第372話 変わらない日常
迷宮が生じて初の冬のティクサーはもの凄く冷えこんでおり、正直なところ家にこもっていたいネア・マーカス十歳女児です。
町中であっても朝外を覗けば、それはもう真っ白です。
初日は「なにこれ?」と踏みに行ったらもの凄くそれはもうもの凄くジャクンジャクンと鳴り崩れました。マコモお母さんによると「あら、すごい霜柱ねぇ。ネア、靴底を抜いてくるのもあるから気をつけてね」などとこわいことを言われましたよ。
凍った水が地面から膝くらいの高さとかまでにょきにょき生えた光景が広がっているのです。あと、屋根にも生えてますね。煙突とかの周囲は溶け落ちては凍ったのか変な形状になってますね。
つまり足元等が濡れて冷えた私はさくっと屋内に逃げ戻ったのです。
朝ごはんを食べていると外からジャクジャクと霜柱を踏み抜く音が響きます。
「屋根の霜柱をなんとかしておかないとな」
グレックお父さんがそう言いながら天井を仰ぎみます。
ふむ。
「ヒート」
夏場に氷を作ったように熱源をつくって屋内全体を暖めます。すると、マオちゃんが「ちょっとあちゅい」と言いはじめた頃にばしゃんと水が地面を打つ音が響きます。屋根の霜柱溶けましたね。よし!
地面の霜柱は踏み壊せますが、屋根に生えた霜柱は除去が大変そうですからね。ちょっと家まわりの地面が滑りやすくなったかもしれませんが誤差だと思います。
屋内ぬくぬくだともの凄く外に出るのが億劫になるのが問題ですね。弟君がいたらきっと文句を言ってきたことでしょう。呆れた感じで。
警備隊と冒険者の中でも実力者を集めて安全確認調査が行われ、『ケモノの国』と繋がっていた旧『大森林』からの影響ではないかと結論が出ているそうです。
迷宮核にもなり得ない魔核を使った迷宮移動手法だそうです。
ルチルさんが教えてくれたのはそれが迷宮の出す『許可証』だと言われて『天上回廊』で貰った『許可証』を思い出します。あんな感じかと考えていれば、天職の声さんも肯定をくれましたしね。
あの兄王子、『蒼鱗樹海』で使ったわけのわからない技もありましたね。あの時点でもっと警戒すべきだったのかも知れません。
じゃくじゃくと霜柱を砕く音が外から聞こえてきます。警備隊の朝の巡回ですね。ついでにバリッと踏み抜く音も聞こえます。屋根の上からとけ流れた元霜柱は地面でなだらかに凍り直してよく滑るので乱雑に踏み砕かれる処理を受けるのです。グレックお父さんが転んでもアレですからね。あれ。私は二回くらいしか滑って転んでませんよ? 滑るの楽しかったですし。
町中は歩く人がめっきり減りましたが、冒険者ギルド周辺は変わらず往来がにぎやかです。金属鎧着用の人が少し減って革鎧の人が増えたように思えます。
町中は人が歩いたり、生活していると昼頃には足元や屋根の霜柱も消えていきます。町の外周、野宿生活者の中からは時折り凍死者や転倒し、打ちどころの悪かったらしい人とかが出て身ぐるみ剥がれているそうです。
それは外出時間が短くなる出来事と言えるそうです。「辻強盗かも知れないんだから危ないでしょ」とはティカちゃん談です。
冬の期は旅には不適とのことで、寒さが厳しくなる前に今いる住居のない人が住めるだけの施設を。というのが領主様の決定だそうです。
町中に資材が採れる『ティクサー薬草園』があるので訓練だとか資材だとかは集めやすいそうです。
『蒼鱗樹海』への送迎馬車も変わらず動いてますしね。道の整備のために本数は減りましたけど。
クノシーからティクサーに移動してくる人はあたたかい迷宮を使って凍死を避けるらしいですよ。魔物対策したらなんとかなったりしますしね。
ルチルさんのところに化粧品買いに来ててびっくりしましたとも。
私は、二日に一回くらいギルドに通ってお仕事を確認しています。学都で学んでいくための予習時間も必要ですからね。
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