第292話 人手が足りない

 ということで魔道具ギルドでご挨拶を終えたネア・マーカスです。ちなみに錬金術師ギルドマスターしているルチルさんもいたのでこれ幸いと依頼書渡しました。

 量産できる作業者が(本人達以外)いないらしく、お二人で「死ねる」とテーブルに突っ伏しおられました。

「一個創ったら数作んの楽な錬金術師ギルドに売上げあげちゃうしかないわね」

「ふざけんじゃないわよ。ちんたら小物ばかり作ってるの飽きたんでしょ。中型の修練にいいんじゃないのぉ」

 お姉さんギルドマスターとルチルさんの争い勃発ですよ。実は来てから数回これの繰り返しです。煮詰まってますね。

 錬金術師と魔道具師はどうしても一定以上の学習教養資質が必須になるので気軽に見習いが入らないそうです。

「学ぶのに資金も多めに必要なのよ」

「成功すれば元は取れるんだけどね」

「うまく立ち回れれば、ね」

 言い合ってため息ですね。ただ難しいことを要求されているわけではないそうです。ただ純粋に手が足りないみたいですよ。力にはなれないんですけどね。

「商業ギルドにも、役所にも冒険者ギルドにも求人は出してるんだけどねぇ」

「うまくいかないわぁ」

「たぶん、クノシーで止まってるわね。クノシーめ!」

 魔道具ギルドと錬金術師ギルドのギルドマスターが揃ってクノシーをこき下ろしています。

 ぇえ。って困っちゃいますよね。

「そうね。ネアちゃん、ちょっとハーブくん貸してくんないかしら?」

 ルチルさん、なに言い出しているんですか。弟くんはまだ七つですよ!?

「は? アンタだけ楽になるつもり!?」

 なんで、揉めてんでしょうね。弟君は七つですし、人手が足りないのの足しになるとは思えません。……七つですと?

 ちょっとなんとかできちゃうのかもって過ぎっちゃいました。でも、まだ七つですよ。間違いなく。

「使える伝手は使わないと、過労死待ったなしよ! それは回避しなきゃ!」

 思ったより切実って奴ですね。

「そうだけどぉ!」

「クノシーで物流が結構止まるのよねぇ。『蒼鱗樹海』も『ティクサー薬草園』も金属素材ほとんど出ない物だから。それ以外の素材から金属の代用品を錬金するのすっごい素材が減っていくのよね」

「わかる。その上でギルドマスターは代行を置かずに三日以上の遠征禁止とか迷宮にも潜れやしない。他の迷宮で集めた素材が尽きそうで嫌だー。荷物袋と倉庫は八割埋まっててほーしーいー。あー。薬師ギルドはジジマスと何人かの若手がいて羨まー」

 八割は多くない?

「埋める前に新しい荷物袋なり収納箱なりを作りなさいよ。容量大きい奴ネ」

 そんな雑談を聞きつつとりあえず木工ギルドで預かった『魔道具及び錬金術具のサイズ予定模型』を二人に提出です。

「見積もりお願いします!」

「昼食後にね」と外に出されたので、私は薬草園で芋畑を見てるであろう弟君のところに行きますよ。

 そこであの鳥頭少年を発見ですよ。なんで一緒にいるんですか? 

「あ、ネア姉さん」

「ハーブくん、お昼からは引きずり回しますよ」

 弟君は笑って頷きます。

「ひっでーの」

 やっぱり生意気ですよね。この鳥頭。

「こんにちは。今日は教会の奉仕活動じゃないんですね」

 さらっと見る限り鳥の特徴が出ているのは頭部だけのようです。腕が翼なハール族とは違いますね。種族としてはなんていうか打たれ強そうな見た目? キウさん達は実際は頑丈そうでしたがイメージ繊細ですからね。イメージ。

「奉仕活動は独占すんもんじゃねぇことくらい知ってる」

「雑用付き合うなら、お昼くらい提供しますよ? お、ハーブくん監修のお弁当なので美味しいですよ」

 危ない。弟君って言っちゃうとこだったよ。

 あー。

「それとも嘴だとパンとか食べにくいですか?」

 食品の食べやすい形状とかあるのかもしれませんねぇ。少々配慮が足りてませんでしたか。

「普通に食えるよ!」

 それはよかったですね。うんうん。

「で、文字読めます? そうするとすごく助かるんですが?」

 あ。お弁当はこれです。じゃーん。弟君特性りんごの砂糖煮と干しりんごをだいすかっとしてパン生地に練り込んだリンゴパンにウサギの塩焼きを挟んである奴ですよ!

 美味しいけれど少々魔力控えめ料理ですよ。

「す、少しくらいなら読める」

 おお、それはたぶん助かります。

 ふふふ。鳥頭くんをどっちかのギルドでお片付けとかの雑用要員として送り込んじゃいましょう。文字読めるならお使い買い物とか用事も頼めるでしょうしね。

 なによりも弟君よりお兄さんですし。

「それはなによりです。どうぞ。美味しいですよ」

 この鳥頭兄弟をルチルさんが知っていて、体調を崩していたお兄さん達も助手として引き込むまでに半日もかかりませんでしたよ。鳥頭兄弟、錬金術師ギルドと魔道具ギルドの掛け持ち雑用係だそうです。(健康になったらこき使うそうですよ)

 鳥頭(兄弟の中では末っ子だった)少年に謝罪とありがとうをもらいました。

 いや、なんていうか、お礼言われることをしたつもりはありませんでしたよ?

 あ!

 ルチルさん達から見積もり出してもらってない!

 商業ギルドの事務員のお兄さんは笑って、「明日落ち着いた頃に」と今日の成果を受け取ってくれましたよ。

「物資不足ですか。金属素材が不足してますからね」

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