第317話 確認したから帰る
それなりに魔力の回復を得た迷宮管理者ネアです。
まだ檻の中ですよ。ええ。
魔力循環に必要な駒が足りないことを受け入れている……つまり自滅希望している迷宮ということですネ。ムカつきます。
「迷宮維持要員が必要ですよね。迷宮探索者が必要なわけですが、私としては『遠浅の国』を維持した上でが希望ですのでアドレンス国の四迷宮から余剰魔力配分は不本意となるんですよね」
確かに『天水峡連』などは人を入れないなりに魔力循環からの増産に成功していますが『流玄監獄』でそれができるかどうかは別です。なぜなら影響域に人の生活圏のある『天水峡連』と人口お一人様国家(国家と言っていいんでしょうかね?)の『流玄監獄』では全然違うのですよね。
と、いう訳です。よろしいでしょう。
ね。
「ダンコアちゃんいますか?」
私は私の内側に向けての声をおくります。
『うん。迷宮の魔力循環をあげて安定させた場所にすればいいのね?』
空に手を伸ばす幼女は今の私、『ネア』と同じ外見を持っています。ただし、彼女は正しく異世界の存在です。私にとっての前の居場所で私と『魂魄融合契約』を結んだ力ある存在、あまり力をふるってもらうと『私』との結び付きも強くなり、私が『私』から離れるべき時がきても離れることができなくなる危険があるんですよね。『私』もダンコアちゃんももの凄く迷宮特化で強い子なので相似性共鳴も起こし易いことを情報として教えてくれてます。
なにをするのかなと思いながら頷けば、幼女はにこにこです。
『周囲の迷宮核未満を集めて環境を整えてね、保存された住人に魔核主体の肉体を与え活動してもらうの。人は流れてくるらしいから、迷宮に潜る術をおぼえてもらえばいいだけね』
ほうほう。ずっと私の内側で様子をうかがっていたのでしょう。詳細説明無用で軽い方針説明ですよ。エグいこと言ってるような気がしないでもないですが、できるんなら問題ないでしょう。採用で。
『余剰魔力は、四迷宮に上納だね』
ダンコアちゃんがそう言ってから『流玄監獄』氏に視線を合わせます。
『運営、お願いします』
お願いという名の命令ですね。わかります。
パキパキ砕ける迷宮核未満たちが『流玄監獄』に吸い込まれていきます。
『細かい制御は不得意でごめんなさい』
「ダンコアちゃんだから助かるの。普段もそれなりに補佐してくれてるよね。ありがとう。お礼は言いたかったんだ」
普段は天職の声さんが近いからね。
『だって、ずっと一緒だわ』
ダンコアちゃんがそう言ってふわんと空気に溶け消えますよ。あんまり表に出ていると『私』との融化が進むゆえの配慮でしょう。
なんにせよ。いるのはわかっていても言葉を交わせたのは私が表に出てから五年ぶりです。ちょっぴり懐かしくて困ってしまいますね。
「支配迷宮の意志達は確実に『私』の味方と考えていいのかしら? それとも潜在的に敵な可能性があるのかしら?」
『支配が確立している迷宮が管理者を裏切ることはありませんよ』
ん。
ん?
つまり迷宮支配はいいいえの選択肢をポップしてくる迷宮たちは基本的には味方ってこと?
天職の声さんは私じゃなくて『私』の味方っぽいけど。
『もちろん、自らを支配出来ぬ管理者に信を置くことはありませんが』
少しだけ外見が若返った『流玄監獄』氏が一応、とばかりに付け足しましたよ。
安定生活維持のためには管理用の魔力増強は必須項目ですね。
「目標は春までに『月砂翠宮』をなんとかすることです。ですから、『流玄監獄』の役目は魔力を与えないことです。防壁になる魔力が足りないのなら随時投入しますので申請してください」
よろしくしていきましょう!
では、帰ります。
「あ、ダンコアちゃんのことは秘匿でよろしく」
さ、たまちゃんとこ帰ろ。
では、檻から出して頂けますか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます