第367話 『蒼鱗樹海』二階層でおやつタイム
十歳女児の腕力、攻撃力と十二歳男児の腕力、攻撃力を比べるのは間違っていると思うんですよね。しかも王子様って金の人材にものを言わせて自己鍛錬武装を整えているんですよ。対する十歳女児は転々と難民生活をしてようやく親が定住地を定めた(迷宮が国内に発生したらしいと聞いて即断した冒険親)比較的貧困層な訳ですよね。
親御さん、食堂経営成功してらっしゃいますけど。
国が迷宮を守ってくれていれば。という愚痴はたぶん、よく聞いていた層なんですよね。
帰還した元難民生活者はあまり王家に好意的とは言えないんですよ。他国に支援、難民受け入れのお願いは多くしていたり、迷宮学都で帝国に王族の武力協力をしていたりして『アドレンス国民』の受験料滞在費は格安になっていたりはするそうですが、庶民には生活苦しいとしかわかりませんからね。その上で弟王子の対応は印象マイナスです。兄王子(王家とは関係ない部分で評価高い)との対比があるが故により印象がよろしくありません。幼い?
王族が一番偉いと思っているんでしょうね。
まぁ、表だって一回ぶち切れ言い合いでもしちゃうと物凄い断絶になるのでしちゃいけないやつですね。
王家の主張も庶民の主張も感情的になればそれは落とし所のない案件でしょうから。
だって現情報からすれば明らかに帝国が悪いのに帝国に助けを求めなければならないので、帝国を糾弾できない状況ですからね。
でも、上の立場かつ、年上なんですから弟王子もう少し対応を考えられるようにならないと拙いのでは?
初手は弟王子様からだそうですよ。
警備隊のお兄さん達も微妙そう。
「あー、もうっ、腹が立つったら」
ティカちゃんが荷物袋漁りながら横にぼすんと座りにきましたよ。おやつ食べます?
「貰うわ。とりあえず狙いは地虫だけど、他にも出るはずだし。できれば他の狩れる奴で少しコツを掴んでおきたいんだけど、無理っぽいかなぁ。でも! 馬鹿にされてんのも舐められててんのも、イヤなのよ!」
次第に声が大きくなりましたね。ティカちゃん。
「えっと、あの、申し訳なく……」
「謝罪は不要よ。アクサド殿下には弟君の手綱握れないの周りだって重々承知してるんだから。でも、見捨てる気がないならもう少し聞いてもらえるように立ち回ればいいのに。それ以前に身分、わきまえてよ。礼法にうとい庶民には迷惑よ」
バシッと兄王子を黙らせるティカちゃんですよ。
「モーニングスターは重いのよね。メイスより攻撃力は高いんだけど」
ぶつぶつ言いながら一旦、ひっぱり出す武器が重そう、かつ凶悪そうなんですが?
「重い方が勢いつくし、武器の重さでぶっ飛ばせていいのよ? 肩とか腰にくるし、足首やりそうにはなるけど。気をつけて回復したら対策にもなるし」
負荷デメリット多くない?
「あのね。ネア。最終生き残るのが正解よ。魔力さえ残ってれば治療は可能だし」
そうなんだけどさ。
「まぁ、難点はあの地虫、集団で出るっぽいってとこよね」
「あ。仲間を呼ぶタイプの魔物なんだ」
弟君がぽんと手を打ちますよ。なんですかそのタイプは?
「えーっと、さほど強くないけれど、一定間隔で仲間を呼んで増殖するタイプの魔物? 倒せるならレベル上……違った。訓練に適してるよね?」
「地虫、強いわよ? 私、ネアやハーブほどじゃないけど、同年代冒険者の中では弱い方じゃないからね?」
回復向きですが特化している訳じゃないですもんね。ティカちゃん。
「えーっと、たぶん、冒険者一年目、二年目は『蒼鱗樹海』なら一階層の二、三フロアが適正なのでは?」
あー、猪とか時々熊。
そのへんをこえてから二階層に来いってことですね。
ベテラン勢が熊及び猪は狩ってくれるので初心者や不慣れな冒険者は落ち着いて兎狩りですもんね。
「かもね。とりあえず、地虫は集団だから、防御主体で確実に叩ける方法を見つけないとダメなのよね」
んー。
「燃やしちゃえば?」
ティカちゃんも火のギフト持ったんだからスキルにしちゃわなきゃ。
「燃やす? 燃やせる火力出せるかしら? ……やってみるしかないわね。魔力回復系のおやつあるかしら? 腸詰めも美味しいんだけどね!」
もちろん、いくらでもありますよぉ!
ちょっぴり魔力出力を高めつつ回復もする薔薇茶ですよ! ほんのり蜂蜜味です。
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