第325話 『魂極邂逅』探索二日目いくぞ

 夜の授業で屍女と骨狗によって昨日私が伐採した木々やらなにやらは見事に資材に変わったことに驚きを隠せないネア・マーカスたぶん常識人です。

 伐採量が不足だと!?

 なんてチラッと考えちゃいました。私は子供なので本当に必要分は大人の本職さんが頑張ってくれるだろうと流しておこうと思います。

 今日は寝不足大人組が一部いるらしく、迷宮探索に途中参加者が来る方式だそうです。

 四人か五人でパーティを組んでお子さまパーティには大人が一人つきます。私のパーティは私、ティカちゃん、弟君にルルドくんです。ドンさんが「この迷宮なら魔力酔いを起こすこともないだろうけど、無茶すんじゃねえぞ」なんて言ってきましたよ。そのあと「オッさんも無茶振りすんじゃねえぞ。ちゃんと引率できんだろうな?」とオッさんにも圧をかけてました。

「はっはっは。一階層を歩き巡って『たまちゃんの足跡』から鉄鉱を掘り尽くすぞぉ!」

 オッさんに効果はなさそうですよ。

 イゾルデさんは他の子供パーティの引率らしいです。夜の迷宮探索してたらしいのに元気ですね。

「夜はデドールがうろついていたから夕方になる前に安全区画か町に戻るようにな」

 デドールというのはいわゆる『動く死体』ですね。

「おそらく最近迷宮や氾濫で出た死者だな。あの装備には覚えがあるし、体捌きも速度は劣るが本人のモノだった。ギフトは使ってこなかったのが惜しいよな。ドロップは魔核だけでショボかったから転移陣に魔核を置いて再戦希望しておいた」

 あー、迷宮に魔核を贈るもしくは還すことで同個体の魔物をリポップ希望っていうのはけっこう知られているんですねぇ。

 というか動く死体とはいえ死してなお知り合いと思われるイゾルデさんにしばかれるのか。下手な場所で死んでデドールとして活用されたら大変かもしれないなぁ。

「おそらく、『蒼鱗樹海』の死者もデドールに転化されているんだろう。知り合いな気がしても躊躇うな。ヤレ。無理なら夜の迷宮に入るな」

 イゾルデさんの言葉に大人も含めてざわついていますね。

「ネアたちぐらいのデドールもいた。躊躇うなよ?」

 息をのんで固まる大人が増えましたね。

「僕らは夕方前には『帰還の銅鈴』使うから問題ないね」

 弟君がにこにこして言いますよ。

「奥、もしくは下の階層には普通に出るかもしれないがな」

 イゾルデさんが脅してきますよ。

 これ、昨日の比較的楽な探索で気を抜くなっていう激励ですよね?

「同じ転移陣を使っても転移場所はいくつかの候補があるらしく変動する。ここ、入口の坑道だけは使用されている柱の色が違う。どこの転移陣からも入口の坑道に戻る可能性はある。ま。あの迷宮兎たまちゃんの性格だろう。先に進みたい。とか、帰りたいとか転移陣を使う時に宣言しておくと聞き入れられる可能性が高いな」

 柱の色?

 どこも煤けた黒っぽい色じゃなかったですか?

「入り口は鉄の黒だ。転移陣の先の柱は木製の柱に防腐剤等を染み込ませた黒だし、地味に目印になる刻印が打たれてんだよ」

 オッさんが解説です。なるほど。目印があるんですね。

「ネア」

 ティカちゃんに呼ばれましたよ?

「転移陣使ったあとで見分ける要所、教えてあげる」

 あ。うれしい。

「ありがとう。ティカちゃん」

「やっぱり気にしてなかったのね。……もう。しょうがないんだから」

 だって、柱って採取物でもないただ物珍しい背景の一部って感じが抜けないのかな。ギミックを組み込むなら壁や床って感覚はあるんだけど、坑道にそんなものがあっても面倒なだけって先入観があるのかも知れないですね。

 そこは意識的に気をつけておくところかもしれないですね。

 教えてもらえるっぽいですし、今日も迷宮探索楽しみますよ!

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