第376話 イゾルデさんとの語らい
壁にはしばらくは干渉しないということで話が進むそうです。むしろ壁を維持してもらうために魔核を捧げる置き場がつくられました。ちゃんと魔核、なくなるそうです。
冒険者ギルドと教会を通じてケモノの国に隣接する国々に伝達がまわり同様の時間稼ぎの奉納所がつくられたとか食堂やギルドで話題になっているようです。
壁のおかげで今までずっとじわじわ魔力を『月砂翠宮』に侵食されていた国々の土地に環境改善がみられるようになったそうで迷宮が自領の魔力循環に魔力を向けられるようになったとか。
それにより魔力の高い王族やそれに次ぐ者が生け贄となるより壁をつくる『偽造迷宮』に魔核を奉じる方がよいとなっているそうです。
壁を壊すなら、他国側の壁ですよね。できるだけ自国から遠い。わかりますよ。自国には被害出したくないですよね。侵食力を思えばあっという間に蹂躙されそうですからねと思っているネア・マーカス十歳女児です。
「いつぶち壊す?」なんて聞いてくるのはイゾルデさんぐらいでしょうか?
聞いた瞬間の感想は「なに言っているのか自覚している大人ですよね?」でした。
「生け贄は要らないのではなく、今はおまえの弟の魔力を喰らっているだけだ。あのヒョロ王子の小細工で通常よりは長くもつだろうが、早い方がいい」
ヒョロ王子……。
「アクサド王子さまも魔力高めの方ですよね?」
「ああ。だが、あのヒョロ王子にどこまでの胆力と根性があると思う? 期待できるか?」
思い返すとあの兄王子、ひたすらに影が薄くおどおどとした不審者風の人物でしたね。一応弟王子に効果はなくとも諌めもして……、もしかして効果があってあれだったんでしょうか? 弟王子。
【継承とは無縁な位置の王子でしたらひたすら甘やかされていたのでは?】
書類整理はお役所の人も教会の人も助かっていたようですし、口入屋業務も弟君を必要なだけ補佐していたようですしね。弟君が口入屋業務を嬉々としてやってたのがどこかおかしいんじゃないかと思いますよ。
なんていうか、印象より要領はいいんじゃないでしょうか?
もう一度確認してみることが可能かどうかも試さねばならないでしょうかね。
いえ、弟君はあれ大丈夫そうでしたよね?
兄王子ピンピンしてそうな気配でしたよね?
弟君のことは信用しとくとして、行動は沈黙を守る。もしくは時間を稼ぐ。ですよね。
今のところ、リスクは確かにありますが、が、十年に渡って続けられていた『月砂翠宮』からの搾取が途切れたわけですよね。少し距離のある国や安全を他の国を使って確保し続けた帝国とかくらいじゃないですか。衰退していない国。よく知りませんが隣国(参考は岩山の国と草原の国です。草原の国は迷宮近辺は栄えていましたがはなれるとけっこう閑散としていました)くらいだと余波がっつり受けている印象ですし。
つまり、現状維持推奨。せめて二年単位で。
【推奨は十年でしょう。失われた時間と同じ】
理想はそれですが、やはり弟君がそこに拘束されていると思えばその半分以下が理想ですね。
「イゾルデさんは砦のむこうにある……っと、『飢餓』を霧散させられるんですか?」
壁を壊せばその『飢餓』がその穴から溢れ出してくるので救い出したはずの弟君がまず生け贄いきですね。
その次は『蒼鱗樹海』とティクサーです。
アドレンス王国が蹂躙されて終わるものではなく、次は岩山の国と草原の国でしょう。
「満たされることのない『飢餓』への対策が提案されるまで、うちのハーブ君はあの場にいると思うんです」
眠そうだったし。
「そうか」
「はい。でも、ハーヴェストを、弟を助けようとしてくれてありがとうございます。私、学都で『飢餓』のことを知れるか調べてみようと思います」
帝国の迷宮って基本長く存在しているっぽいから聞ける可能性があるじゃない。あえて言うなら私が聞くべきことを忘れることだけが要注意だよね。うん。忘れそう!
「なんともできないような気がしてたんですけど、イゾルデさんのおかげで調べようって気がつけました。ありがとうございます」
「ん。そうか」
「はい!」
突拍子もない暴力発言(行動してはいけない系の)だったけど、おかげで方向性を求められた。
「だから、イゾルデさんは『偽造迷宮』を破壊しようとする存在を排除してくださいね! アドレンス国外で破壊されたらどうしようもありませんしもしかしたら被害最小限に抑え込めるかもだし、でも、国内から溢れたら少なくともティクサーは絶望です。壊すなら他国って考える人もいるかもだし」
「……ん。そうかもしれないな。ふむ……悪く、ないか?」
ん?
なにがですか? イゾルデさん。
「強者としあえるかもしれんな。よし。鍛えるか」
ひとりごちて去っていったんですがなんなんですか?
取り残されましたよ?
私、ちょっと井戸端の霜柱を溶かしに出てきただけなんですけど!?
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