第326話 『魂極邂逅』探索はじめは雑談多め

 ひとつ目の転移陣できた場所はオッさんによると昨日と同じ場所だそうです。軽く『たまちゃんの足跡』を探して昨日使った転移陣があった方ではない道を進みます。ゴーストとボーンアニマル討伐しながらの快進撃をするネア・マーカスのチームですが基本戦闘はルルドくんとティカちゃんの担当です。あれ? おかしくないですか? 私だって戦っていいと思うんですけど?

「お! たまちゃんの足跡発見だぁ!」

「オッさんっ邪魔!」

「戦闘の邪魔しないで!」

 オッさんがダメな大人発揮でルルドくんとティカちゃんに強く叱られています。

「あー。このくらいの不測の事態なんとかしろよぉ」

 理不尽です。オッさんが理不尽です。

「世の中、不測の事態っつーのは山とあるんだからさぁ」

 そう言いながらオッさんが私を見た気がするんですが、それはどういうおつもりでしょうか?

「できるだけ不測の事態は減らすものよ。だからオッさんも戦闘中に乱入しないで」

 ビシッとオッさんを睨むティカちゃん、凛々しい。

「ネア。ハーブ」

 ん?

「オッさんが戦闘妨害するフシを見せたらとめてちょうだい。お願いね」

 お?

「はーい」

 弟君とお返事がかぶりましたよ。

「よろしくね。二人とも。よそのパーティに対する迷惑行為も阻止しなくっちゃ」

 ティカちゃんの言葉にルルドくんも力強く、「ホントにな。オッさん、いい大人だろ」と吐き捨ててましたよ。

 私たちと同じコースを選んだパーティの人たちが遠巻きに「うわっ」「え、ギルマスだろ?」「……助かる」「アレはよき姐さん」とかもらしていますね。

 ティカちゃんに二つ名つく日も近いのでは?

 転移陣の試練は『ボーンラット十体』『ゴーストの魔核十個』『清め塩十個』『鉱石十種』でした。ルルドくん、ティカちゃん。弟君。私なんですが、たまちゃん、私だけなんか条件厳しくないですか?

「ん? 『調味料十種』でイゾルデが「もってるけどな!」って吠えてたからたまにあるぞ?」

 オッさんに言われても釈然としないですよ。

「いくつ転移陣の試練を受けたんですか?」

「銅鈴は十をこえたな。しばらくは困らないな」

 実際のところ転移陣はかなりの確率で入り口に帰してくれるんですよね。

 鉱石十種は学都や『石膏瓦解』で集めたりした銅鉱石、桜塩の鉱石を一欠片。硝子も鉱石と認められて一安心。まぁ銀貨も突っ込みましたが。輝石の類も判定は鉱石だったのでいくつか所持していて良かったと思います。水晶、翡翠、黒曜石、琥珀。緋炎石。青星石もいけそうでした。

 たぶん、鉱石のサンプルが欲しいというのもあるんでしょうね。

 ティカちゃんに坑道の柱を指し示されたので寄っていきますよ。

「ほら。さっきの所とも入り口のあたりとも柱の色違うでしょ?」

 そうですね。黒に赤い横縞の柱ですね。

「聞いたところによれば、柱の主な色は黒だけど違う色で模様が描かれてるらしいの。その通路の間は同じ柱で、違う通路だと模様や色が違うらしいわ。だから一応区別できるんじゃないかって話題になってた。入り口の転移陣から転移する先は確実にあの安全区画のある通路らしいけど」

 ティカちゃん情報通ですね。

「あのね、朝食の時とかそういう話してる人たちも多かったわよ?」

 朝ごはん時間は朝ごはん食べる時間ですよ?

「朝食は美味しいを楽しむ時間ですよ?」

 蒸したお芋にお肉とバターをのせた朝ごはん。美味しかったですよ? お子様用に甘芋でつくってあってちょっぴりの清め塩でお肉も芋も旨味が引きたつのにその上にじんわりとバターがしみていくんですよ? 干したりんごの皮で淹れたお茶も爽やかでしたよね?

「そうね。私は気になったから聞いておいたの。役に立ったでしょ?」

 それは、うん。

「そう思う。ありがとう。ティカちゃん」

「食堂ってね。いろんな情報を集める場所でもあるの。ウチは食堂だからね、私はネアと違って慣れてるもの」

 ふふんと自慢げなティカちゃん、かっこいいですね。

「ま、だから。情報収集は私苦手じゃないんだけど、ネアもある程度は自分でも情報集めれるようになっておいた方がいいわよ。でないといろいろめんどくさい事になるから」

 うーん。

「わざわざ集めるのめんどくさい」

「自分で集める必要もないだろ」

 ルルドくんがそんなことを言いますよ。

「何人か気楽な会話をできる友達を作って界隈の情報を集めればいいんだからさ。ハーブみたいに」

 ほぇ?

 弟君?

「いざとなればそっちから情報吐かせればいいんじゃないか?」

「え? 僕、それほど情報通なわけじゃ」

「そっか! ハーブ君とティカちゃんがいれば私は大丈夫だね!」

 うわーい、一安心だ。


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