第388話 朝食前の雑談
「このアドレンスには広大な地下水脈を構築している迷宮が遥か昔から存在していてね。この国をこの国としてとどめてくれていると云われているんだよ」
朝食の席でダスティンおじいさんが教えてくれました。
起きて寝室から夕飯を食べた食堂に下りれば(ちゃんと着替えてます)革ズボンをはいただけの筋肉じじいが片手でテーブル(デカい)を持ち上げて床を布巾で掃除してましたよ。暑苦しく。暑苦しかったので食堂に『清浄』をかけときました。筋肉じじいにももちろんです。にっかりと「ありがとよ」とお礼を言われたネア・マーカスまだ十歳ですよ。
囲炉裏に吊るされた鍋には今日もお湯が満たされているようです。
氷を削っているのではなく、地下水流から汲み上げているんだそうです。教えてもらっているうちに地下の水脈を管理していたであろう迷宮の話になったんですよね。えーっと『水源』でしたっけ?
【そうです。迷宮から『迷宮核』が失われ迷宮として機能不全を起こし崩壊へと動いていた迷宮ですね】
天職の声さん、なんか棘がありませんか?
あと、天職の声さんは私のそばにいて大丈夫なんですかね?
【気にかけるだけ無駄な事柄というものも世の中には存在しますよ】
あー。そうですか。いいんですけどぉ。
「水脈を支配している迷宮は確かにあるんだろうが、しかしな、明らかに十年前存在した迷宮とは別迷宮のようでなぁ。前迷宮は比較的にどれも王家に友好的だったんだがなぁ。まぁ、愉快な迷宮だと思うから是非一度は潜りたいねぇ」
「どうして愉快な迷宮だと思うんですか?」
ダスティンおじいさんの意見には賛成ですが、なにがベテランにそう思わせるんでしょうか?
「霜柱からの氷壁もそうだし、それでいて街道沿いに凍っていない流れは維持されとる」
ふんふん。
「雪蜥蜴はころころしとるし、基本ポカミスの多い魔物として生きていけるのか心配になる感じが慣れてない者の攻撃の手を躊躇わせるだろうし、面倒見のいい雪狼も攻撃に転じれば、森の猪どもより厄介だ。雪蜥蜴とニコイチで出没しとるが狼系の魔物は最終群れるものでな」
氷蜥蜴とは接敵してない感じですかね?
「流水の層があってな」
あ、はい。知ってます。
「ふろすきーとーど。というカエルの魔物が出没する」
ふろすきーとーど。
聞いてませんね。
「熱湯を投げつけてくる光輝くカエルなんだが、どうも個体数は少ないらしくてなぁ。あの肉はうまいんだがまぁ難しい。おそらく迷宮内にはふろすきーとーどもよくポップしていると思うんだよなぁ」
あー。
カエル肉が美味しかったんですね。
「あ、ダンじい。水の迷宮なんてホラ話してんの? あと輝くカエルなんて見たことないけどなぁ」
「おかえりなさい」
外から入ってきた巡回部隊のお兄さんが木のカップにお湯を汲んでゆっくりと飲んでらっしゃいます。
「ふぁー。ぬっくもるー! ただいま! ネアちゃん。ダンじい、軽食ある?」
夜間警戒にあたっていたというお兄さんたちがちらほらと入ってきます。冷気と泥で床が汚れていきますね。
彼らは軽食を食べて寝るそうです。
食事と睡眠は大事ですよね。
私も朝食を出してもらいましたよ。
雪蜥蜴のお肉を香草と防水布で包んでお湯に突っ込んで加熱した蒸し肉だったんですが、ほろほろと口の中でほどける食感とうっすらと塩味、ぱっさついたパンにも急速に染み込むスープがとても美味しいですね。
「今日も泊まるだろうからじいちゃんと雪蜥蜴狩りに行くか?」
ダスティンさんが提案されたので即座に「ぜひ!」と答えたら笑われましたよ。
美味しいお肉はほしいものですよね。
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