第377話 冬のイベント

 寒い冬の期はあまり外出をせず、家庭内で過ごすことが一般的です。ただ、女性たちはそわそわと教会に訪れます。

 冬の期の半ばまでに腹に子がいるかを教会で確認するためです。

 冬の期を母子で越え春の期まで生活できないと判断した場合、『迷宮』に魔核を捧げて産み年を次の年に伸ばすことができるとのことである。あたり前に語られるのだが、出産時期を伸ばすと産むの大変じゃないのかなという私の感想は不思議そうなマコモお母さんに「産まれた子と生活できない環境で生活するのは大変でしょう?」だから一年かけて生活基盤をつくるのよ。と教えてもらったネア・マーカス十歳女児です。ちなみに三年くらいなら出産は遅らせることができるそうです。

 移動してきて生活基盤の弱い家族や単身女性は今年見送る人が多いそうです。

 納得できるような、どことなく座りのわるい感じがモゾつくような気がするんですが、「産まれた子を見捨てないで育てられるようにお願いできる迷宮があって良かったわ」とマコモお母さんが言うので、そういえば、春の期に迷宮ができるまでティクサーの幼児の数はごく少なく、教会の支援があってもマオちゃん以外は虚弱だったように思います。ティクサーでこの十年で生まれて育ったのはマオちゃんだけであとの子達は家族で他の地域に移民してたり、行き場がなくて落ち延びてきた家族の子供だったりだそうです。

 うん、興味なかったから知らなかったや。

 マオちゃんが元気ならいいし。


【嫌なら管理迷宮では『送り』を行わないことも可能です】


 弊害はないんですか?


【母体から体を構築する栄養と魔力を十分に引き継いでいれば特には】


 ちょっと無茶な旅の果ての新生活、子供が産まれれば生活苦になりがちなら『送り』は必要なんでしょうね。


【迷宮によっては『送り』の許容期間が違います】


 一年か二年じゃないんですか?


【母体から栄養や魔力を受け取るので、この期間に迷宮に入り浸る母体も多いですよ。一期多産になれば力も分散されてしまいますが】


 産むとなると送っていた子が産まれるので本来なら一年違いの兄弟が一度に産まれてくることもよくある事例だそうです。

 一番強い子以外は育たないこともよくあることと説明されてどう言っていいか感想にめちゃくちゃ困りました。

 だから送りは三年までが基本だそうですが、なぜか迷宮を騙してくる方もおられるそうです。なんでですかと思いました。わかりません。

 それは横に置いていいと思うんですよ。今のところ関係ありませんし、それよりも楽しみ案件が存在するのです!

 教会の宣教場を使って行われる結婚式ですよ!

 別に式をあげる必要はないんですが、それぞれ少し小綺麗な格好をして司祭様や尼僧様の祝福のもと新たな家族になる儀式です。

 成人(十五歳)すれば親の戸籍から完全に分離され孤独になりますが、相手と機会があれば新しい家族を家庭を築くことができるのです。

 本音はお嫁さんキレイね。です。

 髪を彩るように飾られた季節感の薄い花やキレイな小枝は『ティクサー薬草園』での採取物でしょう。

 よく見かけるシンプルデザインのワンピースはふんだんに刺繍を刺し込まれていてひと財産な感じに見えます。デザインは同じようなのに細やかな一手間が見ていてすごくわくわくするんですよね。

 私は素敵なものを見れてとても嬉しいので『清浄』と『ヒート』をかけて寒さを吹き飛ばしておきますよ。

 あったかいの狙いで次の式予定が入っている日を尼僧様や助祭様が教えてくるのはまぁ許容範囲ですよ。

 孤児院区画にもかけときますとも。

 内職中だったらしく、「ネアはあんまり得意じゃないからこれには触っちゃイヤ。キレイにできたらお嫁さんの頭巾になるんだから」と追い払われました。

「見てるだけならよくない?」と聞けば「お式の貸衣装だから、そこで見てよ」と言われちゃったらしかたないかなと思うんですよ。

 私が見れるお式の時ならいいなぁ。

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