第315話 崖下りはハード

 羚羊騎乗で酔ったネア・マーカスです。

 急勾配というか崖を駆け下りたせいな気もします。けもの道も何も関係ない区画を葛と一緒に暴れ蔓草も討伐しましたよ。迷宮じゃないのでドロップ品はないですし、解体回収もしてられる環境ではな……いんですが、エリアボス蛇がずるずると素材回収してくれていますよ。ありがとう。エリアボス蛇。迷宮の外ですが、クロちゃんに乗っていることで隠蔽移動になっているそうです。外を歩く人がいても見つからない仕様になっているそうです。

 迷宮の魔物も地表の魔物も本来なら暴れ蔓草を率先して討伐する事はないんですが、自然発生したイレギュラーとして迷宮への魔力返還率はなかなかにお得だそうです。暴れ蔓草には蔓植物を魔物化させ操る特殊能力もありますからね。葛が魔物化するとちょっと大変ではないかと思うんですよね。鉄荊も攻撃力高いですけれど、同じくらい利用価値も有りますからね。葛と違って。その関係でたまちゃんがジェラシー燃やしちゃっているのはかわいいですよね。

 とりあえず『遠浅の国』に近付くには崖を駆け下りてしまう必要があったんですよ。おかげで吐きそうに気持ち悪いです。いっそ吐ければ楽かもしれませんがこれは気持ち悪いで終わるやつです。クロちゃんからおりて深呼吸して魔力回復の飴を口に頬張ります。気分マシになぁれ。と念じながら目を閉じて十数えて呼吸を整えます。

 近くから水の音。ばさばさと落ちた蔓と枝が風に揺さぶられる音。足元はちょっとごろごろがさがさした崩れやすい小石ですね。ここで転んだらものすごく痛そうです。


【塩水に棲む魔物の死骸ですね。特定種以外相性が悪かったかと。石に細かな凹凸が多いので怪我をすると塞がりにくい傷ができます】


 あ、はい。気をつけて歩きます。

 葛がこの辺り生えてないんですよね。葛だけじゃなくて何も生えてないんですが。見晴らしはいいですね。崖から川まで遮るものが何もないですよ。

 でも、なにかピリピリしますね。


【あの流れとこの砂の地には迷宮核のなりそこないが複数存在しています。迷宮として生じる前の段階で有り、魔力を周囲から吸収し、成長の階段を登ろうとしています。ただ、お互いに喰い合いしてるがために迷宮へと至ることはありません】


 お互い喰い合い……。それはすっごく不毛では?


【時折り、迷宮核未満の魔核を拾いに来る者もおりますが、見つけられずに喰われることが一般的です】


 嫌な一般ですね。

『流玄監獄』はそんな中で迷宮を成立させたすごい迷宮?


【いいえ。この辺りに散らばる魔核は元は『流玄監獄』の収集した迷宮としての力で有り、なんらかの制約で反発しあうがゆえに吸収もできず、荒廃した砂地を構築しているようです】


 あれ? 元は強めの迷宮?

 じゃくじゃくと進むと川が音をたてて流れています。流れは幅広くも勢いよく時々、砂を削っていきますよ。砂を繋ぎとめるものがなにもないんですね。そのせいで川の流れがゆらゆらと自由です。植物が砂を抱きとめればなにか違うかもしれないですね。

 流れの向こうに見える中洲はかすかに緑の気配があるようです。

 まだ、迷宮支配に関するポップはでないのでもう少し近づく必要があるようですね。

 距離を確認しようと思ったら水柱がたちました。

 ……肉食水棲生物がぁあああ!!

『ヌシー、運ぶからのーれー』

 誘いかけてきましたよ。天水ちゃんとこの大顎くんでしょうか?

『個体名白の大顎ベータ四号。ヌシをのーせーるー』

 天水ちゃんのネーミングセンス?

 まぁ、大顎四号ちゃんが中洲へ運んでくれるそうですよ。クロちゃんが何故か砂を蹴り倒してますね。

 そして、川の中ほどで出ました。


 迷宮を支配しますか?

 はい

 いいえ


 いつものポップです。

 目的は魔力向上です。

 はい。をタップですよ!

 支配後即リリース予定ですとも!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る