第338話 ドロップ品の割込み

 プリン。

 ええ。とても気に入りました。

 元々葛餅が食べたいと思うぐらいにはつるりとした食感が好みなのです。甘夏寒天も爽やか美味しかったです。

 ええ。ちょっと園長に相談して暴挙に出ることにした迷宮管理者ネアですよ。

 もちろん『ティクサー薬草園』専用ドロップです。三階層でドロップですよ。

『麻痺解除プリン(黒)』と『麻痺プリン(茶色)』です。

 なんで『麻痺プリン』なんですかって思います。名前の通り麻痺解除するし、麻痺をひき起こします。三階層のスライムを倒すと手に入ります。そしてあっという間に劣化します。時間経過が遅くなる荷物袋必須ってヤツですね。

 解除プリンの方を味見しましたが小さな小瓶に入った黒い物質でした。逆さまにしてもこぼれない。棒をつっこんで崩してから瓶を斜めにすることでようやく流れ出てくる感じです。小瓶に使えるスプーンはまだ見たことありませんし、迷宮探索に調合用小スプーンなんて持ち歩いていてその上で食べるのに使う人は一般的ではありませんね。

『三階層は長居できる階層ではありませんからね。有益な物だと鑑定されるまで少しかかるかも知れませんね』

 その上で『麻痺プリン』の方がドロップ率高いんだそうですよ。

『三階層における救済策として『帰還グミ』を三階層スライムにドロップさせます』

 食べると一階層のどっかに飛ばされるらしいですよ。味はほんのり林檎味だそうです。

 迷宮が魔力強奪した後、リリースする手段だそうです。運が良ければ誰かが魔力飴を売ってくれるでしょうとのことです。スライム倒せなきゃいけないわけですが大丈夫でしょうかね?

『迷宮は本来命懸けの危険区画です』

 園長の言葉にそういえばそうでしたねと納得します。

 三階層の安全区画はふたつ。

 中程、と言っても序盤寄りの安全区画。スライムが寄ってこず、魔力の強奪がゆるくなるだけの区画で魔力は回復しません。魔力が百あったとして安全区画外では一歩歩くだけで魔力が常時三奪われて、安全区画ではそれが一になるくらいだそうです。

 私は魔力の自然回復量が勝りますね。

 魔法陣がひとつ設置されており、魔力を五十叩き込むことで『帰還グミ』(個人用)が生成されるそうです。

 そこに来た時点で五十魔力が残っているといいですね。

 もうひとつの安全区画が四階層への入り口で有り、一階層への転移陣(片道)が設置されています。

 四階層入り口には四階層と往復可な転移陣を準備中だそうです。四階層から三階層へは入れない仕組みになっているそうです。

 そしてグミやプリンが手に入るのは三階層だけ。

 もう少し深い階層ができれば豪華なお菓子をドロップ設定できるでしょうと言われました。渋い顔で。

『薬草園に相応しいドロップ品かとても悩ましいのです』

 あ。はい。

 美味しさのあまり暴走しました。

 プリンが、美味しかったのですよ。ええ。弟君の作ったプリンには届かないプリンという名のプリンもどきですがプルプルしてますし、クリーミーですし、甘苦いですよね。

 弟君に『麻痺プリン』確認してもらったんですが、ひくついた表情で「なぜ麻痺……あ。チョコプリン」呟いてました。ひついてたんですが、すぐに興味深そうに表情を変えたのでちょっと情緒大丈夫か心配になりましたよ。

 あ。管理しているのは迷宮だとバラしたら弟君は「ああ、なるほど」とだけ応えてくれましたよ。

 トカゲ氏をシメるタイミングはシメない条件で機会をつくってくれるそうです。やっぱりトカゲ氏もどっかの迷宮らしいですよ。「たぶん、帝国の迷宮なんだと思う」とのこと。弟君を召喚したのは帝国の誰かみたいですしね。

 あれー?

 潜在的に弟君敵だったりしませんよね?

 今のところ帝国のロサ家のせいでいろいろ厄介ごと起きてますよね? あ、今は『渓谷の国』に婿入りしてるんでしたっけ?

『主人様、秋祭りの準備はどうですか?』

 園長に不意に聞かれて思考空転から浮上します。

「私達子供の出番は本番で楽しむだけになってきてると思いますよ!」

 そう、大人が子供達に内緒ごとが増えてきたんですよね。掃除依頼はあるけど、立ち入れない場所が増えてたりで。

 すごくウキウキしますよ。

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