第281話 お勉強タイム

 三日間に渡って同じように迷宮内を焼き払いましたネア・マーカスです。

 そんなに遠くまでは行かなかったんですよね。継続手入れが結局間に合わないとかで。

 私を頭数に入れない状態で警備隊員さん達と冒険者さん達で葛が多すぎない環境を維持できるのは現状三フロア目までがギリギリらしいです。隊長さんがにこやかに「扱かねばならないですね」と呟いて隊員さん達が震えあがっていましたよ。

 私が好きに『蒼鱗樹海』を楽しむのは十日に一度くらいを希望されました。

 と、言うわけでお皿に氷を出して室温を下げつつ、学都で購入した教本を読むことにします。弟くんもマオちゃんもそれぞれに本を読んでいます。(マオちゃんは図鑑見てます)つまり、自宅の自室です。

 粘る水を張った板に棒を使って本の内容を写す。マコモお母さんが用意してくれた教材です。

 弟くんははじめて見た時、「まるでタブレットとタッチペン」とか言ってました。すぐ、「黒板とチョークっぽいか」となんか評価訂正していました。ちなみに関係のないものを書いていると記録用魔核を確認したマコモお母さんにもれなくバレます。別に叱られたりはしませんよ。でももうやりません。

「ネア、ティカちゃんがきてくれたわよ」

 マコモお母さんがにこにこと子供部屋に通してくれます。

「お邪魔します」

「マコモお母さんありがとう! ティカちゃん! こっちこっち。学都の教科書とか、講座案内とかあるよ。どれからみる?」

「文字の練習からよ」

 ピシリと宣言されました。

「名前くらいは書けるわよ。でも、そのくらいじゃ受けたいと思える講座がどれかもわからないじゃない」

 だから、まず読んでみたらいいのでは?

「名前と、所属国。所属都市くらいかけた方がいいもんね。流石」

「そ、そうでしょ。それに最低限書けないとまわりに字が汚くて読めないとか囃されるんでしょ。ちょっと嫌かなって」

 弟くんがティカちゃんを後押ししていますね。字が汚いと言うより年齢で絡まれることもありますよ。理不尽な人は多めでしょう。大きな街ですからね。

「できないわからないからできるようにわかるように学びに来てるのに妙な絡み方されるのは鬱陶しいですね」

 アレほんとーにわけわかんなくって鬱陶しい。

「んー、異物だと感じるから排斥、見えなくしちゃえって考えもあると思うよ。もしくは自分に、……わかるものに変えてしまおうとしたりかなぁ」

 弟くんがたぶん、難しそうな言い回しを使おうとしてから子供向きに言いかえましたね。たぶん。

 あと、私の認識に問題があるとでも言いたいのかな?

「学校には学びにきてるものですよね?」

 学問的なことはともかく、学びにきてるに決まってるのに。

「楽しくないのに来ていたり、親から言われた人脈作りの為だったりすると『できていてあたり前』の基準も違うと思うよ。はい。ティカちゃんにティカちゃんが書くべき単語の見本書いてあげて」

 差し出される練習用ボード。

 そう、弟くん。名前も国の名前も書けるには書けるんですが、ものすっごく下手くそなので特訓中なんですよ。

 署名なんて用意された枠内に書かなきゃいけませんからね。

 だから、私が見本を書きますよ。


『ティルケ・ナーフ

 アドレンス王国ティクサー教会』


「あ。ティカちゃん、ティクサーの教会で所属印貰ってるんですよね?」

「大丈夫よ。ちゃんと帰ってきた時に登録してもらっているわ」

 じゃあ、ティクサーのティルケちゃんで問題ないわけですね。


『冒険者ギルドティクサー支部所属』


 あと、来訪目的。


『学都において学習するため』


 ってところかな。

 お見本書けました。

「ありがと。ネア」

 とりあえず納得できるまで練習したあとに一緒に講座案内の冊子を見ようと提案するぞ!

 今からならいろいろ予習もできると思うんだよね。

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