第324話 雑談楽しい

『たまちゃんチ』には今回二十人の定住予定者が選定されました。各ギルドからは三日交代でギルマスの腹心が来ています。(オッさんは特例)

 ティクサーも、まだ近いクノシーも人員教育の真っ只中で人手不足ですからね。冒険者一年目でかなり駆り出されているネア・マーカス十歳です。

 ドンさんによると今回定住予定の二十名には一定期間の迷宮探索義務があり、住居関連の整備管理についても当番的に割り振られるそうですからなかなかに厳しいんじゃないかと思われます。

 ルルドくんが語ることには「まぁ、残った家族三人十歳と九歳含むが一冬越せる住居斡旋してもらえたし、労役に携わる限りは寝床と食事は費用気にせずに済むし、探索行動には教育期間もあって名のある強い人たちに教えてもらえるのに費用がかからないんだ。儲けしかない」だそうです。

 イゾルデさんは有名そうですね。

「うまく稼げるようになったら優先的に住居斡旋や家族の呼び寄せができるんだ。春には家族を呼び寄せたいって思ってるから。あと、カデラさんに話を聞きたい」

「死霊から聞ける話っつーのは真に受け過ぎるなよ。死霊つーのは基本として情報の更新が難しい存在だからな。あと、見方によって『正しさ』は変わるからな」

 ドンさんがちょっと大きめの猪の首を落としながらルルドくんに忠告でした。

 わからないでもないです。

 死者は動かない時を生きて(?)いるし、死のその時の基準からなかなかに動けないものなのだそうです。

 生まれ変わって生きたとして、どこまで正しく生きているのかわからないと言っていたのを覚えているし、今まさに私は変化の中を生きているのか自問すべきなんだと思う。

「自分に都合よく聞いてちゃダメなの?」

「あ? そりゃーかまわないさ。その選択を自分が決めたっていう責任さえ持ってりゃな。「誰それが言ってた」つっても選んだのは自分なんだからさ」

「そうね。タチが悪い人はそう誘導していくものなのよね。気をつけるわ」

 ティカちゃんがなんでか私をチラ見しましたよ?

「騙してないよ!?」

 私、ティカちゃんを騙してなんかいないよ!?

「あ? わかってるわよ。ネアは騙される方でしょ。気になさいよね」

 え?

 待って。

 どういうこと?

「私、そんなに騙されてる?」

 うっそぉ。

 それはものすごくかなしいですよ。

「わかんないわよ。でも、ネア、けっこう大雑把でしょ。そういうところをいいように使われそうで心配かな。うちの店にもやたら穀物や食材に料理法まで提供しちゃうし。調理法はレシピ登録とかもできるからあとでハーブにも言っときなさいよ」

 やった。

 私だけじゃなかった!

 でもね。

「ティカちゃんもその家族の人も騙したりしないいいひとだと思っているよ。物資突っ込めばそれ以上の見返りがあるよね。ってハーブくんと言ってる感じ」

 これって信頼だよね。

「それ以上の見返りってなに!? なにを期待されてるの?」

 ぷるりとティカちゃんが身を震わせましたよ。

「え。材料を提供するだけで美味しい料理に化けるんだもん」

 お得だよね。

 弟君は「時短素晴らしい」と青空仰いでたし。

 弟君、大人の人に料理作業変わってもらうのは楽で時短ってよく言ってるんだよね。

 料理は嫌いじゃないっぽいけど満足するものをつくるには体力が足りないらしいです。うん。すっごくよくわかる案件ですね。

「明日もいるんだろう?」

 ルルドくんが唐突ですね。

「町の周辺伐採と迷宮探索で遊ぶんですよ」

「ま。四泊予定してるな」

 ドンさんが予定を言いますよ。伐採と迷宮探索が今回の領主様依頼なのです。王子様たちから少々解放なのです! なにせ、たまちゃんが王族禁止令出してますからね。弟王子悔しがってました。

 明日も迷宮探索です。

「遊びじゃないと思うわよ。ネア」

「秋祭りの為の食材見本確保と素材見本確保を頑張りたく思います。はい」

 まだ夕暮れも遠い頃に冒険者ギルドに戻り、弟君監修の夕食をして今までで一番寝心地のいい寝具で爆睡しました。

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