第336話 アテのひとつに打診する

 天職の声さんにも情報開示制限がかかっているんでしょうかね。などと考えているネア・マーカスいち冒険者です。

 王子様たちの補佐役をしたり町の清掃をしたり各ギルドのお使いをしたりで意外とこき使われている感じがしますよ。

 オマツリがはじまっていたとして、よく考えてみると私のやることは変わらないんですよね。

 とりあえず、ケモノの国の『月砂翠宮』はシメますが、このティクサーで穏やかに一日一日を過ごしていくために環境開発と治安維持を行う。それだけと言えばそれだけです。

 問題はお相手が私の知るバトルジャンキーと同タイプであった場合、執拗に絡んでくる可能性があるのですよね。こだわりの強さは時に人徳者を変質者に変えますからね。元々紙一重なのかもしれません。厨房設備を使えないんだから加工品の実る植物を開発してみたとかおっしゃるのは本格派の変質者だと思います。ふと、影響受けてたらイヤだなぁと思ってはしまいますが、別にあの人たちを嫌いだったわけじゃないんですよ。

 間違いなく私を受け入れてくれて、つかずはなれずの妙な距離感でなにもわからなかった私を育ててくれた人たちでしたから。

『信じろ』と言われるより、『好きにしろ』と突き放してくる人たちでした。

 それでも、『拾ったから、すぐ死ぬ場所に還したくないんだが、選べばいい』と言ってくれたんです。生きていろと望んでくれたんですよ。あの本命彼女を常に侍らせてたハーレム魔王。

 くっそ変態でした。

 オムレツを生み出す出歩く植物とかに慣れているのはあの暴食変態のせいでしょう。

 なんて言うか、家族になってくれたんですよね。

 だから、私は家族は大事だと思うんです。

 どんなクズでも変態でも、家族として見捨てられなくなれば、もう、ダメなんです。

 しかたないんですよね。

 天職の声さんがどう思っていようが私にとって『私』も天職の声さんも、ええ。もう家族なんですよ。

 迷宮支配と魔力向上を誘導してきたのは天職の声さんですので何か知っているとは思います。それでも伝えられないと言うのならそれはそれでかまいません。

 とりあえず、園長たちと喧嘩はしないでくださいね。

 ま、なんとなく理解したあたりでは帝国にある迷宮の関係ですよね。『流玄監獄』と園長たち特に交信が不得手なのはまだ試験運用中迷宮なのもあるでしょうが、一番は国境線ではないかと思うんですよ。隣接していても不具合有りなのに遠距離である帝国領内に本体があるとして、天職の声さんには負担があるんじゃないかと想像するんですよね。


【貴女を不利にするために?】


 いいえ。

 私のことはともかく、『私』のことは大事にしてらっしゃいますし、あと、強引ですけど負けず嫌いですよね。天職の声さんは。

 つまり、オマツリでの敗北を天職の声さんは望まないわけですよ。ええ。

 私であれ『私』であれそう私にはあまり気に留めるところではないんですよね。

 マオちゃんもかわいいですし、ティカちゃんと学都で一緒にお勉強してたくさん遊んで、みたいですよね。

 学校でお友達と一緒にお勉強とか、お友達と一緒に遊ぶとか。ドキドキしますよね。

 でも、一緒に遊ぶってどうすればいいのか不安でドキドキもするんですよ。

 マオちゃんは、かわいいんですよ。

 ええ。

 ほんとうにかわいいと思ってます。

 でも、でもですよ?

 妹って全部とっていく存在だったりしません?

 マオちゃんじゃない私の妹はそんな存在だったんですよ。

 だから。

 やっぱりまだこわいんですよね。

 だから、天職の声さんはちっともこわくないんですよねぇ。


【だから!?】


「秋祭り、楽しみですよ」

 たくさん準備して空気が浮ついてきてるのが感じとれるんですよね。


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