第383話 確認作業は大切ですね

「一階層って氷結エリアなんですか?」

 とりあえずは天水ちゃんに確認している迷宮管理者ネアです。

『是』

 そうらしいです。

 お返事はどこか得意げでしたよ。

 ちなみに会話は続きません。きらきらと次の問いかけを待たれている感じはものすごくありますが。

 ポンっと目の前に映像ポップが数枚提示されます。

 いつもの『はい』『YES』ポップです。

 真っ白な氷原広がっていますね。奥に赤いマーカー?

 拡大されるマーカー。いや、ものすごく広い?

「広い?」

『是。『蒼鱗樹海』同等』

 あ。はい。『蒼鱗樹海』と同じ広さのなにもない氷原なんですね。

 赤いマーカーは次の階層への入り口だそうです。

「特に罠もなく距離だけ?」

『! 否!』

 嬉しそうな反応が返ってきましたよ。

 天水ちゃんがなにか合図を送ったら、氷原の一部が割れて真っ白い蜥蜴アイスリザードが凍りゆく水を跳ね散らかしながら出てきましたよ。砕けた氷の厚さが意外にばらばらなんですが踏み間違えると割れて氷水にぼっとんですか? あ。ぼっとんなんですね。

 あと、アイスリザード、熊より大きくありませんか?

『地表、スノーリザード』

 実は氷原の上にスノーリザードが徘徊しているとのことです。同化していて判別つかないんですね。はい。あと、凍てついた森エリアがあるとのことでどこにあるのかと思えば、氷原の下にあるそうです。

 あ。

 だから氷壁が凄いことになるんですね!

 つまり、『蒼鱗樹海』と同じように再現しているとしても町や道はすべて氷中と。

 理解しましたよ。

 あれ?

「クノシーそばの潜り川を入り口にしているのここに出るの?」

『否。裏口』

 あれは裏口なんですか。

 そうですか。流されるのは流石に致死率高過ぎそうですもんね。

 氷原も大概ですが。

 氷原の下は冷水の層が有り、その下に湖底ならぬ地上の森が広がっています。

 んー。

「つまり氷の上からスノーリザードが町に滑り落ちてくることもありですか?」

『否。園長領域』

 ん?

 バティ園長が主してる『ティクサー薬草園』の領域だから影響外ってことですね。あと、魔物が降ってきたらいくらなんでも私だって怒りますからね。

「それって、クノシーや王都では滑り落ちてくるのでは?」

『是!』

 この亀、可愛らしくも得意げですよ。

 えー。冬の間にクノシーの様子見に行った方がいいんですかー?

「人口減は推奨されませんよ」

『是』

「でも、氷壁の上からスノーリザード降ってくるんですよね?」

『是。雪狼雪蜥蜴回収』

 えーっと、降ったスノーリザードはスノーウルフが回収している?

「それ、人里に狼が襲いにきてる判定されると思うんですが?」

『否。回収!』

 えー。

 迷宮入り口が解放されていない以上、人が『天水峡連』に交渉できませんしね。どうしましょうか?

「迷宮の正規入り口はどこにしているんですか?」

 迷宮影響範囲支配済ませている時点で入り口解放しているんですよね?

『是。王城地下水源管理区画二層侵入口有』

 は?

 うわぁ。天水ちゃんの甲羅で綺麗に白い花が開いてますね。

「ねぇ、天水ちゃん」

 白い亀がこきょっと首を傾けますよ。『なぁに?』って感じがかわいいですね。

「誰か調査に来てる?」

『否。水源管理機構忘却?』

「ほーち十年?」

『否。放置五十年』

 ペッとポップをひとつタップした天水ちゃんの意思にそって王城地下と思われる水路が映ります。

 管理用と思われる魔核が輝いてますね。

『年一王族魔力投入。了』

 あー、スライムがお掃除してるので埃も少ないんですね。

『スライム、鼠。水棲ワーム、魚類出現。全雑魚』

 でも迷宮ではないから、特に討伐していないってことかな?

『非迷宮。非ドロップ』

 けっこう水路内は迷いそうな構造になっていますよ。しかもところどころに魔力錠が落ちているようです。迷宮入り口に辿り着く難易度高過ぎでは?

『管理不足』

 あ。はい。

『天水、是交渉』

 あー。調査に来ないのが悪いんですね。理解しました。

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