第356話 対策方針はコレで。
ひとしきり沈黙ののち、『可能性はありますね』と言われてしまったネアです。ブーイングは許されるでしょうか?
『月砂翠宮』への対策。
正直抑え込んで支配しきるには難しい状態だそうです。なら、学都から帰ってくるまでもてばいいわけですよね。
『私が生け贄になりましょうか? ひと巡りはわかりかねますが二期なら維持できるでしょう』
え。
「それは迷宮核なり損ないに魔力ぶち込んで『月砂翠宮』周辺に撒いておけば良いのでは? そうですね。なり損ないを多量に撒けばドレイン環境落ち着いたりとかないですかね? なり損ないが迷宮核に進化してくれてもいいんですが」
貯めおける魔力容器が有れば変わりませんかね?
『空き容器ですか』
ふむ。とばかりに考えているらしい流玄監獄さんですよ。
『近隣に聞いてみたところ、森が国境まで消し飛ぶダメージの中、迷宮神子を迷宮核として変質させることで核を無理矢理残したようですが、迷宮神子が魔力精神力共に力不足だったようです』
あー。
こわかった。ってやつでしょうか?
どこまで感知できるものかはわかりませんが周囲が消し飛んでいるんですしね。おそらく見渡せる限り。
しかも味方(迷宮核)によって改造されて混乱でしょうし、いきなり『支配者』って言われてもひたすら困っちゃいますよね。
もちろん、もちろん喧嘩売ってこられてるのはわかってますが、相手の理解力もまた大事な要因なのです。
恐怖パニックで暴れているだけの子供と言われてしまうときっかけなんて関係ないし。という気持ちと理不尽な環境で抜け出せないの苦しいよね。という気持ちがにじり寄ってくるのです。
何もできない。なにもわからない。どうしたらいいのか。助けを求めていいという発想すら浮かばない。けれど、受け入れることもできない。それはとても苦しくて理不尽でよくあること過ぎて。
「とりあえず。魔力ぶち込んで冷静になってもらうところからですよね」
しかたないので力技がいいでしょう。迷宮核のなり損ないをぶち撒いておいてそこに魔力ぶち込んで、簡易封印。で、たまに学都から『流玄監獄』(一番近い迷宮になるはず)にきて封印を確認しつつ、私の魔力容量を増強する。
よし。たぶんなんとかなるはず。
たぶん。
ええ。まずは一歩踏み込みましょう。
『え』
ん?
「どうしました? 流玄さん」
『いえ。なんでもありません。流石マスターですね』
……。
なんか含みがありませんか?
「一番の優先はティクサーの安寧ですよ。そして私の迷宮達の安全。もちろん、流玄さんもですよ?」
周辺迷宮に影響は出るかも知れませんが、園長が張ったような閉鎖結界が張れればいいんですが。ああ。園長に聞くのが早いですね。
冬までに対策がとれないならそれがいいでしょう。
「迷宮核のなり損ないを集めておいてくださいね。あと魔力源になる侵入者はいるんですか?」
『それは流刑船が流れ着きましたからご心配なく』
帝国犯罪者集団ですかー。
どんな人たちなんでしょうね。
『興味が?』
問われれば頷くしかありませんね。
『多くは押し込み強盗や野盗を働いたならず者ですね。借財がたまって身動きが取れなくなった者。あと、政略的に復帰できぬよう堕としておきたい無実の者ということもありますね』
帝国こわいんではないでしょうか?
「無実の人とかもいるんですね」
失脚狙いって奴でしょうか?
『……。マスター、罪のない存在などおりませんよ。罪科は勝者が敗者に与えるものですから』
あー。
おまえが不愉快。それが罪状って奴かぁ。
わからないでもないけれど、やられる側はキッツイよね。
やるときはやり返される心算だけは持ってないといけない奴だよね。
そのくらい、わかってる。
力で済ませられることもそれだけで済ませられるわけじゃないんだよね。難しいなぁ。
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