第335話 ツーシンってなんですか?
ほんのり不満を抱える迷宮管理者ネアです。
帰ってきた本拠地でいつものメンバーにお問い合わせですよ。
「オマツリについて知ってるひとー」
『アルジ、イル準備? 知ッテル!』
あ。
エリアボス蛇はご存知ありませんね。かわいいですよ。
「そのお祭りじゃないんだな。コレが」
『希望、不明瞭』
天水ちゃんから微妙な感じの苦情がきましたね。とりあえずしょんぼりしたエリアボス蛇を撫でながら悩みますよ。
「んー、よくわからないんだけどね。『流玄監獄』がね、なんか私が知っているべき『オマツリ』を知らないって驚いてたの。『流玄監獄』は『流玄監獄』で情報開示に制限がかかってるらしくて……。弟君の連れてるトカゲ氏に話を聞くべき?」
アレも迷宮関係だよね。つまり、弟君にもう少し情報開示する必要性がある?
『あまり詳しくはありません。ですが、迷宮は時に迷宮同士で争います。『帝国』のように、あるいはアドレンス、つまり我々のように『管理者』によって管理されている迷宮同士はあえて争う必要性がありません。無論、序列を強さだけで求めるとおっしゃるのでしたら、我々間であっても争いが生まれるでしょう』
争い事かぁ。
『情報と準備が必要だと『流玄監獄』が伝えたというのなら、『管理者』による迷宮戦かもしれませんね。制限が有り、『流玄監獄』が帝国から切りはなされていることを鑑みるに前回の『オマツリ』は敗北したのではないかと思われますね』
あ!
だからペナルティとして情報制限がかかっているのか。
それにそーいえば、天職の声さんが他にも管理者はいるって言ってましたね。
『仮定の推測に過ぎませんよ。人であった時にいくつか迷宮主に迷宮のことを問い合わせていただけですから』
「園長の情報、助かります!」
天職の声さんにも聞くべきなんですが、お答えくれるか不明なんですよね。
『是。推測』
「はい。天水ちゃん教えてください!」
推測でいいのよ。推測で。
『是。主。迷宮通信機能制限解除希望。新規迷宮。制限、成長進度制限、不明。管理者権限?』
んん?
「ツーシンってなんですか?」
ああ!
天水ちゃんが頭を甲羅に引っ込めましたよ!?
ごめん。
わかってあげれなくてごーめーんー!
『他の迷宮との伝達手段です。遠隔地であっても同管理者権限内の迷宮同士の会話に負荷はありませんが、管理権限が違う迷宮との会話には魔力コストがかかります。伝達手段があると『宣戦布告』を受ける可能性が出ます。通常『布告』されるのは本格活動をはじめた迷宮です。つまり我々から通信機能を開くということは他迷宮からの『布告』を受け入れられるということになります』
ひぃ!
「まだ、早いよ!」
おはなししてくれたのは『蒼鱗樹海』の守護樹さんでした。普段はエリアボス蛇に任せて裏方に徹してくれているんですよね。いつも様子はうかがってくれているようですが。
『段階差?』
『そうですね。天水峡連。模索は良いと思いますが、周囲の迷宮の敵性度がわからない以上、まずは練度を上げる時期だと考えます』
んー。
『天上回廊』なら『布告』されないんじゃないかなぁ?
あと『石膏瓦解』も。
『是。……『オマツリ』管理者同士の戦争。迷宮御子、迷宮管理者否。管理者魔力特異。他管理者。別大陸。非干渉? 否。妨害工作有。『オマツリ』始動済。主、不利』
え?
『推測』
えーー!?
「戦争をオマツリって……」
ひどくありま……言うわ。戦闘狂の人たちにとって命懸けの闘いって『オマツリ』だわ。
ルールっていうか、決まりごとがあるなら知りたいけれど、それを知ることすら『オマツリ』の仕組みのうちな可能性がありそうですよね。
はじめますではじめるのかもしれないですが、その前の準備は不正ではないと言うのなら、『私』がここにいること自体が妨害の結果な訳ですね。
あとで『流玄監獄』に問い合わせしてみましょう。
推測について聞くくらいなら『情報開示制限』にかからないかもしれませんしね。
「ありがとう。天水ちゃん。また思いついたら教えてね」
『是。思考好』
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