第374話 偽造迷宮とは

『偽造迷宮』

 本物ではない人がつくり出す迷宮っぽい空間制御魔法的な何かだそうです。それ凄くないですか? と思うネアですよ。

 迷宮管理者もそうだろう?

 迷宮管理者はやれることに最初のステップがあるのですよね。迷宮主っていうガイドもつきますし。

 迷宮に干渉しまくってますが、自主性に任せればなにもしなくてもかまわないっぽいのが実際のところ迷宮管理者だと思うんですよね。


【『偽造迷宮』には魔物が存在しないと聞きます。元々、『偽造迷宮』に入れるイキモノは『偽造迷宮』を作成したヒトの許可がなければ出入りもできない場所のはずですから】


 つまり、迷宮はつくれても魔物を制御管理できないってことかな?


【ヒトが他生物を支配するには隷属化が必要になり、隷属化にはそれなりの手順とそれなりの魔力が必要となります】


 契約とは、別?


【私どもとの契約は、主従に近しいものはありますが、隷属化契約ではなく雇用契約に近いものとなっておりますね。監獄に対してはいささか誓約強めに契約なされたようですが、受け入れられているのなら問題はないかと】


 あちら側との契約も基本対等(たぶん)が多いし、そんなものかな?

 魔力が尽きれば自然消滅?


【迷宮には少なからず魔力循環が存在します。偽造迷宮にもあるのならば魔核を数個持ち込み、循環機構を組み上げれば存在するだけなら存在し続けられますね。『月砂翠宮』の機能が何処まで巻き込まれたのかも不明ですし】


 不安要素多めかぁ。

 やっぱり意思確認は必須だね。

 ということで、バティ園長に注意事項を聞こうと思います。だって、バティ園長なら知ってそうじゃないですか?

 まぁ『信頼が重いですね』と微笑まれましたが。

『魔核をいくつか持ち込んでいるとしてですが、『偽造迷宮』を維持するだけならいくらでも可能でしょう』

 おお。

 いくらでも可能なんだ。

『入り口を閉ざしてしまえば効率的に外敵も排除され、準備さえできていれば食料が尽きるまでそれこそ好きなだけ』

 それは。

「さすが尼僧長様の孫」

『入り口を閉ざし存在を隠せば可能というだけです。人の通れない迷宮の力も防ぐというならば、よくもまぁ冬の期になっても維持されているものだと思いますよ』

 呆れたように尼僧長様……園長が砦のむこうにじんわり感知できる結界を眺めてらっしゃいます。

『迷宮核のなり損ないを使用し、外部から結界を維持する目的で流れてくる魔力を活用しているのなら、……対話は可能かもしれません。ただ侵食を食い止めたいのか、他に目的があるのかによりますでしょうけど』

 たぶんバティ園長が声をかけて存在を感知されることは希望していないのでしょう。お孫さん心配ですよね?

 尼僧長様のありし日々を思うとイマイチ似てらっしゃいませんが。

 それにしても。

「目的?」

 おどおどしていてなにか考えているより怯えていそうでしたけど?

 弟王子に振り回されていましたし。

「命を注ぎ込んでも何かを成し遂げたいという感じには見えませんでしたよ?」

 まぁ、ちょっとなぜ弟君を巻き込んだという思いと弟君に巻き込まれたんだとしても有り得るかなという思いで面倒くさいです。

『私の血統には迷宮に関わる天職が出易くなっております。私の『迷宮守護者』もそうですが、娘もまた迷宮と親さを持ち得る天職だったようです。おそらく、アクサドも『偽造迷宮』に関わる、扱い得る天職なのでしょう』

 ふるりと揺れる指先に僅かばかり感情が滲んでいます。

 あー。

 そうですよね。

 園長、迷宮大好きですものね。

「羨ましいんですね。偽造迷宮」

『ええ。まぁ、お恥ずかしいことですが』

 知識は誰でも増やしていけますが、特殊スキルはそうもいかないものですよね。

「園長の天職が迷宮守護者であったから今こうした会話ができていると思うので、ネアは園長の天職がそれで良かったと思ってますよ。あと、弟君を確保されている状況なので、私がおはなしに行きますよ。結界に魔力ぶち込んでお願いすれば、おはなしくらいしてくれますよね」

 私、私の拠点であるティクサーを守っていたいんですよね。

 これでも。

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