仕事はしており、『私』に向けて多くを語りかけていた事実は記憶していますがそこから親たちの仕事関係は判断できませんし。そしてそれは私もです。
「ふむ?」
変態じじい納得してませんね。
「異性もなにもちまいもんは世話するもんじゃってギルド登録前のわっぱが気にするものではない気がするぞ」
!!
「ネアは十歳! もうじき十一歳ですからね! ちゃんと冒険者ギルドのカードも商業ギルドのカードも持っているんですからね! それにちゃんと学都の受験だって受けてるんですよーだ」
んっもうっ、失礼な変態じじいめ。
ちまいとかギルド登録前にしか見えないとか言っていることが最悪ですよ。
そして、変態じじいにゲラゲラ笑われましたよ。「すまん。すまん」と絶対思っていない謝罪を受けながら。ええ。
「ほら、女どもは子を産む時、教会に籠るだろう?」
はい。この世界では病院に行くとかじゃなくて迷宮の加護の強い教会で子供は生まれるものだそうです。(尼僧様の授業)
「すると残った男どもが前年に生まれたわっぱどもの世話をするわけだ。できることはするもんだからな」
ふぅん。
「むろん、ご近所さんとこのわっぱどももみるわけだ」
あー。大人たちによる見守りの延長かな?
私も弟君も警備隊独身寮の人達やご近所奥さん達からよく視線は感じるんだよね。氷とか技術とかが喜ばれているのもあるけど、小さな存在を見守るって感じの視線のことだよね。井戸で水を汲んでいると自然と誰かが手助けしてくれる感じ。
「でも、いい歳したおじいさんが半裸を越えて際どすぎるのは良くないと思うのですよ」
「そこまできわどかったか? 武術によってはほぼ全裸でやり合うこともあるぞ?」
「その競技見たくないのでお名前だけ教えてください」
「出会えばわかるだろ」
このじじい、教える気がありませんよ!? めちゃくちゃニヤニヤしてやがります。
「まぁ、なんだ。国によっては迷宮の趣味で全裸で短距離走や高跳びとかの競技をさせる国もあるから国から気をつけることだ」
迷宮の、趣味……。
あ、『石膏瓦解』の筋肉祭りみたいなものかな?
「もうちょいすれば性的な男女わけの対応も考えるんだが……」
上から下まで流し見やがりましたよ。変態じじいめ。
「ネア、もうじき十一歳ですから」
赤ちゃんや幼児じゃないんですから。
「そういえば、そういう年齢の相手によくじょーする変態もいるから気をつけなさいってマコモお母さんが以前言ってたんですよね」
「ああ、腐れ貴族や腐れ獣人にたまにおるな。目の前で手ェ出そうもんならぶっ殺せるんだがなかなか現場には行き当たらんわ」
ガンッと殺気が周囲に満ちましたよ。
あ。
グレックお父さんが任せたのはダスティンおじいさんがこういう性質だからですね。変態じじいだとは思いますが。
「変態じじいなりに正義があるんですね」
グレックお父さん見る目はあるようです。アブナイ女(マコモお母さん)に自覚有りでぶち溺れる人ですがそこ以外は信用のできる男なんでしょう。ええ。たぶん。
青蛙がピュッとじじいにも飲み物提供していましたよ。
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