第314話 迷宮クエスト(タテマエ
今、私ネア・マーカスは黒の羚羊、つまりクロちゃんに乗って迷宮クエスト『暴れ蔓草討伐十体』に挑戦中です。
ゴーストやボーンアニマルに『清浄』は有効だった関係でさくっとフロア移動の転移陣まで着いたんですよ。
鉄鉱石採掘にティクサーから朝イチでやってきた鍛治ギルドのギルドマスターのおっさんと移住予定者が一緒に迷宮探索ですよ。
『清浄』と『治癒』、『浄化』でさくさく攻略体験です。
移動陣の手前にそれなりに広い戦闘用の広場。
そして、そこにはうさたまちゃんが待っていました。
迷宮主がお気楽にお出迎えってどうなんでしょうか?
『よく来たニンゲン。ともに強くなろう。とりあえずリクエストに応えよう』
リクエスト?
『陣をはじめて使う時、なんらかの試練を受けてもらう。試練は個人個人で受けるがいい!』
解説を自力で行う迷宮主。あぶないから伝達役つくらないのかな?
「お、つまり試練を受けないと転移陣の使用許可がないってことか? たまちゃん様」
ドンさんです。
『その通りだ。ニンゲン。たまちゃんは戦闘パターンの収集と成長のための魔力、どちらも欲しているのだ。あと様は語感悪いからいらん。たまちゃんはたまちゃんと呼ぶがイイ』
「鉄の採掘したいんだが?」
鍛治ギルドマスターマイペース。
『うむ。暴れ蔓草よりたまちゃんを選ぶのは正しいと示そう』
「品質はこのランク、がいいんだが?」
見本を提示する鍛治ギルドマスター、少し図々しくありませんか?
『……。ニンゲン。たまちゃんはまだ成長過程である。その質の鉄が欲しくば、相応の魔核を納めよ』
たまちゃん、賄賂要求!?
なに? この小芝居。
魔核(おそらく国外迷宮産)と見本の鉄を鍛治ギルドマスターはたまちゃんにむけて捧げます。
『魔核分採掘ポイントをつくってやろう。うまく見つけるがいい』
「なるほど、リクエスト」
イゾルデさんが頷き、一歩前に。
「強き敵を!」
『リクエストに応え、試練を。ニンゲンイゾルデはたまちゃんが強くなった後でなければ満足度のある闘いは望めんだろうと宣言しておく』
露骨にガッカリ表情のイゾルデさんである。
一歩前に出たことで試練を受ける扱いになったのか戦闘用の広場がぽわんと発光し、一体の魔物が現れた。
少し浮遊しているところを見るとゴーストらしい。
「師範! ……おい、仔兎」
『たまちゃんはたまちゃんだ。なんだ。ニンゲンイゾルデ』
「師範が死んだのは他国の迷宮だぞ」
『なんだ。ただの記録からの再現ゴーストだ。ふん。よその迷宮にあるならたまちゃん、強くなれば呼び寄せが可能になるぞ?』
いや、たまちゃん、イゾルデさんが師範さんと戦いたいかどうかは別では?
『たまちゃんとの友好関係がなければ優遇措置もないがな』
気合い一閃、銀の剣(魔除けっぽい)でゴーストはあっさりでした。
たまちゃんの垂れ耳がふるふるしてますね。
『こんな感じに試練を完了することで移動陣は使えるようになる。最初のご褒美は『帰還の銅鈴』。たまちゃん、鉄の採掘スポットつくりに行くから。ニンゲンは試練を受けるがいい!』
「帰還の銅鈴」
『転移陣は一方通行だからな。試練は毎回だ!』
そう言い捨てて小芝居を終えたたまちゃんは移動陣に消えていったので各自試練に挑んだわけですよ。
イゾルデさんは先に行きたそうでしたが、ドンさんにとめられてました。
試練内容はボーンアニマルの魔核十個とか、ティクサーにたどり着くまでに死んだ家族のゴーストとかで弱いんですが心にくる仕様もありましたよ。ドンさんとイゾルデさんが「リクエスト」と呟いていましたが意味は真逆っぽいです。イメージですが。
で、私の試練は『暴れ蔓草討伐十体』で出てきたのは黒の羚羊のクロちゃんですね。
まわりから「規格外! 納得」という反応をもらったのが釈然としませんよ。ね。クロちゃん。
これで『遠浅の国』の迷宮を見に行けます。
……。
クロちゃんはかわいいのですが、酔う。
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