第322話 迷宮探索講座『死霊系迷宮』②
聖水で採取物に影響が出るケースもあるそうですが低ランク鉱物は問題ないらしいです。植物系はダメだそうです。ドンさんが補足をしていました。
まぁ、肉岩石なんかは聖水で誤作動起こすんじゃないかなと思うネア・マーカスですよ。聖水かぶった肉岩石から『溶けるチーズ』と鑑定(荷物袋)に言われる物をゲットです。
弟君に後で確認してもらおうと思います。
なんというか、安全を望めばイレギュラーなブツも獲れるわけですね。
「さっきのお肉?」
ティカちゃんがボーンスネークのドロップ『ゼラチン』という謎のぷにぷにを持ちながら聞いてきます。隙あらば食材素材を集めたい家族思いのティカちゃんですから、採取と狩りどちらがいいかと悩んでるんでしょうね。
「違うよー。溶けるチーズ」
黄色の塊ですよー。
手の温度で液化していってる?
なにかこれチーズとは違う名前で知っている気がしますね。
「姉さん、バターは溶けやすいよ。熱に弱いから」
あ。そうだ。バターだ。バター。
乳製品の一種だよね。
バター、チーズ、ヨーグルト。あと、生クリームも乳製品だったかしら?
つまり、深層階では牛とかの乳製品用家畜を飼育している?
「冷やして、荷物袋に入れようよ。姉さん」
あ。そうでした。冷やして袋に収納ですよ。
バターって言えばあったかいパンにのせるんですよね。使い方くらい知ってますよ。
「食品? チーズは食品よね? でもバター? 油みたい」
「パンを焼く時に練り込むと別物のようになるよ。砂糖と小麦粉を合わせてお菓子作りも幅が広がるし。オムレツに入れても美味しいよ」
ティカちゃんの疑問にすらすら弟くんが応えていますよ。あったかいパンにバターは美味しいですよね。
「パン生地でバターを包んでパンを焼くとすっかすかに薄くて食べやすいのにものすごく美味しくていくらでも食べられそうな……パンができる」
なにか言おうとしてパンで誤魔化した感じだね。
「うん、まぁ、ここにカロリーって概念があるかどうかもわかんないし。ただ、今までのパンと同じ感覚で食べて寛いでたら、なんというか、少々ふくよかになるかも」
しばらくの沈黙。
口を開いたのはイゾルデさんだった。
「ああ、なんかわかるぞ。成功して生活基準が上がって迷宮探索や訓練に割く時間より事務仕事が増えたのに食事を同じように摂った者の末路みたいな姿だな」
「ああ、ふくよかって、つまりデブか」
ドンさんが納得したようにこぼし、何人かが「あぁ、禁句化は正しいよな」と追従し、「本人が旨そうな肉になっちゃいかんよなぁ。だが、その体型が裕福さの信頼になることもあるから否定もできんな」とオッさんが締めました。
生き物は食べられなければ太りにくいですもんね。
希少性があれば、得るための対価は増えます。
食材も鉱物資材もギフトだってまだまだ希少素材です。同時に迷宮にとって人が入ったことで獲れる魔力、変質、経験もまた希少素材といえます。
「とりあえず、美味しいものが作れるのね」
ティカちゃんの言葉に弟君が「そうだよ」と返しながら頷いています。
荷物袋に収納した『溶けるチーズ』は『バター』に名前を変えました。エリアボス蛇が変更かけたようですね。
「ティカちゃんのそれも食材だよ。いろいろ使えるから楽しいよ」
弟君にこにこですね。
「じゃあ、骨を潰していくことにするわ。ゼラチンと魔核がドロップするからお小遣いにもなるしね」
あー『石礫』と『解毒』はギフトですからドロップ率は低いんですね。ティカちゃん、『浄化』使えませんでしたっけ? 知らないうちにいろいろ持ってそうではあるんですが、はて?
「ティカ。ゴーストには治癒系ギフトスキルも効果を上げやすいぞ」
イゾルデさんが助言です。指導係をしてるついででしょうか?
「ありがとうございます」
ティカちゃんすかさずお礼。
よっし。とばかりに拳を握って好戦的です。
「もう少し階層を進むなら怪我人が出る可能性がある。その状況になればおまえの魔力は温存が好ましくなる。今のうちに好きに暴れておけ」
え。
私もいますけど?
「ネアはおとなしく採集に勤しんでろ。ハーブは鑑定以外はでしゃばるな」
イゾルデさんがキツいです。
いいですよーだ。
予定通り採集三昧しますよーだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます