第279話 燃やすのは『蒼鱗樹海』

 階層足りてない問題を園長にふってみる迷宮管理者ネアです。

『段階を踏み、迷宮と友好的な関係を築いておきたいのが人の意志です。一部支配してしまいたい勢はいますが、たとえ、王族が迷宮主になったとしてもその時の主義性質の迷宮となるだけで数代おくことなく在りようの変貌を求めるものです。派閥の数だけ主義主張が有り、迷宮主となればそれは人であり続ける事はできないのです。ですから人は迷宮を『変わらぬ神の意志の体現』としておそれすがります。おおいなる恩恵は確かに存在するのですから』

 あー、環境整備かぁ。

 教会が祀っているのってなんだろうと思ってたけど、もしかして迷宮なわけ?

『そうです。生まれたばかりの迷宮はまだ経験が浅く初期に熟練者が調査した場合、新人が入れる難易度をつくってくれないことがあるのです。迷宮に魔力は必要です。しかし、魔力を持つ人は低魔力から強くなって魔力を高めていくわけで、そのサイクルが存在します。寿命というものですね。人を育てることのできる迷宮こそが人には必要で、迷宮自身も育つには安定した強者、熟練者を育てられる環境が必要なのです。ご理解なさっていたのでは?』

 ううん、わかってたつもりだけど、なんていうか、あれだ。忖度迷宮じゃよくわからないってことがわかった感じ?

『石膏瓦解』は忖度薄かった気がしないでもないけど、曰く『低階層迷宮』ではあるだろうし。

『両迷宮とも友好迷宮と認定されていますから、まずは低階層の把握と地上整備に人手は割くと思いますよ。そうするうちに『魂極邂逅』へも到達するでしょう。迷宮探索に割ける人員が国内に戻りながらも、表層維持に人手を割かざるを得ないわけですね』

 なんだろう。園長の口調に『いい気味』と言わんばかりの色を感じる。気のせい?

『調査に人が入ればその魔力で迷宮は強化されます。彼らはそれを知っていますから。慎重にそれでも友好性を願って様子見しているのでしょう』

 うん。お互いに様子見中だよね。

『今年いっぱいは次の階層に進むつもりはないと思いますよ。最低限の資材。とりあえずの食材。このあたりの物資が薬草園と樹海で採取していけますし、向かう途中に温泉があれば道が雪で閉ざされきることもないでしょう』

 雪で家から出られないのは四日間ぐらいじゃなかったっけ?

「雪で閉ざされる期間」

『雪が閉ざす期間は魔力で定められています。産まれてくる新しい子供達に迷宮からの祝福だと言われています。まぁ、迷宮としては魔力を高めて成長しやすい子供を死なせないように魔力を贈ってマーキングしているというところですが』

 あ。迷宮核と融合してから知った情報っぽい。

 この世界、冬の期にしか子供生まれないからね。

『まだはじまったばかりなのです。心配は必要ですが、心配し過ぎては暴走する者が出てきますよ』

 でもさ。だって。

「ケモノの国の迷宮が侵食してくるんでしょう?」

『それは『蒼鱗樹海』が存在する限り防がれます。そのためにも国は、人は迷宮を守るのですよ』

 一瞬、殺気が飛びませんでしたか!? 尼僧長さま!?

 ちょっと確信したんですけど、天職の声さん、コミュニケーションとってないですね。もしくはとれないんですか?

 あれ?

 同じような迷宮関連存在だと思っていたのですが?

 難しいですね。

 もしかして天職の声さんの行動は尼僧長様怒り導線そばでの火遊びだったり?

 まさかですよね。

 ……。

 ありそうですねえ。

 私の不安は学都にいっている間迷宮になにかあったら。という不安。まずケモノの国の崩壊迷宮の余波。すぐ近くにある分、迷宮に影響がないとは思えませんから。

 そして熟練度の高い冒険者たちが迷宮核を傷つける不安。盗られる不安とも言います。

 そのあたりは家族の安全に関わってくるので大切なことです。

『心配なさらずとも、攻略者の願いをきく程度の接触なら迷宮核(偽)で事足ります。迷宮を知る者なら主持ち契約有りの迷宮核に手は出しません。手を出せば迷宮への宣戦布告。その存在が属する集団を蹂躙するのみです』

 尼僧長様がうっそりと微笑まれます。

「尼僧長様、コワイ」

『まぁ! 主人様。わたくしは園長でしてよ。間違えてはいけませんよ』

 とりあえず、入り口の他、三フロアほど焼却してティクサーと思われる遺跡地帯(兵舎型安全区画有り)を発見しましたよ。ショップはなかったです。

『ティクサーは『薬草園』が再現してますからね』

「四階層ですね」

 いつ、人が入ってくるんでしょうか。わくわくです。

『……。三階層、抜けれるんでしょうかね?』

「スライムしかでないほぼ一本道ですよ」

 他の迷宮への入り口は隠し通路の先になりますけど。

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