第291話 お使い依頼ですよ
秋の期に向けていろんな下準備作業の依頼が冒険者ギルドにならぶので選ぶのが大変になっているネア・マーカスです。人気業種はとりあえずの軽作業系で特に得意な分野がなくてもできる作業なので人気なんですよね。次が少し信用度の必要なお仕事。依頼主から条件が出ているけれど、お賃金はちょっと割高めとかです。
私は指名で『洗浄』と『冷却』『除草』関係の依頼が入りますからね。仕事には困っていない。そのはずだったんですけどね。
「あ。実はいつもと違う依頼を受けて欲しいのだけど、いいかしら?」
受付でお願い。と頭を下げられましたよ。まずは内容次第です。
町の清掃は低年齢でギルドには登録していない子供達の奉仕活動(領主権限で食事が提供される)の監督依頼が十四歳以上の登録者による監督で行われるそうです。除草も同様だそうです。ちびっ子達も仕事を覚えていくんですね。見込みがありそうだったり、衰弱具合によっては教会の施療院や追加で寝泊まりできるようになった職員寮に泊めてもらえるそうです。私がやると主張すると彼らが野垂れ死ぬ確率が上がりますもんね。理解しました。
頼まれた仕事は運搬でした。
商業ギルドで各ギルドへの手紙を受け取り、配達するわけです。商業ギルドから木工ギルドへ移動式屋台の発注ですね。
基本的なパターンは四種類。まずは見本の作成。飲食系屋台の場合、魔道具を錬金術師ギルドか魔道具ギルドが提供する器具を設置することも想定するようにの指示。魔道具を置くスペースの型枠を錬金術師、魔道具両ギルドに提出。(運搬は私)……あれ? これ私運搬だけでいいんだよね?
商業ギルドの事務員のお兄さんに資材があるようなら販売してくださいね。とは言われたけど。
木工ギルドの人は他所から帰ってきた人達だそうですよ。
「こんにちはー。商業ギルドから来ました。受付はどちらでしょうか?」
「お。かわいいお使いだな。シルビア。商業ギルドからのお客さんだ。対応頼む」
木材を整理していたおじさんが引き継ぎしてくれました。
「はいはーい。こっちですよー」
案内されたのは屏風のような仕切りの向こうで低めの卓が布を敷いたすのこの上に置かれた場所でした。
「受付けのシルビアです。それでご用は?」
「はい、商業ギルドからの要請で参りました。ネア・マーカスです。用件はこちらの依頼書になります」
書類の提出にあわせて身分証である商業ギルドのカードを軽く添える。身元大事。
「確認させていただきますね」
シルビアさんはサッとギルドカードを確認し、そちらは「ありがとうございます」という言葉と共にこちらに返却です。
「屋台! そっか。基本的な屋台の数が足りてないのね。生活必需品以外の作成は嬉しいけど人手が足りるか、かな。ちょっと待ってね」
私に軽く微笑むと入り口付近にむけて息を吸い込んで。
「親方! ちょっと!」
ぉおお。おっきい声ですね。
「うっセーぞ。シルビア」
さっきの木材整理していたおじさんがのっそりと来ました。ギルドマスターさんでした。
「屋台作成依頼よ」
「……屋台」
あれー。反応渋いですよ。
聞いていると家を建てる木材と生活雑貨に使う木材の間になる屋台作成資材は在庫少なめらしいです。雑貨を作れる見習いさんは増えてきているらしいので引き受けたいが資材問題があるらしいですよ。木材なら売れますよ?
ある意味、いくらでも。
木工ギルドは現在のところ半分くらいは下請けギルドだそうです。家を建てたり道路整備とかは土建ギルドになるそうです。木材の扱いの基礎を身につけてから土建ギルドに移動したり、木工の芸術性の沼に沈んだりという感じらしいです。土建ギルドは結構荒っぽい人も多いらしいので合わずに木工ギルドなどの下請けギルドに流れてくる人もいるそうですよ。ひたすらタイル作りたい人とかは陶工ギルドだそうです。
調理用魔道具を設置できるサイズを計算してもらい、だいたいこのぐらいという見本模型を木片で作ってもらいます。このサイズよりはみださないが条件ですね。
サイズ見本を貰ったら次は魔道具ギルドと錬金術師ギルドですよ。
木材は適当量販売致しましたよ。
店先に出すな。裏で出せと叱られました。(加工に時間はかかるそうです)
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