第318話 魂極邂逅をゆく(集団で

 暴れ蔓草討伐を完了させ、クロちゃんの背中で再び酔ったネア・マーカス十歳いっぱしの冒険者ですよ。騎乗酔いしてもいっぱしの冒険者ですとも。年上たぶん段階下のお兄さんお姉さんに甲斐甲斐しくお世話されてるんですがなんでですか?

 あ、ティカちゃんとイゾルデさんがなまぬるく……ドンさんもかぁあああ!

 弟君は『帰還の銅鈴』を見ていますね。鑑定中でしょうか?

「パーティごとで鈴一個使用できるみたいだね」

 弟君のその言葉に「ふぅん」という感じの私と介護してくれているお兄さんお姉さん達。ティカちゃんも仲間らしくこてんと頭を倒していますね。「それがどうしたの?」って感じですよ。

「なるほどな」っと納得したふうに振る舞っているのはドンさん、イゾルデさん、鍛治ギルドマスターの三人ですね。

「あ! はじめての時以外試練がないなら『帰還の銅鈴』の数! それにこういう便利道具って使い捨てだ」

 ゲルドガルド君が気がついたとばかりに口にしてくれましたよ。

 そういえば『陣をはじめて使う時』って言ってましたね。他にも陣はあるみたいですが。

「一回使えば砕けるみたいだよ」

 弟君の言葉にそれぞれが自分の手の中の『帰還の銅鈴』を握っています。

 帰るための陣を見つけられなければ帰る度に『帰還の銅鈴』を使わないといけないわけで。先の魔物が強ければ次の『帰還の銅鈴』は手に入らない。すると入り口で燻ることになるんですよね。困る奴です。

 次の陣の要求する試練が乗り越えられるものかどうかわからないということもあります。慎重になりますよね。

「パーティごとか。『帰還の銅鈴』を使用した奴が報酬割合を多めにすればいいな。試練は個人といっても協力行為も有りだし『共に強くなる』が目的である以上急激な難易度変化はないだろう」

「試練は個人対応らしいしな!」

 イゾルデさんが言ってドンさんがフォローですね。

 試練の内容は実際個々で違い、イゾルデさんやドンさんのように戦闘だったり、私のように特殊討伐(タテマエ)だったり、指定ドロップ品の納入(集め方問わず)だったりするわけですよね。

「ま、ギルドの方にはソロは危ないと報告かねぇ」

 先に進むつもりがなければ売ればそれなりに高値になりそうですね。『帰還の銅鈴』

「つーか、暴れ蔓草十体討伐で『帰還の銅鈴』他の連中に比べて割に合わないな」

 鍛治ギルドマスターに同情されましたよ。

 なんというか、『帰還の銅鈴』『流玄監獄』付きって感じなので割に合わないと言い切るべきかどうかは非常に悩ましいですね。

 ついでに言えば『流玄監獄』に『遠浅の国』もついてきてますよね?

 欲しかったかと問われるならば、要らない一択なんですけどね。

 それに、たぶん迷宮陣の試練。かなり忖度案件なので心配していないですね。

 陣を抜けた先は一応、安全区画でした。

 足元に移動陣は存在しません。一方通行ですね。つまり、少し広くとられていた場所が帰還陣の出先である可能性があるようですね。

 えー、振り返ったら怪我人が倒れてくるとか嫌なんですけどー?

 今回、移住予定者二十名はドンさん、イゾルデさん、鍛治ギルドマスターの下に六人から七人でパーティもどきを組んでいるんですよね。パーティ上限が六人なので実際には五人パーティ四つですね。そこに出入りしつつ護衛するようです。各自迷宮に対する目的が違うのであわせて調整しながらパーティを変更したりもするそうです。で、ティカちゃんは私と弟君、そして従魔パーティに参加です。

「最年少パーティが、いちばんりふじん」

 ゲルドガルド君がそんなこと言うんですよ!

 理不尽!

 なにが理不尽だと言うんですか。

 トカゲ氏の火力ですか?

 もふトロちゃんですか? むっちゃもふもふですよ? すごくかわいい。

 それとも弟君の鑑定でしょうか? アレ、ずっるいですよね?

 あ。それともティカちゃんの治癒スキルですか? 最近経験を積んで素早く効率的に治せるようになってきたと言ってましたからね。

「いや、そうじゃなくて。ネアの突破力が理不尽に先に進ませるから危ないと思うんだ」

「でも、ネアの基礎体力はまだハーブ君以下ですよ?」

 残念ながら事実です。

「その場の突破力があったとしても持久力が足りていなければ先に進めないのです」

 迷宮は甘くはありませんよ。……忖度はしてきますが。

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