第319話 れっつ探索

「ところでゲルドガルドくん、心でも読めますか?」

「いや、ちょいちょい漏れてた。もふトロ賛美あたりから」

 ちょいちょい!?

 でも、でもですね。

「だって、もふはかわいいですし、鑑定持ちは羨ましいしずっこいと思うんです!」

「待とうか。まず、ネアのその生来の高魔力が俺らからすればズルいんだけどな。体力維持にも魔力行使にも力を使うと腹がすくから食う量足りてねぇんじゃないか。体力が足りないっつーんならさ」

 気持ちがだだ漏れだったらしいネア・マーカス十歳……独り言はたぶん、癖ですね!

 私、基本的に人と会話をする行為自体に苦手意識がありますからね。いつ、なにが人を不快にさせるか、悪意のトリガーになるのかわかりようもありませんから。

 まー。つまり。

「優しいなぁ」

 などと思うわけですよ。

「ありがとう。ゲルドガルドくん」

 気遣いが嬉しいですよね。

 同様の気遣いを他のお兄さんお姉さんもしてくれてたわけですが。

「いや、なんつーか、騎乗酔いで具合悪そうなの見てっと、なぁ?」

 見てると?

 なぁ、と他の人に促せば他のお兄さんお姉さんも苦笑いしてまぁな、って感じですよ。よくわからないですね。

「あー、なんつーかさ」

 歯切れ悪いですね。ゲルドガルドくん。

「まだ、チビなんだなって思ってさぁ」

 は?

 チビって言うなら弟君の方ですよね?

 なんで私見ながらみなさん「そうそう」って言い合っているんですか?

「私、ちゃんと冒険者ギルドも商業ギルドにも所属しているんですが?」

 おかしくありませんか? ねぇ!

「知ってるし、俺らも冒険者ギルドには所属しているよ」

 あ。まぁ、そうですね。警備隊から『むいてない』判断された人たちも冒険者ギルドに登録しているらしいですからね。

「えっとね、能力高くてもネアちゃんって年下なんだなぁって。あのね。たぶん、というか、わかってるんだけど、頼りないと思うけど、なにかしてあげれるんじゃないけど」

 お姉さんの一人が視線を合わせて語りかけてきてますね。うまく言語化できないなにかってありますよね。大丈夫。大人しく待ちますよ? ネア、年下ですけど、魂的にはお姉さんですからね。

「心配だし、守りたいって思えるの」

 へ?

「間違いなく戦闘では頼りにしちまうんだけどさ」

「安全な旅程と満足量の食事、快適睡眠後だから気がつけたんだと思う」

「弱さもある年下の女の子なんだなって」

 騎乗酔いによるぎゃっぷ萌えというヤツですか。みなさん? そんなにちょろくて大丈夫ですか?

「あ、ゲルドガルドじゃ長いし、ルルドって呼んでくれればいいぞ」

「あ! おれも!」

「わたしはね」

 とゲルドガルド君から続いて短略愛称を紹介されまくったんですが、ええ。なんというか。

「覚えられない」

 ですよね。ぽかんともらした私の視界の端で『だろうな』って顔をして頷いている弟君がいましたよ。

 彼らはなにがしたくて友好的に振る舞ってくるんですか?

 そんな寸劇を挟んで全体的にちょっと浮かれた印象での『魂極邂逅』探索再開です。

 さっきまでの坑道と同じような坑道が前後に続いています。片方ではありません。前後です。

 ここはすこしひろくとられた坑道の一部、壁に一応『休憩処』と木製の板で打ち付けられています。道の途中なので長時間寛ぐには適してませんね。

「山登り途中にあるベンチみたい」

 弟君が呟いてますが山登りの途中になんでベンチがあるんですか? 人がのんびり過ごす広場じゃないんですよ。山道は。

 何人かが「山道にベンチ?」「いきなりベンチがあんのは迷宮だろ?」とか言い合ってます。迷宮ならありなんですね。

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