第344話 ネアの一人思考

『蒼鱗樹海』はクセが強い迷宮として認識されているようだと感じている迷宮管理者ネア十歳なので世間知らずです。

 入り口は現在二ヶ所(表向き)。二階層への階段はひとつ。規模はアドレンス王国国境内側全土とひとつ階層分の広さが同等。この時点で迷宮と王国側が友好契約をしていた場合、国土二倍案件なんですがしていないです。それでも国土は迷宮があるということで環境は改善されていっています。ないと枯れていくだけですからね。

 迷宮の方の葛をなんとかしないと葛の大繁殖はおさまらないんですよね。迷宮内の一階層はあまり期の移り変わりに影響されない一定気温。少々夏よりの気候なので薄着上等ですが外に出ると一気に寒いです。そう外は秋が深まってきていますよ。涼やかに過ごしやすくなり夜がはやくなったり、植物が色づいたり、地上を彷徨う魔物達が冬のねぐら造りにいそしんだり、木々の実らせる果実がやたらと美味しくなっていたりと秋はモノが美味しいです。

 食べ物が豊富ですし、資材に不足もなく火もおこせますのでひもじくもかじかみもせずに快適な日々ですよ。

 日常の生活はさておき、ティクサーにしか下階層への入り口がないのは不便では? とエリアボス蛇に聞いてみたところ、得意げに三階層が開けば侵入経路は広がるそうです。

 一階層への入り口を次にどこに開けるかは未定だとのこと。

 三階層の入り口はクノシーのそばらしいですよ。騎乗しても五日かかる距離ですよね? 荷馬車で七日ですよ?

 攻略が難しそうですよね。

 七日歩いて三階層にたどり着いたら水源地帯……。地下洞窟からの水源洞窟への移動ですから予想の範疇になるんでしょうか? 洞窟は洞窟ですしね。

 二階層の地下洞窟で下手するとひとつの期を過ごすんですねぇ。期節感狂いそうですよ。

 一階層は初夏、二階層は初秋、三階層は初冬って感じですからね。

 ただ、長時間迷宮に居続けることは人間には不向きだそうです。常に魔力を吸収されていくので。

 まぁ、特異な例として『ティクサー薬草園』の三階層ですね。他にもそういうギミックのある迷宮は存在するそうです。

 魔力枯渇だけなら意識を失うだけなので誰かが拾ってくれて治療を受ければ問題ないんですけど、三階層は、麻痺スライムと腐食スライム、そしてヴェノムスライム、ジェムスライムが徘徊しているので、意識を失えば消化されますけど。

 尼僧長……園長には殺意が高過ぎる。と言われたんですけど、覚悟のある侵入者には当然の対応ではありませんかね?

 薬効高めの植物に穏やかな子守り上手なスライム達。

 ですけどね、貧弱雑魚迷宮と嘲笑われることを容認するほど心は広くないんですよ。私。

 先行者と後続者が合流できるのは中継地点だけだから。せいぜいパーティでアタックするといいのです。ちなみに『帰還グミ』はジェムスライムのドロップです。ジェムスライムを人数分倒す必要があるんですよね。

 ジェムスライムは麻痺スライムが対象を麻痺させたあと周囲の壁から染み出してきて、獲物を段差の下に引きずり込んでから床に擬態するスライムです。

 まぁ、貧弱雑魚迷宮なのであっさり乗り越えて四階層を楽しんで欲しいですね。一回クリアしたらスキップして四階層に行ける仕組みですしね。

 冒険者の人の調査意識、好奇心は他の迷宮への入り口を隠した部屋を見つけられるんでしょうかね?

 まぁ発生したばかりの雑魚迷宮ですからね。警戒は必要ですよね?

 貧弱なので強化のためにはたくさん魔力を吸収ですとも。とりあえず、即死はしない量で。(すぐには意識を失わない)

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