第284話 魂極邂逅ちゃんへ聞く

 魂極邂逅ちゃんに迷宮存在を明かした理由を聞いてみたネアです。

 不思議そうに『まだ開放してませんよ』とこたえが返ってきました。

『迷宮に入られると呪っちゃいますし。あぶないですからね。探しちゃダメですよと警告はしましたよ?』

 警告したんだ。

 ちょっとびっくり。

『アドレンスという名を持つ血脈の匂いは記憶してあります。それ以外の血を敵対視する必要は有りませんし、近づいて来なければ不快ではない旨を屍女に伝えても良いと伝えておいただけですよ』

 つまり刃をむけなければ安全な接触だそうです。ただし、対話には魔力が必要。そして攻撃されたなら総攻撃は準備してたそうです。コワイ!

『いつまでも『蒼鱗樹海』からの魔力にのみ頼るのも不安ですし。もちろん、『蒼鱗樹海』が表層管理しているので入り口までの道が通らないことは存じてますよ』

 ありがたいことです。とやんわり饒舌な『魂極邂逅』ちゃん。 

 あー、そっか。『蒼鱗樹海』の表面影響が強いから山道までをまず『蒼鱗樹海』で抜けて、道を作らなきゃいけないんだ。地表がそのタイミングで刈られてないなら、葛の成長は鈍化しても無くなりはしないし。

『冬までにもう少し入り口近くに拠点を置いてもらう必要がありますからね』

 確かに。

 現在山側にある人の住む場所はサティアさんの住む工房の村が一番山に近いです。人里がないんですよね。環境整備には人手も必要ですが、手が足りてないんですよね。

 クノシーからティクサーまでも三日の距離です。クノシーから『魂極邂逅』までももとの道が使えたとして四日は進まなければいけないはずです。ところどころ山道険しめでしたからね。岩山の国から王都コースの山道も。

『場所によっては渡し橋破損してますし、王都からの街道も葛の氾濫に負けて老人方は王都に避難なさっているはずですね』

 あれ?

 そんなことになってたの?

『一応の宿場町の為、最低限の整備に人手は割かれているようですが宿場町の機能はほぼありませんね』

 いや、たまちゃん、『イバラでおおっちゃいました』って敵対行動扱いされるんじゃあ?

 自由行動推奨だからなぁ。

『山岳地帯は冬の期は往来が厳しくなってますし、冬の期に安定食糧を確保し得る迷宮への入り口を伝えておきたくもありますし』

 危険があることは迷宮であるというだけで十分だと『魂極邂逅』ちゃんは主張します。

 警告も含めて屍女を配置したそうです。

 毒と呪いの迷宮であれど、人を無闇に傷つける気はないというメッセージだと。

 伝わるの?

『伝わる、でしょうね。入り口は不明なれど友好的迷宮として。呪いについては王国側の管理不足ですから当然の対応です』

 いつのまにか現れた園長が補足してくれる。足元には無言でエリアボス蛇が戯れている。

 ふぅん。

『人は試練と加護を喜ぶモノですしね』

 あ。

「そういう信仰があるっぽいね。神様の試練」

 尼僧長様の学習会では覚えがなくてびっくりしたんだ。

『迷宮が失われた状態で神の試練を受けるにも値しない土地だなんて土地にいる者に伝えることはできませんからね』

 あー、だから神の試練としての迷宮と祝福を与える信仰対象になる迷宮の教えを今からの子供達に教えるんだ。

『アルジ、エリアボス蛇ノ神様』

 戯れてくるエリアボス蛇はかわいいけど、微妙な発言では!?

「私は、あくまでも人だよ。神様じゃない」

『あら、主人様。私どもにとっては仕えるべき尊きお方、神でなくともそれに近しいのですよ。あまり否定されないでくださると嬉しゅうございますわ』

 でもさ。私は人でいたい。

 そりゃあ『私』がどうなのかはわからないけれど。



『私達のヌシ様こそがふさわしいのですよね』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る