第278話 再会と雑談
「頑張っているのね」
そんな控えめな声をかけてくれたのは岩山の国で会ったオルガナさんで、ちょっとびっくりしたネア・マーカスです。
おじいのお手伝いしているそうですよ。ティカちゃんが「あら、知り合いだったのね」とすこし驚いてました。食堂のお客さんらしいですよ。男の人が苦手そうなのでいろいろ気にかけているそうですよ。「お姉ちゃんより年上なのにそれっぽくないのよね。鬱陶しいけど、見てられないっていうか。いいのよ。どうでも!」とツンデレるティカちゃんかわいいです。
オルガナさん、迷宮素材の見聞に工房街で染織工房をひらいてるそうです。復職で薬師の真似事や錬金術工房の下請けで生活費稼いでいるそうです。手に職必要なんですよね。いろいろと。
じっと手を見てると弟くんが「めんどくさがる姉さんに繊細な努力の継続が必要とされる技術職は難しいと思うよ?」って言ってきましたよ。おじい頭を上下させないでよ!
ひーどーいー!
控えめに微笑むオルガナさんに撫でてもらいました。
その後、焼却したフロアからわく腐肉トカゲを的確に狩っていくオルガナさんは強かったです。
「普段は兄とルルさんについて迷宮に行くぐらいでしたから、低階層なら大丈夫なんです」
『石膏瓦解』には普通に潜ってらっしゃいましたよね? 情報的に迷宮核の階層まで軽く往復してますよね?
んー、つまり『そのぐらい』と言われる実力?
森番のおじさんが「熟練度の高い冒険者の語る『低階層』は五十階層未満の迷宮の十階層までをさすもんだ」と教えてくれました。そういえば『豊穣牧場』は百層越えでしたね。
「ここはまだ広いだけで脅威度は高くはないようですから。害草を排除すれば探索がしやすいと思います」
「発生して一年経っていない迷宮としては良い発達ですね。調査探索も新人主体で行ってはいますよ」
「じじ、迷宮としては薬草園の方が深度がありそうだと思う。快適だし」
オルガナさんが隊長さんとおじいとそんな迷宮談義をしています。
「しかし、採取できる物は初級調薬素材ばかりでは?」
隊長さんの言葉におじいがひらひら手を振ります。
「輸入せんで自前で作れるにこしたことはないと思うね。陶器入り砂糖みたいにいずれ瓶入り薬剤も採取できるかもしれんしな」
不人気砂糖ですネ。
「シュガーポットグラス美味しかったよ?」
「うんうん、じじもうまいと思った。アレは高練度の精製後の砂糖であの階層でポッポっと出るもんじゃない。妙な客寄せはまだいらんわ。隊長さんらがもっと練度上げてくれんとなぁ」
「コレは事実とはいえ耳が痛い。今回の件で戦力だけでも上がれば良いのですが」
んー、ベテラン勢は教育係に徹してるって感じ?
つまり、「蹂躙できるけど迷宮は維持すべきだからあえてゆっくり?」って感じか。
「その通りだが、物理的に広域であることとピンポイントで徘徊型難敵が存外強敵サイクルなようで進み難いのも事実だよ。ネアくん」
隊長さんが解説してくれます。
「一番の難敵は蔓だろ」
木樵のおじさんがため息混じりに言えば大人組は違いないと爽やかに笑ってらっしゃいますよ。
「単独でフロア焼却は流石に必要魔力が多すぎるから」と苦笑いをもらすのはオルガナさんでした。
「ま、領主以外の王族がじきくるだろうな」
「じじ、かわいいちいさんたちが我儘小倅に弄ばれるん好きくない」
「ギルマス、それは不敬罪になりませんか?」
オロオロとオルガナさんがとめてますよ。
「悔しければ迷宮と契約をなしてから言えばいいんじゃい」
今の迷宮領域は国境線と変わらないですが、国と契約しているわけでなく、迷宮境界いっぱいいっぱいに領域を伸ばしているだけですからね。
まずは、ケモノの国跡地を支配する魔力を練らなくてはいけないのですが、コレ、冬までにもっと階層を増やせておけなければまずいのではないかと切に思います。
「王族……。えー。関わりあいたくないぃ」
岩山の国の新領主とかみたいな人とか、草原の国の九歳児とか自分都合優先当たり前人種ってことだよね?
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