第355話 打ち合わせ

『流玄監獄』さんに訪れている迷宮管理者ネアです。

『寛いでらっしゃいますな。マスター』

「他の迷宮さん達を接近禁止というのはちょっと誘惑ですから」

 いまさらでもあんまりみっともない姿は見せたくないというか。気が抜けないというか。

「なんといいますか、彼らに甘やかされるまま甘やかされるとたぶん、堕落の一途だと思うのでそこは自身を律しておくべきかなぁと思うんですよ」

『……それはご立派なお考えかと』

 あ。

 思ってないぞ。これは思っていないぞ。

「流玄さんはわかりやすいと言われませんか? 正直にクッソ無駄なことしてますね。って言っていいんですよ。怒るかも知れませんが、自由思考と発言は許可します。禁じているのは私の行動発言を天職の声さんをはじめとする私と契約した迷宮達への共有ですからね」

 怒らないなんて言いませんよ。感情はありますからね。でも感想は自由だし、そう思われるという事を私が知っていることも有意義なことなのです。

 まぁ、ダンコアちゃんが抜かりなく誓約を結んだと思うんですけどね。必要な条件外なら自由でいいですよ。

 迷宮に関してダンコアちゃんへの信頼は厚いです。

『何処の迷宮核なんですか?』

 ん?

 ダンコアちゃんのことかな?

「ダンコアちゃんはダンコアちゃんですよ。私が『私』の中で目覚める前に生きた場所で、えーっと、コンパクト契約だとかを結んだ、えーっといわゆる魔道具ですね。たぶん」

『コンパクト契約……?』

『コンパクトではなく魂魄。魂の情報を繋げ合う契約です』

 あ。ダンコアちゃんだ。今、外見『ネア』を写しとっているからかわいいって言っちゃうと自分を可愛いって言ってるみたいでちょっと恥ずかしいですよね。かわいいですよ。ダンコアちゃんも『私』も。

「コンパクトと魂魄じゃ違うの?」

『コンパクトだと簡略とか小型化とか軽量化のイメージですね。魂の契約という重々しさとは逆方向かと』

 ふぅん。

 使用言語というか文化圏の誤差に関する語彙誤差はある程度フォローされている気はしますが、わからないものはわからないし、指摘されないと気がつけないんですよね。

「まぁいいでしょう。問題は『月砂翠宮』への対策ですよ。排除が早いんでしょうが、そこまでの魔力が私にないならないで侵食に対する対応力を上げておかないといけませんからね」

 大事な事を見誤ってはいけませんよね。

 というわけで。

「なにか歴戦の翁として案はありませんか?」

『そうですね』

 なんか躊躇いがちに重々しく口を開きましたね。引っかかることがあるなら言っていいんですよ? 風通りは良い方がいいですからね。

『『月砂翠宮』は慢性的に魔力枯渇を起こしています。広大な迷宮部分にそれを維持する迷宮核がないのですから当然です。スライムの魔核で階層ボスとなり得る魔物例えば古代竜などを維持しようとするようなものですからね』

 あ。めちゃくちゃ無理筋だ。

『つまり、自壊します。供給どころか維持する機能も失われているのです。魔力が通るだけで自壊です。本来なら周囲に破壊をばら撒き消失するものですが、周囲の迷宮による自己防衛の壁、国の境界壁ですね。の存在で破壊が広がらず、壁から魔力を受ける事でギリギリ維持してしまった状態です。ですから、魔力ドレイン以外はなにもできない迷宮ではあります』

「その魔力ドレインが一番厄介なのでは?」

『そうですね。それでも壁があることでそこより先にはなにもできないのですよ』

 あー、それで壁の維持に人柱を捧げるわけですね。

「帝国を守る壁というわけですか」

 帝国まわりにある迷宮を持つ国々が生け贄なわけですね。

 主犯、拾えた情報が正しいなら帝国ですものね。対策はとっていますよね。

 なんのためにそんな地獄を発動させたのかはわかりませんが。

「オマツリに前座とか言われたら怒りますよね。コレ」

 なんというか、素直な感想ですよ。

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