第357話 写本作成再び
バティ園長に『月砂翠宮』を封印できるかを聞くと封印の核になるなにかがなければ難しいでしょうと答えられました。できなくはないそうです。
必要なものは意志と覚悟と魔力だそうです。
ティクサーの封印結界は薬草園の魔力とバティ園長の用意していた魔核と本人の命を含む魔力、あと私の承認と魔力でティクサー自体を封鎖し、『蒼鱗樹海』が周辺を干渉地としたことで外部からの調査干渉を減少化できていたそうですが、ケモノの国跡は複数の国家に囲まれているため状況変化が有れば調査という名の干渉、つまり結界に外部からの干渉が多くなり、壊れやすい可能性が出てくるそうです。
いや、封鎖して影響出ないうちに自分たち強化して防壁用の魔力高めとくべきじゃない?
なんて思っちゃうネア・マーカス写本作成中ですよ。
魔力をこめて一文字一文字間違えないように写していく作業です。……実は最初の本は集中力もつのですが、同じ本二冊目はちょっぴり集中力が欠けてめんどくさいなぁが顔を出してきます。
なんて言うんでしょう。間違っちゃいけないは思っているんですが、新鮮味が薄い? ああ、これこれこの展開ですよね。あれ? それで良かったんでしたっけ? おや? コレ誤字では? と見出すものもあっちゃったりして尼僧様に確認してもらったりもあるんですけどね。
まぁ、同時に「ネア、ココ間違えているから作り直してね」などと私の写し間違えも指摘されることになるんですが。黙っていたらバレなかったかもとか、ちょっと悪い子なことも考えてしまいます。
ええ。無心。無心で写さなくてはいけませんね。
迷宮に関わる時間というものは実際に探索に行って過ごす以外はなんていうか無も同然。あれ? 人より多く人生経験してません? とかも思いますが、『私』本人ではない私が活動している時点でお察し案件でしたね。
ツラツラ無関係で思考を埋め立てながら写本作成です。誤字修正とかできませんかね?
【……できますね。処理しますか?】
愚痴をうざく思ったのか天職の声さんが提案してくださいましたよ。よろしくおねがいします。
【うざくなど思っておりません。……それで、封鎖結界の核を如何なさるおつもりですか?】
そこなんですよね。
私、人柱とかって好きじゃないんですよ。
十中八九いのちもなくしますよね。このプラン。
【……そう、ですね。適性があるとすればマコモ。もしくはハーヴェスト。ディディア。オルガナ。マオも魔力は高いので候補にあげれますね。あとは封鎖し続けるその意志力が問題になるでしょう。封鎖封印を目指すなら他国からも迷宮神子が寄越される可能性もありますが】
……。
当たり前に私が守りたい家族が入っているし、町の繁栄維持に超重要そうなディディア様を候補に入れるのはどうかと思うんですよ?
【イゾルデやルチルではその思想意志が封鎖封印に向きませんから】
知り合いばかり上げるぅ!
あ。領主様は?
【適性がありません】
あ。はい。
【まだ魔力が成長過程ですが化けそうなのは、アクサドでしょうか。園長の孫というのも頷けますね。問題は彼にそれをなす覚悟があるかということでしょう】
維持できる期間というのも大事になりますし、園長だってひとつの期を維持しただけなんですよね。
記録を見るにかなり『蒼鱗樹海』から魔力は貢いでもらっていたみたいですが。
「なんだかむずかしーい」
つい声がでました。
グッと体を逸らして天井を仰ぎます。
吊るされたランプ。干された羊皮紙。インク用の植物の根に棚に突っ込まれた薬草の束。
外では迷宮外の期節の果実を吊るし干しする班の子供達のはしゃぐ声が聞こえてきます。
彼らには適性も魔力もありません。
核なしで封鎖封印を叩き込むことはできないものでしょうか?
『アルジ、エリアボス蛇、イク? エリアボス蛇命ナクサナイ。オワッタラ起キル』
いや、なに言い出してるんですか。エリアボス蛇は『蒼鱗樹海』のエリアボスです。不在ダメ絶対。
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