第389話 雪蜥蜴狩りへ

 調理法ひとつで美味しいの質が変わるのってすごいとグレックお父さんに告げると、「お父さんもハーヴェストの調理法を見た時、本当にそう思ったよ」と言われてそういえば弟君は未知の調理法で美味しいをたくさん増やしてくれましたね。でもでも、アレは私ではとうてい届かない高みの技術だと思うんですよね。薬草つっこんでお湯に沈めるとか挽き肉にして焼くなら私にも出来るんじゃないかと思うネア・マーカス、少々不器用ですよ。

 弟君に対しては何処かこう素直に受け止められないというか、それ自体ちょっと不本意ではあるんですが難しいんですよ。お姉さんですからね。


【理不尽では?】


 そうですね。世の中にはたくさん理不尽がありますから。

 グレックお父さんは朝ごはんを食べながら騎獣が寒さで機嫌が悪いので今日の出発は無理と言い、ダスティンおじいさんが「寒さに慣れた騎獣は少数だからな」と納得顔でした。

 グレックお父さんが里長邸で書類整理を手伝い、騎獣の機嫌をとる時間をつくるので、その間くらいならとダスティンおじいさんが私を雪蜥蜴狩りと近辺調査に連れ出してくれましたよ。ダスティンおじいさんも冬になって里長としての事務作業に追われて外回りが減っていたらしいです。本当かどうかはわかりません。

 で、ダスティンおじいさんの連れている獣、青い狼さんですね。おっきいです。

「ヨソの迷宮で手に入れた従魔でな。青の炎狼でボーマンだ。こわがらなきゃお嬢ちゃんぐらいは乗せて走るぞ」

 ぉおお。

 炎の狼さんですか。

「か……」

 かわいい?

 かっこいい?

 どっちがいいんでしょう?

 かわいいし、かっこいいですよ。

「撫でさせてくれますか? ダスティンおじいさん」

 撫でたいハグしたい。

 落ち着けネア・マーカス。

 まずは飼い主の許可が先ぃ!

「ん? かまわんぞ」

 一瞬ボーマン君のお耳がピクッとしましたね。かわいい。んー。ボーマン君の警戒モードは魔物としての警戒でしょうか?

 それとも迷宮産の魔物ですから私の天職に反応している?

 よし!

 撫でよう。

「ボーマン君撫でますねー」

 手のひらを差し出して匂いを確認してもらってから、ゆっくりと毛皮に指を差し込みましょう。

「うわぁ。おとなしいいい子ですね。ボーマン君。撫でますよー」

 ひとしきり撫で倒しました。

「疲れてなきゃ出るぞ」

 ダスティンおじいさんがちょっと呆れた声で急かしますよ。

 はい。遊びすぎました。

「ボーマン君。乗せてくださいね」

 集落から野営地へ。通り道に霜柱が出かけていればダスティンおじいさんの拳かボーマン君の炎が潰していきます。

 野営地を出れば伸びる街道に沿ってボーマン君が炎のブレス吐いてます。頭上から小さな氷のカケラがちらちら降ってきてなかなかに綺麗な風景ですね。

 森の木々の枝葉にそって段差のある(ほぼ垂直)の氷壁をダスティンおじいさんとボーマン君は駆け上がっていくようです。私はしっかりボーマン君に掴まってますよ。とりあえず、ダスティンおじいさんは人間辞めてますね。チラッと見れば、階段登る気楽さで氷壁駆け上がってますよ!

 ボーマン君にぎゅうです。ぎゅう。あ。ふかふか。

「ボーマン、水流の層への入り口を作れ!」

 ダスティンおじいさんの指示が響きます。が、雪蜥蜴狩りじゃないんですかぁああああ!?

 氷壁を蹴り、向かいの氷壁に着地したボーマン君が大きく息を吸い(振動が、振動と魔力の高まりがっ)、上から下に向けてでしょうか、大きな吠え声と共に炎弾がぶち込まれますよ。溢れでかけた水が変な形状で凍っているようです。そこにダスティンおじいさんが立って早く来いとボーマン君を呼んでますよ。

 私はそっとボーマン君を撫でながら「お疲れ様」と伝えておくぐらいですね。

 この水流の層に雪蜥蜴さんはいるんでしょうか?

 出てくるの蜥蜴は蜥蜴でも雪じゃなくて氷だったりしませんか?

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