第277話 燃やしていこう『蒼鱗樹海』
よーし、魔力を高めて、かつ使用感に慣れていくぞと張り切る方向に舵を切ったネア・マーカス十歳女児ですよ。
今日も最初のフロア焼却からですか? と隊長さんを見ると横にいた森番のおじさんと木樵のおじさんと薬師ギルドのお偉いさんだったおじいが揃って首を横に振りましたよ。
なんでギルドの飲食スペースで老人会してたうちの三人が揃ってるんでしょうか?
「迷宮はお酒飲む場所じゃないですよ?」
迷宮から飲酒許可有りの年齢だからって安全区画でもない場所で飲むのはよろしくありませんよ?
「道の維持具合の差を観測したくてな。入り口は道を固定したい方向だけ焼いて欲しい。あとを追うのもその方が楽だしなぁ」
隊長さんはそれでいいらしく頷いてらっしゃいます。
延焼範囲がひろがってもその時はその時だそうです。じゃあ、それでいきます。でも消火はちゃんとしますから!
「呑めんちいさんらの前で悪いじじしとるんも悪ないの。メンドイギルマス業がないならいい案! じじそれ採用したい」
それはちょっと。と苦笑いしている警備隊長さんに悪くないなという顔をしている木樵のおじさん。一仕事終えてからなと笑っている森番のおじさんですよ。
「はーぁ、じじはよう引退しなおしたいからちいさんら誰かギルマス代わって?」
「学都で薬学面白そうで成績とれたら考えてあげるわ。帰ってくるまでギルマスでいてくれたらね!」
ピシリとティカちゃんがおじいの無駄口を塞ぎましたよ。ティカちゃん、すごいですね。
「一年、一年もじじ頑張らなければならない?」
「は? なに言ってるの。薬師なんて、薬草採集学と調合学と医学。魔法薬や錬金治療薬知識も必要ってなったら十年学んで見習いがいいとこだわ。そこからじじギルマス様に弟子入りして五年ぐらい頑張ったら雑用係にくらいなれるんじゃない。採集学の一番の難易度は採集実技講座の単位取りじゃないかしら?」
うわぁ。ティカちゃん詳しい。
「ふむ。ちいさんの将来予定は?」
「私? 私はまだ決めてないわ。ただ、そうね。人と関わっていたいわ。せっかく治癒ギフトを得たんだし、活用はしたいわよ?」
「ほうほう、じじがまだ人に押し付けれんうちに戻ってきたら弟子入りしておくれ」
「その気になったらね」
ティカちゃんもおじいも楽しそう。
森番のおじさんに手招きされたのでよっていきます。
「方角的にはあっち側がティクサー方面だと想定されている」
うんうん頷く。焼くのはあっち方面ですね。
「まず、この辺りを軽く伐採」
うんうん。
「焼く方角を区切るために大雑把に伐採。区切った区画を焼く。一応の消火もする」
理解としては半分、道を作る感じかな?
「そして、コレが運ぶので次のポイントに行って同じように伐採で区切ってから焼く」
コレ。は木樵のおじさんのことだそうです。
「魔物退治は警備隊員と冒険者に丸投げで。次のフロアは一気に燃やしてかまわない。フロア全体でも半分でもそれはいい。そんなところだろう」
「はい」
ルートはすこし土地が抉れて凹んでいるところ(領主様が剣で斬り裂いた跡地)だそうです。つまり、この道の維持が目標ですね。
「では、まずは『伐採』です」
ドロップ品は荷物袋に集積です。
実は伐採程度では魔物はポップしません。通常の兎や鼠、大カマキリなどが出没するくらいですよ。猪や熊はいるのですが割合が実は多いとは言えないそうです。
多かった理由としては葛の捕食をさせるために入り口付近に配置されていたそうですよ。(先日焼いたので他のフロアで葛排除に働いてるらしいです。魔物たち)
でも焼いて消火すると腐肉トカゲがやっぱりポップでした。おじいが杖で一突きにして爪や牙の分析をしてました。
興味があったのですが、木樵のおじさんに軽々と持ち上げられて私と弟くんは移動です。
「あ、ネア! ハーブ、いってらっしゃい。怪我するんじゃないわよ!」
ティカちゃんは戦闘班で『回復役』として安全に経験を稼ぐそうです。距離的には休憩時間は一緒に過ごせるよう配慮してくれるそうです。
よっし!
燃やしていきますよ!
「できるだけ蔓植物はぶち切っておいてくれ。木の育ちが悪くなる」
いい木を切りたいおじさんの望みは出来るだけ叶えたく思いますよ。ただ、うん。おじさんの腕筋肉かたくて居心地悪い気がするんですけどね。
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