第386話 野営地到着です。
ティクサーからクノシーは街道を歩いて七日かかります。騎獣や特殊走行車(錬金術で作成した物)を使用したり、本人が修得したギフトスキルを活用して短縮することは可能です。その土地を支配する迷宮によっては無効化されることもあるそうです。そんな迷宮講座をグレックお父さんにしてもらっているネア・マーカスです。親子旅行って何気にはじめてでちょっとウキウキしますね。
氷原に穴を見つけて飛び込んだ先は見覚えのある野営地でしたよ。
今は天幕も馬車もなく、がらんとした広場でただ魔除け兼かまどの塚が実にあったかそうに焔をとどめています。熱に転化させた魔力のようです。
「マーカスさん、こっちですよ!」
もこもこした毛皮装備のお兄さんが大きく手を振って呼びかけてきました。
「ああ。うまくまわっているか?」
「はい。騎獣達が道の維持はしてくれていますし、氷壁に熱を入れてもらった分、破壊が楽でしたよ」
野営地分はぽっかり空が見えます。魔除けの効果のようですね。
聞いていると気をつけておかなければ氷で屋根ができてしまうそうです。だから魔除けの塚に火を入れて上に氷が張らないようにしているんだそうです。
反対に集落は氷を内側だけ削りあげて居住区を維持しているそうです。天井のある居住区ですね。森は切り拓いてあるので緑みどりはしてませんね。
この氷、春にはとけるんでしょうけど、もしかして一気にとけると水害になりませんかね?
攻撃等でとかすとけっこう水残りますよね。ちょっと心配。天水ちゃんはそのへん抜かりなさそうな気もしますけど。
「おう! グレック、久しいな!」
大きな声の格闘バカっぽそうなおっさんが出没しましたよ。この寒い中毛皮のベストに革ズボンのおっさんです。
格好もですが、グレックお父さんさんよりでかいですね。グレックお父さんも小柄な方というよりすらりと高身長そこそこ筋肉のお父さん年齢層男性なんですけどね。縦も横もおっきいです。たぶん奥行きも。
「ああ。ダスティン村長も元気そうだ。こっちは長女のネアだ」
「まぁ今の規模なら里長というところだな。噂は聞いとるよ。よければこの里の魔除けに魔力を注いどいてくれるとありがたい。ワシのことはダンじいとでも呼んどくれ」
「ダスティン村長はドンニアックの祖父にあたる人でな。昔は迷宮警備主任まで勤め、引退後は負傷者を集めた療養地として村をつくった功労者なんだよ」
ぉお。
すごいおじいさんだ。
ところでドンニアックって誰?
「よせよせ。九年と二期前に村を棄てて他国に渡っていたような薄情モンに過ぎんさ」
けっこうしっかりした家屋に案内されながらそんな大人二人の会話を聞きますよ。
里を守護する魔除けは教会と里の中央の広場とあと適当(術的に計算されてるらしいです)に配置されていてどれかひとつに魔力を通せば全部を魔力が循環するそうです。
それで空気の温度を一定に保ち霜柱が生えてこないよう細工してるんだとか。上の氷の層はあれば氷混じりの強風(あと落ちてくる雪蜥蜴)に怯えずに済むので維持しているそうです。
里長宅は冒険者ギルドと役所と宿屋を兼ねているそうで、入れば警備隊の巡回隊員さんが数人鍋のスープの取り分で揉めてました。
「お。クズ焼き幼女」
「あ。焼却幼女」
「お。ぼったくりネアちゃんではないか。ゲロまず薬草炒めの在庫はないのかな?」
「えー。今日は弁当売りのかわいこちゃんと一緒じゃないのかぁ」
ダスティンおじいさんの聞いている噂がロクでもなさそうと判明した瞬間ですよ。
「ネアはもうじき十一歳なんですから、もう幼女ではないと思います」
ええ。ええ!
主張しますとも!
「ね! グレックお父さん!」
くりっとグレックお父さんを見上げるとなんだか困った表情でダスティンおじいさんと視線を交わしてましたよ。
んー?
どういう意味を含ませた行動ですかね?
「……グレック、お父さん?」
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